*2000年夏*


紀曉君 Samingad / 聖民歌・太陽、風、草原的聲音
陳潔儀 / 蘿拉
梁静茹 / 勇氣



8月
那英 Na Ying / 心酸的浪漫
中国のシンガー那英、1年1ヶ月ぶりの新譜です。
彼女は派手さはあまり無いものの、その確かな歌唱力と、落ち着いた魅力で聴かせる実力派です。
1曲目「心酸的浪漫」は落ち着いたバラード曲。さびのメロディー・ラインが美しく、聴くほどに味わいが出てきます。それもそのはず(?)張宇の作曲です。1ヶ所ハイトーンで声がかすれるところがかっこいい。
3曲目「做我自己」は、前作には無かった西欧の空気漂う曲。ストリングスがギターのカッティングのようにコードを刻む音は気品に満ち(少しオリノコ・フローみたい?)、那英の浮遊感漂うボーカルも素敵です。
5曲目「放愛一條生路」は落ち着いたリズムが魅力のバラード曲。
6曲目「苦中作樂」はこれはびっくり、ニュー・ウェーブな作風の曲。クールなひとりオクターブ・ユニゾンで始まり、さびの「♪アイ、アイ、アイ」で爆発。ちなみに、この曲は歌詞が退廃的という理由で、大陸で放送禁止になってしまいました。管理人は中国語が堪能ではありませんが、三角関係を楽しんでいるというような歌詞かもしれません。
9曲目「藉口不是理由」は再び落ち着いたミディアム・ナンバーの美しい曲。こういう曲を歌う那英を聴いているとほんとに落ち着きます。
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金海心 Jin Hai Xin / 那麼驕傲(推薦)
こちらも大陸のシンガーです。詳しくは知りませんが何枚かアルバムを出しているはずで、本作はSony HKで(も?)出しているので入手は比較的容易かもしれません。
で、はじめて彼女の歌を聴いた印象は、「かなりいい」です。まず、耳に飛び込んでくるのはそのかわいらしいファニー・ボイス。結構いろんな楽曲が入っていてとっ散らかった感もしますが、全体を包むアコースティックな雰囲気と相俟って、とってもいいです。
1曲目は渋いアコースティック・ナンバー「來不及」。ささやきに近いかすれ気味の歌声がいい雰囲気。作曲はなんと雷頌コ。
2曲目「那麼驕傲」は早くもベスト・ソング!ハーモニカも入った少し土の香りのするミディアム・スロー・ナンバー。メロディーも素敵でこれはヒットです。
続く「天天」は歯切れの良いポップ・ナンバー。「夢遊」の頃の王菲に通じる感も。
4曲目「依依難捨」はゆったりしたソウル・バラードの曲。声質のためか割りとあっさりとした感じです。
7曲目「把鞋子shuai掉」は彼女自身の作曲で「♪Da-la-la...」のコーラスもかわいい陽気な曲。これも良い曲。
続く「與愛情有關」も彼女の書き下ろしで、幾分ダークな雰囲気の曲。王菲の「色誡」にちょっと似ている。あ、ギタリストも張亞東だ(笑)。
ラストの「過去」は唯一中華バラードといえる曲。この曲も彼女の作曲。
とまあ、いろんな曲が入っていますが、ぼくはなかなか楽しめました。いいですよ。
◇◇◇

林凡 freya / freya
台湾からまた新しいシンガーが登場しました。名前は林凡(リン・ファン)。英名はフレア。
今日的なソウル感覚溢れた歌は、蕭亞軒に通じるところもありますが、彼女の歌声の特徴は、低音部の力強さとは対称的な、高音部での透き通る柔らかさでしょう。
それが顕著に感じられるのが、大先輩・林憶蓮の名曲「夜太K」のカバー(!)でしょう。林憶蓮への敬愛に溢れたその歌唱には好感が持てます。そして、新人と思えぬその表現力にきっと誰もが驚くことでしょう。
6曲目「思念[イ尓]的愛」は陶[吉吉]の作曲。スイート&メローな雰囲気が格別。デュエット・ボーカルはクレジットされていませんが、きっと陶[吉吉]本人でしょう。
流行りのダンスっぽい曲も入っていますが、彼女の美声が生きるスロー・ナンバーがぼくはいいと思います。控えめに入ったオルガンやブラスの音がいい味出している「好想戀愛」もグッド!
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蕭亞軒 elva / 紅薔薇
1stアルバムが当サイトのBBSでも話題になった、蕭亞軒のニュー・アルバムです。
全体の音作りは1stと同様、打込みリズムを主体に、どちらかというとジャスト・タイムのかちっとしたソウルを聴かせますが、今作は変化に富んだ楽曲を折り込み、なかなか充実したアルバムとなりました。
まず冒頭を飾る「雨季中」はミディアム・スローの落ち着いたソウル・ナンバー。
3曲目「窗外的天氣」は伍思凱の作曲。スイート・ソウルとも言える柔らかな雰囲気がとても良く、彼女もいつになく優しく歌っているのが注目されます。
4曲目「準備好了没有」は、江美h、曾寶儀あたりが歌ってもはまりそうな、とっても軽快でキュートな曲。「♪一點一滴一點一滴・・・」のリフレインもかわいらしい。
ちょっと意外でとても気に入ったのが、6曲目、鮑比達作曲の「夜」。歌い出しが山口百恵の「乙女座宮」を思わせるたおやかなメロディー・ラインがいい感じです。「夜奔」という映画の主題曲。
ベスト・トラックはやはり日本のSakuraの歌を取り上げた「薔薇」でしょうか。この曲だけは生ドラムを使っており、他のトラックに較べダントツに人間臭くて暖かくて生き生きとした雰囲気が堪能できます。後半どんどん盛り上がるelvaのボーカルは間違いなくベストでしょう。また、この曲を提供するに当たってSakura本人がelvaにメッセージを寄せています。個人的にはこの曲の持つ雰囲気が一番気に入っています。
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王力宏 Lee Hom Wang / 永遠的第一天(推薦)
いつの間にか、日本でも着実にファンを増やし続ける、台湾のマルチ・アーティスト王力宏。
ぼくが彼の歌に最初に注目したのは、1998年発表の「公転自転」でした。このアルバムは彼の純粋なソウル・ミュージックへの敬愛が表れたアルバムで、今聴いてもとても新鮮なアルバムです。
その後、彼はインタビューで、「ぼくはソウル・シンガー呼ばれたくない。単にアーティストと呼ばれたい」といった発言をしており、確かに1999年に発表された「不可能錯過[イ尓]」は、少しソウルから離れ客観的になってみたかのような印象をぼくは受けました。
そしてこの新譜は、そんな彼の思いがひとつここに結実したような仕上がりとなったようです。
1曲を除き、すべて彼の書き下ろしです。
ぼくがこのアルバムで特に心奪われたのは、よく粘る滑らかな彼の声の魅力が光る「永遠的第一天」「不要害怕」「傷口是愛的筆記」といったスロー・ナンバー。ソウルに敬意を表しつつ、模倣に終わらせない彼の思いが伝わってくるようです。
「忘了時間忘了我」では、彼自身が流麗なピアノを、「[イ尓]可以告訴我([イ尓]還愛誰)」ではクラシック・ギターを弾いています。
新しい試みをすることも忘れていません。ジャンルの名称には疎くて何て言ったら良く判りませんが「狂想世界」ではジャジーなギターとベースのユニゾンのリフレイン、彼自身が弾くピアノのブロック・コードにラップと歌が被さるという今風の曲で、これまたかっこいい仕上り。
「龍的傳人」では古い曲を今風のアレンジで、「歓喜城」はオリジナルながら明らかに古い曲のメロディーを取り入れています(個人的にはあまり好きではないが^^;)。
あ、いい忘れましたが、イントロダクションで渋い語り入りと言う女性サービスも忘れていません。
つい最近、来日も果たした彼、流行りに流されること無く、音楽活動を続けて欲しいものです。
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林曉培 Shino / This is SHINO 3(推薦!)
台湾のミュージック・シーンの中でも、そのパワフルなボーカル・スタイルで異彩を放つ、SHINO満を期しての待望の新作登場です!タイトルもThis is SHINO 3!。
前2作と較べると、大きく印象が変わったというのではありませんが、今までとは少し違う趣があります。
前作まで顕著だったダークでマイナー気味の重い曲が減り、余裕というか拡がりのある音作りが目立つのが注目されます。人力ドラムを始め生楽器の比重が増え、よりバンド・サウンド寄りなのも関係しているのかもしれません。
頭3曲に、前作のイメージに近いダークでパワフルな曲を持ってきて、中間部で雰囲気を変えて、7曲目からラスト11曲目まで怒涛のスロー攻撃という曲構成も意表を突いて素晴らしいです。また、共作も含むと、SHINO自身がペンを取った曲が3曲も収録されており、彼女の力の入れようが伝わってくるようです。
3曲目「娃娃愛天下」は彼女初の広東語曲。この1曲目から3曲目までの一気にぐいぐい惹きつけるパワーはすごい!
4曲目「鑰匙」は一変して、黄韻玲作曲のゆったりしたマイナー・バラード。
そして、なんといっても超感動ものはSHINO自身のペンによる5曲目「越來越會愛」。マイナーともメジャーともブルー・ノートともつかないような浮遊感漂う読めない曲展開、手かずの多いファンキーなドラム、ハイ・ポジションでぶいぶい唸るベースがむちゃむちゃかっこいい!特にサビでSHINOのボーカルとドラムがユニゾンになるところがもう鳥肌モノ!(「♪Ah-o, Ah-o, 我越來越dong了愛」ってとこです)。凝りまくった間奏もクール、だらだらと終わるエンディングも個人的に好きです(笑)。それにしてもSHINOの才能に脱帽
7曲目「流浪」もSHINOと呉永吉という人の共作曲。彭佳慧が歌ってもはまりそうな雄大なバラードで、彼女にはちょっと珍しいスタイルではないでしょうか。
続く8曲目「交叉線」は一見ごく普通のポップなスロー・ナンバーですが、こういうさりげない曲こそ、聴く度に味が増す曲です。メロディー・ラインもきれいで、彼女の情感を込めたボーカルは文句無しに素敵。
10曲目「Everyday」は、深淵な雰囲気と一気に盛り上がるサビのコントラストが印象的なナンバー。サビで爆発するSHINOのボーカルがとにかく素晴らしく涙ちょちょぎれます。こういうスロー・ナンバーでこれほどパワフルに歌い切れるアーティストはちょっと他には思い付きません。ドスの効いた「A ohh」「huh!」、かっこいいです。
ラストは再び彼女のペンによる「不後悔」。ゆっくり壮大に盛り上がるバラード曲です。
ぼくは今までのアルバムの中で一番好き。捨て曲無しでアルバムのまとまりも最高だと思います。
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曾寶儀 a-baw / 想愛(good!)
爽やかで心温まるスタイルで、日本でも多くのファンをつかんだa-baw、1年4ヶ月振りの待望のセカンド・アルバムが発表されました。今回もジャケットがキュート。
全体のそよそよとした雰囲気は相変わらずですが、前作に較べると、「等[イ尓]道歉」のような一発お見舞いしたる〜、みたいな元気炸裂の曲が無い分、少し大人っぽい落ち着いた雰囲気がします。ちょっとシンガポールのシンガー、范文芳の「想[イ尓]」みたいな空気感と言えましょうか(アルバム・タイトルもなぜか似ている…)。
このアルバムは、余り1曲1曲の解説をしたくない気がします。トータルとして雰囲気に浸りたい、そんな気がします。そんな中特に気に入ったのは、切ないボーカルとピアノの音、たゆたうストリングスの音が印象的な「想愛」(ぼくは原曲を知りませんが、エイミー・マンの“Wise Up”という曲のカバーだそうです)。
珍しく中華っぽい歌いまわしがかわいい「没有人」、オルゴールのような音で始まる郭子作曲の表情豊かな美メロ・バラード「sha笑的照片(バカみたいに笑った写真)」もとってもいい曲です。
ファンには間違い無くにはお勧め!。
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單紫寧 Natalie / 替代
どうもはっきりしないのですが、この人をPVで観た記憶があって(ちょっと変わった名前だし)、印象に残っていたので買ってみました。判っているのは最近出たアルバムということだけで、出身地もキャリアもわかりません。ただ、國語で歌っていて歌詞カードは繁体字で書かれています。ALS Recordという聴き慣れないところから出版されていて、made inの国名すら期されていません。(情報をお持ちの方が居られたら、ご一報頂けると嬉しいです。)
前置きが長くなってしましたが、これが捨て曲無しのなかなかの好盤なのです。
ジャケットから受ける印象とは全然違って(ジャケットからは演歌っぽい台湾バラード集にも見える)、とても滑らかで柔らかな歌を身上とした良質のポップ・アルバムなのです。
どの曲もいいのですが、3曲目「拆禮物」は特に軽やかな品の良いポップスで、好感度大です。
また、4曲目「愛[イ尓]」はアップ・テンポのキレのいい曲で、ダルな歌い方がなかなか面白く、かなり幅広いスタイルをもったシンガーと言えましょう。
6曲目「安全感」は、Tori Amosを思わせるピアノも印象的な深みのある曲。裏旋律が被さるサビは、ケルト・ミュージックを思わせる美しさがあります。
ボサノバ+中南米っぽいアレンジの「相信[イ尓]也在感覺」もなかなか面白い曲です。
ぼくはたまたま店頭でこのアルバムを見付けたのですが、これはなかなかのお勧めですよ。
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梁静茹 Fish Leong / 勇氣(推薦)
「一夜長大」での名唱も印象深かったマレーシアのシンガー、梁静茹の会心のセカンド・アルバム登場です!。ファーストは「一夜長大」という名曲をヒットさせたもののアルバムとしては大人しい印象があったのですが、本作はジャケットもとっても爽やか、なかなかの力作揃いとなりました。
製作人は10曲中、3曲が光良、5曲が李宗盛、2曲が李正帆と豪華メンツが当たっています。
冒頭2曲は前作のイメージを受け継ぐ、彼女のハスキーで憂いを含んだ温かい声を生かした、バラード曲。実はこの当たりまでは前作の延長線上かなあと思っていました。
4曲目「没有水的游泳池」はTanya作曲。風通しの良いシンプルかつアコースティックな作風で、Tanyaらしいセンスが光る曲です。
5曲目「再爛的理由」は今までの彼女に無かった、明るく弾けたロック・チューン。わざと声をつぶしたユーモラスな歌い出しも楽しく、どだどたとドラムが入ってガーっと盛り上がるサビにも力が入ります。
7曲目「愛計較」はピアノのみをバックに歌われる曲ですが、バラードではありません。彼女の歌声はどこか洋楽に通じるセンスがあると思うのですが、ここでもとてもいい感じです。
9曲目「多數是晴天」これはびっくり、ブルージーなエレピとアコギのチョーキングで始まる、フュージョン/ブルース・タッチのかっこいい曲。キレのいい、跳ねたリズム隊もかっこいい!Eric Claptonの「Change The World」に通じる渋さも。
最後を締めくくるのは、アコースティック・ギターのみをバックに歌われる「最後」。彼女の持ち味であるハスキーで切ない情感が炸裂する曲。この曲を最後に持ってきたおかげで、アルバムをより印象深く余韻のあるものにしています。

7月
陳潔儀 Kit Chan / 蘿拉(LOLA)
シンガポールのシンガー、陳潔儀のオリジナルアルバムとしては10ヶ月振りの新譜、上華移籍第二弾が到着しました。
いつになく涼しげなジャケットが前作と好対照ですが、音のほうもバラエティーに富んでいます。
強く、しなやかな歌声が相変わらずいいです。
まず1曲目は表題曲「蘿拉」(ローラ)。スパニッシュっぽいギターで始まるマイナー調の曲で、少しラテンっぽさも伺える曲です。
2曲目にクラシカルで優雅なバイオリンが印象的なバラード曲「一個人的圓舞曲」を挟み、3曲目「[イ尓]醜」(あなたはCOOL)は張惠妹辺りが得意とする、ヘビーなリズムの曲。
4曲目「他不適合[女尓]」は、ほっと息のつける彼女らしいバラード。彼女の凛とした声が際立ちます。
5曲目「終於忘記了[イ尓]的生日」は、出だしでバラードと思わせて、突然快速ロックになる、一風変わった曲。陳潔儀の作詞作曲。エンディングの笑い声がちょっと不気味(笑)。
特に面白かったのが7曲目「出現」。どことなくインド音楽+ブリティッシュ・フォークの混合を思わせる艶かしいこぶしの利いた歌声、タブラと思しきパーカッションの音がとても印象的です。詞も輪廻について歌っている模様です。
9曲目「Don't Let Me Down」(ビートルズの曲ではありません)は、古っぽいエレピやオルガンの音がかっこいい、マイナー・キーのフュージョン/ロック・タッチの曲。
ラストはしっとりとして優しげなナンバー「走過」。サビの1回目で「走過」、2回目で「錯過」と歌っています。詞の意味がもっと判ればいいのですが、悲しい別れを歌っているようです。短いながらとても趣深い曲です。

6月
蔡健雅 Tanya Chua/ 記念(特薦!)
1曲目の頭のギターの音「♪しゃら〜ん」だけでもう完全にノックアウト!
シンガポールのシンガー・ソングライター、Tanyaの國語版第2弾を数ヶ月遅れてのご紹介です。
とにかく、全体を包む音の質感が最高。柔らかで風通しが良くって、アコースティック。前作より中華ポップス寄りになるかと思われましたが、こうして届けられたアルバムは、実に曲調もバラエティー豊かなものとなりました。味わい深い歌声にも磨きがかかったようです。
1曲目「[イ尓]的温度」は、アルバムの最初を飾るにふさわしい、ゆったりしたミディアム・スローの曲です。メロディー・ラインは全然違いますが、Eaglesの「偽りの瞳」あたりを感じさせる雰囲気がとても心地よいです。エンディングの情感の込め方なんか最高です!
3曲目「太多」も最高。ミディアム・アップテンポの良質ポップスで、サビでの愛らしいフレージングは良き日のアメリカの匂いが。
6曲目「好想放假」は英語アルバム「Luck」に収められていた表題曲の國語カバー。英語で作る曲はニュアンスが少し異なり、よりアメリカっぽくなっているのが不思議です。
7曲目「True Love」は未だTop20にランク・インしている名曲。ミディアム・テンポのソウルフルなナンバーで、心の琴線に触れる起伏のあるメロディーとボーカルが素晴らしい。
続く8曲目「體會」は彼女が得意とするもうひとつのスタイルである、弾き語りの趣深い曲。3拍子なのが珍しいですね。
最後を締める10曲目「漂亮一點」は、なんとカリプソ・リズム(!)に乗って陽気に歌います。ブラス隊も入って常夏の夜は過ぎていくのでした・・・。
◇◇◇

劉虹[女華] Ginny / 一人跳舞
台湾のシンガー、劉虹[女華]のセカンド・アルバムのご紹介です。
1曲目「左耳」はJ.Popsっぽいやや硬質でシリアスな雰囲気で始まります。
2曲目「[イ尓]愛我[口馬]」はがらっと変わって、アコースティックな雰囲気がいい感じの優しい曲。
この曲は11曲目にも別アレンジで収録されていて、こちらもアメリカっぽくていい感じ。この曲は、ちょっとTanyaに近い雰囲気を感じました。
3曲目「掉了」はなんと形容したらいいんでしょう。コーネリアス(←実はよく知らない)っぽいというか、エレクトリック処理したふわふわと浮遊した音に「〜掉了」という歌詞が重なる、摩訶不思議な曲。結構好きだったりしますが。ちなみにず〜っと、2コードだったりします。
5曲目「一人跳舞」は、軽快でシンコペーションが心地よいナンバー。「私はただ散歩したいだけ、私はただ踊りたいだけ、季節とともに、春の日に抱かれ、私はただ夢見たいだけ、ただ遠くに行きたいだけ、自由気まま、私と私自身」。ベスト・トラック!
個人的には後半の楽曲がいまひとつ印象に残らなかったこと(あるいは曲調がいろいろで少し散漫なこと)が少し残念です。ボーカルスタイルも含め、個性が出てくればと思います。
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陳昇 Bobby Chen/ 思念人之屋
日本でも局地的な大盛り上がりをみせる陳昇のニュー・アルバムのご紹介です。
実は彼のアルバムを聴くのはこれが初めてなので、おのずとこのアルバムを聴いた感想しか書けないのですが、一聴した印象は、バラエティーに富んだ曲を収録していながら、不思議と全体を包む印象は渋く落ち着いたものを感じました。
1曲目「思念人之屋」は、落ち着いたアコースティック・ギターのフィンガー・ピッキングが印象的な曲。メロディー・ラインは以外と中華ポップスぽいです。
2曲目「六[イ分]地図」も淡々と流れる曲調の中、ゆるやかにうねるメロディーが心地よい曲。控えめに流れるバッキングのグランド・ピアノがいい感じで曲に繊細さを与えています。
6曲目「老麻的私事」はアルバム中異色の曲。落ち着いたテンポながらずしりとくる変則打ちのリズム隊が異様にかっこよく、リーディングと歌の中間のような不思議なボーカルが浮遊感のある曲調にはまっています。バックのジャジーなピアノといい、ある意味ニュー・ウェーブな曲と言えるでしょうか。
特に気に入ったのは彭佳慧がボーカルで参加している10曲目「喝完這杯珈琲就走開」。マイナー調の渋く強力な曲(Hotel Californiaをもっとレイド・バックさせたような曲調…って、違うか^^;)。冒頭からBobbyと彭佳慧の一発録りのような“双頭”ボーカルが炸裂。“ケンカ”してます。しかも最後まで盛り下がることなく5分強を突っ走る!素晴らしいトラックです。(余談ですが2分25秒くらいで聴ける彭佳慧のスキャットが、Natalie Merchantそっくりでどきっとしました。)
ラストはギター・インスト「[口阿]!陽光」でしっとりと締めくくります。
他にかなりもろ6/8ブルース調の曲が何曲か入っていますが、ぼくは淡々とした曲の方が好きだな…。
CD2の方は3曲入り。3曲目「Voyage」はストリングス系白玉キーボードをバックに、語りが入るおごそかな曲。最も宗教っぽかった頃のVan Morrisonを思い出しました。

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紀曉君 Samingad/ 聖民歌・太陽、風、草原的聲音(特薦!)
昨年発表され、数々の賞を獲得した、名盤にして紀曉君のデビューアルバムのご紹介です。
サミンガこと紀曉君は、台湾の先住民族、卑南族の歌手。2曲を除いて母国語PUYUMA語で歌っています。
発売されて月日が経っているので、既にこの素晴らしさに触れた方も多くいらっしゃることでしょう。
実はぼく自身は、発売こそ知っていたものの今まで聴かなかったのは、先入観があったからです。
母国語→エスニック→ディープフォレスト的→打ちこみドラムと分厚いシンセ音→レコード会社の戦略という図式を想像してしまったからです。ああ、なんてこと。そんな邪推とはまったく違った音楽。久々に涙が出るほど素晴らしいじゃないですか!(人工臭さなど皆無!)
民謡のもつ複雑なこぶし・メロディーラインは別にして、演奏自体は必要最小限のシンプルなもので、熱い歌心をいっそう際立てています。また創作曲と思われるポップな曲を織り交ぜて、親しみやすいところも好感が持てます。
どの曲も素晴らしいのですが、2曲目「南王系之歌」で完全にノックアウト!軽快でかっこいいアレンジに乗って素晴らしく伸びやかな歌を聴かせます。シンコペとリズムチェンジの激しいポップアレンジの生ドラムがとってもクール。アフリカン・ポップスの影響もそこはかとなく。涙ちょちょぎれ。
國語(中国語)で歌われる4曲目の故郷賛歌、「故郷普悠瑪(PUYUMA)」も意表を突いて素敵。ブルージーなアコースティックギターに乗って始まり、リズム隊が入るとフレンチ・ポップスのような爽やかなスキップ・メロディーに。ひときわ美声が冴えます。後半のフェイク・ボーカルを聴くと、案外ブルーズ・ロックなんかも好きなのかもしれないですね。
ピアノだけをバックに歌われる「懐念年祭」も素晴らしい。
圧巻はラスト2曲続けて歌われる「婦女除草完工祭古調(伝統祭儀版)〜(現代演唱版)」。読経を思わせるアカペラのおごそかな伝統祭儀版から、インタールードを経てやがて切れ目無しに現代バージョンへと続いていきます。自然と目を閉じて聴いていたい、そんな気分になれる曲です。
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鄭雪兒 Michelle/ 別装[sha]!?
彼女のことは良く知らないのですが、ブリティッシュ・ポップっぽいなかなか軽快な曲と歌で気に入りました。キッと睨んだような表ジャケットは西洋人のようにも見えますが、裏ジャケットの笑った顔はちょい范文芳に似たほんわり美人。音楽のほうもそんな二面性が感じられます(なんとなく)。
アルバムタイトルは日本語の漢字がないので書けませんが、[sha]は馬鹿という意味の単語です。
ディストージョン・ギターのカッティングも冴える「愛像太陽」でアルバムは始まります。ルーズなメロディーラインがかっこよく、冒頭からなかなか好み。
3曲目「快半拍」もブリティッシュな雰囲気漂う軽快な曲。一瞬ギターの間奏がヘビメタ調になるのがどこか微笑ましい。
4曲目「喝珈琲」は目まぐるしく雰囲気の変わる艶かしくて不思議な曲。凝りに凝ったアレンジで結構アバンギャルド。
5曲目「邱比特的煩悩」はイントロがなぜかCSN&Y風(笑、何て曲だっけなぁ)。
范文芳を思わせるポップナンバー。
6曲目「愛情有理」は、江美hの「第二眼美女」の流れを汲むギター・ポップ・ナンバー。
後半はどちらかというと大人し目の曲が多いです。個人的には後半にも強力な個性が欲しいところです。
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侯湘[女亭] Hou Xiang-Ting/ 同名專輯
同名專輯といっても1stアルバムではありません。侯湘[女亭]の2ndアルバムです。2ndアルバムがセルフタイトルってThe Bandみたい…(一部ウケネタですみません)。
18歳にしては落ち着いたジャケットでびっくりしましたが、インナー・フォトはそうでもないです(笑)。
おまけのブックレットのマンガ調のイラストに到っては訳わからず(笑)。
さて、曲のほうですが、強烈な自己主張はないものの、どれもゆっくりくつろいで聴ける曲になっています。
4曲目「都謙」はなんと山口由子の曲。元歌をぼくは知りませんが穏やかなバラード曲です。
せつないメロディーの「More and More」が気に入りました。
ラスト「K眼圏」は陳綺貞の作詞曲。彼女らしい繊細な雰囲気の静かな曲です。
◇◇◇

許茹芸 Valen Hsu/ 難得好天氣(推薦!)
台湾が誇る美声シンガー、許茹芸待望の新譜の登場です。
本作は過去のどのアルバムとも違う、軽やかな空気感漂う意欲作となりました。
全体的には歌い上げる切ないバラードは控えめで、リズムトラックが前面に出た軽快なアレンジが印象的です。
許茹芸の作曲が1曲のみであるのは残念ですが、Pepsi Beast(許經綸)/許茹芸連名のプロデュース曲が5曲もあるのが注目されます。いつになくくつろいだ雰囲気はこんなところに秘密がある気がします。
(Pepsi Beast = ミキシング・エンジニア、プロデューサー、ひょうきんなにいちゃん、Valenの恋人)
1曲目「難得好天氣」はアルバム中では異彩を放つ曲で、耽美的な雰囲気の中、許茹芸の透明なファルセットが美しく舞います。ちなみにこの曲のPVはなんとなくサイケ。
2曲目
「新世界」と4曲目「不知不覺」は、自身でも素晴らしいアルバムを発表している劉沁の曲。彼女らしいソウル・フィーリング溢れる穏やかな曲に仕上っています。
3曲目「愛不愛[イ尓]都一樣」は許茹芸の書き下ろし。彼女作の曲にしては珍しくバラード調の曲ですが、アコースティックギターと弦楽器隊のアレンジがおしゃれでヴァレンの歌を引き立てます。サビのフレーズがいい感じです。「♪はいしゃ〜ん」。プロデュースはもちろん
Pepsi Beast(許經綸)/許茹芸
アルバム中特にお勧めは、やはりPepsi Beast(許經綸)/許茹芸プロデュースが続く7曲目から9曲目の流れ。
7曲目「想要的感覺」は“♪so come a little closer”のリフレインも軽快なボサノバ・タッチの曲。バックにはラテンには欠かせない、ヒョッヒョッヒョッって音のする楽器音(何て言う楽器なのか知りません、クレクレタコラが走るシーンでもお馴染み??)も入ったり。
8曲目「隠瞞」はアコースティク・ギターだけをバックに歌われるmaj7の渋い曲。Valenの一人多重コーラスが美しい。蔡健雅の作詞作曲。
9曲目「together you and i」はがらっと変わって再び軽快な曲。Valenには珍しい曲調ながら、キャッチーなサビのメロディーラインがストライク。プログラミングを用いてリズムを強調しているのも珍しいんじゃないでしょうか。
ボーナス・トラック「you are my NO.1 」はなぜかEnrique Iglesiasとのデュオ。これがまた素敵な出来で、Valenの透明なボーカルが冴え渡ります。Valenは英語曲でも完璧!