*1999-2000年冬*



2月
利綺 「體貼」 ・リー・チ(ROMI)
ROMIこと、利綺のセカンドアルバムです。
穏やかでアコースティックな感覚の曲がメインなのは前作同様で、とてもすんなり聴けます。
聴いた後の清涼感は前作以上である気がして、ぼくはなかなか気に入りました。
1曲目は「天堂」。彼が利綺に花束を渡そうと、途中人の自転車をひったくったりしてずーっと追いかけるビデオが印象的な曲。とても穏やかなバラードです。
2曲目はタイトル曲「體貼」。この曲も穏やかな曲ですが、アコースティック・ギターがいい雰囲気を作っています。他の曲にも言えますが、アルバム全体にフィーチャーされたアコースティック・ギターが繊細な雰囲気にマッチして、いい感じです。林憶蓮を思わせるメロディーラインが印象的です。
軽やかなアレンジとメロディーラインが印象的な3曲目「忘記幸福」、続くフュージョンタッチのオリジナル曲「天氣冷了」がなかなかツボにはまりました。2曲で活躍するガット・ギターのオブリガートと控えめなエレピがグッド。
先の「天氣冷了」のほかに彼女の作曲は「12月11日、天氣晴」、「水滴之舞」の3曲。他人の曲よりさらに、さらさら度アップ。いいです。

張艾嘉 「最愛」 ・シルビア・チャン(推薦)
シルビア・チャンは1953年台湾生まれ、女優、歌手、監督と幅広く活動している人で、最近では「心動」での監督が記憶に新しいところです。
このアルバムは81年にリリースした「童年」から以降彼女の歴史を追った2枚組全25曲入りベスト・アルバムです。
特段歌のうまい人ではないと思いますが、決して重苦しくなったりしない、さらさらとして柔らかな雰囲気がとても印象的です。
特に1枚目と2枚目の前半がとても良くって、とても1曲1曲の感想を書くスペースはありませんが、カレッジ・フォーク調のシンプルな「艾嘉 愛家」、たおやかなバラード曲「因為寂寞」、どこまでも美しく感動的な「最愛」など、心洗われる曲が満載です。
ポップス・ファンには、莫文蔚の名唱も忘れ難い「愛情有什麼道理」のオリジナル・バージョンが聴けるのが嬉しいところでしょう。
どこから聴き出しても良し、聴き終わった頃には少しだけ優しくなれる、そんな気がするアルバムです。

趙詠華 「風的顏色」 ・シンディ・チャオ(推薦)
シンディ1996年発表のアルバムです。
全体的には大人し目でややもすると地味な印象もするアルバムですが、さらっとした彼女の声と相俟って聴く度に好きになるアルバムです。
何と言っても注目されるのは、張清芳の「花雨夜」や李[王文]の「過完冬季」など美しく趣のあるメロディーの曲を書く李正帆の曲が3曲収録されていることでしょう。
特に都会的雰囲気を漂わせた少しシリアスな「像我這樣的女人」と、抜けるようなシンディのハイトーン・ボイスが美し過ぎる「風的顏色」(李正帆もボーカルで参加)がいい。
また、6拍子の緩やかに揺れるメロディーが夢見るような「断了氣」でもシンディーの素晴らしいフェイク・ボーカルが聴けます(ちなみにこの曲は李[王文]の「美麗笨女人」を作った呉旭文)。
やっぱりいいな、彼女の声は。とても好きです。

徐懷[金玉] 「LOVE」 ・ユキ(YUKI)
YUKIのニュー・アルバムが届けられました。前作までは成長した范曉萱の穴を埋めるかのような、子供〜ロー・ティーン受けしそうな元気印の歌が特徴でしたが、本作では、彼女もぐっと大人っぽい印象です。
曲を見ますと、韓国、マレーシアのカバーと思われる曲が何曲かあり、実際コリアン・ダンス・ミュージックぽい曲が今作のひとつの特徴となっています。
実を言うと、ぼくはコリアン・ダンス・ミュージックは苦手なのですが、YUKIは意外とすんなり聴けました。音に広がりがありチープじゃないことと、彼女の声が素直で柔らかいからでしょう。またなかなか丁寧に作られたアルバムという気がしました。
曲調はダンス・ミュージック以外にもなかなかバラエティーに富んでおります。
4曲目の、重いビートが印象的なロック「亂了」もいい感じです。
特にぐっときたのは、6曲目「想一個他」。ミディアム・グルーブのソウルフルな曲で、3度でフラットする気だるい歌い方がグッド。実際歌ってみると判りますが、なかなか雰囲気を出すのが難しい曲です。余談ですが、ともさかりえ(さかともえり)の「どっちでもIN」をずっとテンポダウンしたら、こんな感じになるかも。
続く7曲目は一変して、美しいバラード曲「雨傘」。美しいメロディーもさることながら、彼女ってこんなに歌うまかったかと思ってしまう表情豊かな歌声が印象的。
9曲目「分飛」は、民族楽器の音も聞こえる中華メロディーがきれいな曲で、アルバム中異色ながら、これもいい曲です。
ジャケットとインナーの写真が秀逸!かっこいいです。

2個女生 「2人3角」 ・2 Girls
シンガポールのシンガー・ソングライター・デュオ、2個女生の3rdアルバムです。
1曲目こそ、GSマージー・ビートの曲で意表を突きますが、全体的には、尖がりすぎず平凡過ぎない、ライト感覚の歌は今まで通りだと思います。
全10曲中、楊孝芬の作曲が6曲、廖永其の作曲が1曲です。
ゆったりした彼女達らしいコーラスワークもきれいな「2人3角」「走開」といった曲に混じって、マイナー調の少しシリアスなソウル風味が異色の(途中男声のラップ入り)「問題」がいい味を出しています。
8曲目「高感度」はF-E♭の2コードの繰り返しと浮遊感漂うボーカルがオルタナっぽい曲で、細かく動き回るウッド・ベース、ときどき入る音程を無視した効果音が独特の雰囲気を醸し出しています。
唯一の廖永其の曲「快樂是」は、楊孝芬の作風とは一変して、カラッと爽やかなギター・ポップスでなごめます。個人的にはとても好きな曲。
ラスト「一起唱首歌」はアコースティック・ギターだけをバックにしっとりと歌われます。

彭佳慧 「First Time」 ・ジュリア・パン(推薦!)
や、やられました!またしても彭佳慧に。地味なバラード歌手と言うイメージを一掃し、その類稀な歌唱力で圧倒した前作「敲敲我的頭」に引き続き、今作も圧倒的な存在感で迫ります。
まず、1曲目「愛瘋了」から、ざっくりしたディストーション・ギターのストロークが印象的な、渋く落ち着いたロックで始まります。前作で彼女の声が意外にロックのシャウトに合うことが判明したわけですが、ここでも素晴らしいパワー・ボーカルを聴かせています。作曲とギターとボブ・ディランなハーモニカを吹いているのは陳昇。
2曲目「甘願」は静かなバラード曲ですが、1曲目とは打って変わってかすれ気味のウィスパー・ボイスが実に表情豊かです。
今回渋めのロック・チューンが多いのがとても印象的で、乾いたギターのトーンが印象的な4曲目のミディアム・ナンバー「無所謂」(名曲!)や8曲目「From London to Madrid」、シャッフルのリズムがかわいらしい自作曲「風流女生」など魅力的な楽曲が続きます。
個人的に気に入ったのは5曲目「愛讓我勇敢做夢」。6/8拍子のゆったりしたバラードで、クライマックスでゴスペルの如く盛り上がるのが圧巻!彭佳慧のボーカルも最高。
7曲目「聽説愛情回來過」はなんと林憶蓮の「Love, Sandy」に収録されていた曲のカバー。サンディーよりさらっとした風通しのいいアレンジと歌が印象的です。


1月
林憶蓮 「林憶蓮’s 」 ・サンディー・ラム(特薦!!!)
香港が誇る歌姫、サンディーのVirgin Music移籍第一弾にして2000年第一弾の待望のニューアルバムが発売になりました!
時々素晴らしいアルバムに出会うと、あぁ、この人のファンをしていて良かったと思うことがあります。サンディーは決して期待を裏切ることのない数少ないアーティストと言えるでしょう。
彼女は永いキャリアの中でいろんな歌を歌ってきました。彼女のように常に自分の音楽を求めて(しかも、押しつけがましくなることなく、むしろ表面的にはとても謙虚に)変化していくアーティストには頭が下がる思いがします。それは、彼女の「歌は、人に安らぎを与えるもの」というポリシーゆえなのでしょう。
前作は賈敏恕をプロデュースに迎え、バンド・サウンド寄りのアルバムでしたが、本作は全編にソウル・フィーリング溢れる素晴らしいアルバムとなりました。前作で感じた、何か靄の掛かったような音像は消え去りぐっと音が間近に感じられます。また、彼女の歌声も少し変化があり、今までのシルキー・ボイスといったイメージから、一本芯の通った強さが感じられます。声には余りビブラートは掛けず、シンプルにストレートに歌っているようです。
1曲目「[月分][イ尓]在此」。ガット・ギターの柔らかな音にストリングスの音がかぶさり、サンディーの歌へと繋がる導入部で始まる曲で、温かなソウル・フィーリングに早くもまいってしまいます。「ヌード」の頃のACO、劉沁辺りを思わせる曲と言えましょうか。作曲は陶[吉吉]。
そして、2曲目が、もう涙ちょちょぎれの超メローなソウル・バラード「至少還有[イ尓]」。素晴らし過ぎます。
続く3曲目「没有人抽煙」はリズムの際立ったアップテンポの曲で、時々入るマイナーコードが歌に深い陰影を与えます。
ゴージャスなオーケストラをバックに切々と歌われる6曲目「飛的理由」は黄韻玲の曲。とても黄韻玲らしい、ギミックに頼ることのない、メロディーの素晴らしさで聴かせてしまう曲。聴けば聴くほど味わいの深まる曲です。
7曲目「我坐在這裡」は一変して、シャナイア・トウェインあたりを思わせる、からっとしたギター・ポップ・ナンバー。アルバムの中でいいアクセントになっています。
9曲目「Now Or Never」はなんと懐かしいオーケストラ・ヒットのサンプル音で始まる、Warner時代を彷彿とさせる、ダンス・ナンバー。
一家に一枚。お勧めです!

劉若英 「我等[イ尓]」 ・レネ・リュウ
前作「很愛很愛[イ尓]」から約1年振りの劉若英の新譜です。
アルバムのデザイン、レタリング文字が前作の続編のような印象ですが、実際音の方も前作の流れを汲むものとなっています。
全体的に柔らかで静かな曲が多く、また、今回もキロロのカバー曲が1曲あります。ぱっと聴いた印象がとても滑らかなので初めは引っ掛かりに弱いのが気になりましたが、聴き込むとこれはまたひとつのカラーとして耳になじんできました。
3曲目「Love」はTanyaの曲で、ハーモニカの入ったカントリー・タッチの曲で、アルバムの中では最も明るい印象の曲です。
イントロのバグ・パイプのような音(多分サックスのサンプリング音)が印象的な8曲目「比朋友多一點」はアコースティックな演奏が印象的な曲。間奏では少しジャズっぽさもみられます。
ハイライトはトータル7分30秒にも及ぶ郭子作のラスト・ナンバー「序曲」〜「四月天」。オーケストラによる感動的な序曲、そのままボーカルへと引き継がれて行く流れはとても感動的。入魂の1曲と言えましょう。子守唄を思わせるメロディーラインがとてもいいです。

江美h 「第二眼美女」 ・チャン・メイチ
江美h が放つ、「我愛王菲。」に続く待望のセカンド・アルバムの登場です。
彼女は美人タイプじゃないけど、かわいい。というより愛くるしい。そして、彼女の歌う歌もまた愛くるしい。
このアルバムはCDプラス仕様になっていて、CDプレーヤーで11曲、パソコンでライブ映像が2曲見れます。
CDトラックのほうですが、溌剌とした印象はそのままに、しっとりした曲では感情のこもった歌い方が印象的で、前作より大人びた雰囲気がします。
1曲目「我多麼羨慕[イ尓]」がいきなりドラムレスのしっとりしたバラードで意表を突かれます。
2曲目はイチオシの「[イ尓]那邊是晴天」。落ち着いたテンポの生ドラム、憂いのこもったギターのトーン、優しいメロディー・ライン、感情を盛り上げるストリングス、すごくいい曲です。ストライク!
4曲目「如果[イ尓]不打算愛我」はいきなり半速リズムと不穏なエレクトリック・ギターの音にどきりとするスローでヘビーなナンバー。かっこいい。彼女の新しい魅力となっています。
5曲目「Crazy For You」は一変してファンキーなギターリフのイントロがかっこいいブルース・ロック・ナンバー。なんとなくレゲエを思わせる後ノリベースもいい感じ。
ラスト「袖手旁観」はオーケストラをバックに再びドラムレスのしっとりした曲で幕を閉じます。なんと作詞が姚謙、作曲が黄國倫という黄金の「我願意」コンビが当たっています。
映像トラックは順子の「寫一首歌」のカバー、そして王菲の「我願意」のカバーを収録!

蘇慧倫 「懶人日記」 ・ターシー・スー
暮れも押し迫った1999年12月31日、本国台湾でターシーの新譜が発売になりました。
「sha瓜」「Happy Hours」と、元気にはじけた快作を連発し、実力派アイドルの底力を見せつけた彼女、更にぶっ飛んだ方向にいくかと思われましたが、ここに提示されたアルバムは、全速力で駆けてきた速度を一度弛めて立ち止まり、ちょっと周りを見廻してみた、そんな感じのするアルバムとなりました。
結構バラエティーに富んだ曲が入っていますが、全体を包むトーンは穏やかで大人しめ、悪く言えばとっ散らかった感じがします。
そんな中バツグンに異彩を放っているのが伍佰兄貴作の「懶人日記」。「ワン、ツー、スリー、フォー」というターシーのかわいいカウントに続いてなぜか3拍子(笑)というか8分音符4拍子+2拍子といったようなへんてこりんなファンキーかつレイジーなリズムになだれ込む不思議な曲。日本語の「ばか・やろ」(巴格野魯)で始まる字余りチックな歌詞も可笑しい。この曲1曲でもファンは買いでしょう。
相変わらずロック・スピリットが溢れている張震嶽作「[イ尓]有離開的自由」、軽快でメロディーラインの美しい李欣芸作の2曲「最後一小時」「酸」がとてもいい感じで気に入りました。
彼女は曲をほとんど書かないので信頼できるスタッフ、例えば彼女と相性のいい伍佰、張震嶽辺りに全面プロデュースを任せてみたら面白いと思うんですがどうでしょう。

王菲 「唱遊大世界王菲香港演唱會98-99」
    Faye HK Scenic Tour 98-99 ・フェイ・ウォン
(特薦!)
 王菲が98年から99年に掛けて行われたライブ・ツアーで初めて日本でもコンサートを行った王菲の、これは香港で行われたライブを収録したアルバムです!
まず、驚かされるのはその臨場感溢れるライブ(=反響)な音取りでしょう。一般にライブアルバムといっても、音がやたらクリアーでノイズも少なく「これじゃスタジオ盤と変わらない。」といったものも中にはありますが、このアルバムはすごい。曲間やMC中はもちろん、歌が始まっても終始(!)途切れることのない歓声や拍手がリアルに収められているのです。それらが、歌を邪魔するどころか、まるで自分が会場にいるような錯覚すら起こさせてくれます。ちょっとブーミーな音作りは会場で聴いた雰囲気そのまんま!。いや、正直遠目で良く見えなかった会場よりぼくは感激してしまいました。
日本ではほとんどMCしなかった王菲も、ここではとってもハイに「広東語」でしゃべりまくっています。
また、広東語の歌が大半を占めているのも日本公演とは違っているところです。
それにしても、王菲の声は素晴らしい。どうしてこんな美しく歌えるのでしょう。
ハイライトは、日本でも話題になったQueenの「Bohemian Rhapsody」のカバー、新年のカウントダウンに続いて歌われる「蛍の光(Auld Lang Syne)」の大合唱、そして鳥肌モノの涙なしでは聴けないオーラス「我願意」〜「執迷不悔」。「新年快樂!!。Bye Bye!!!!!!!。」もう、かっこ過ぎ。
会場に行けなかった人も、行ったけどもアリーナ前列に行けなかった人も、ぜひ。

GoGo&MeMe 「Say Forever」 ・ゴーゴー&メイメイ(推薦!)
台湾では珍しい(多分)兄妹−つまり、哥哥&妹妹による−デュオ・ユニットのデビュー作です!
お兄さんはほとんどの曲の作曲をこなし、また楽器(ギターもキーボードもこなす)担当で歌はほとんど歌わず、妹がボーカル担当というスタイルも珍しい(多分)。
その構成からなんとなくキロロのような音楽を想像していましたが、確かにそんな感じの曲もありますが、音楽的間口は結構広く、フォーク・ロック・タッチのスムースで暖かい雰囲気が印象的です。
妹さんの歌声はなかなかしっかりとした芯を感じさせ、でもきつくもなく温かな声で好感度大です。
まず冒頭を飾る「Heaven」が素晴らしい。ミディアム・テンポの緩やかでめり張りのあるリズムに支えられとてもいい感じ。サビの♪Heaven〜というちょっとハスキーで透き通った声が美しく、サビの真中で転調する粋な構成、ニクイです。
2曲目「Say Forever」は主打曲第一弾で、日本人の琴線をくすぐる美メロのミディアム・ナンバー。この曲がキロロっぽいといえばキロロっぽいかな。これも、いい感じ。
バラードを挟んで、4曲目「説[イ尓]會讓我」はアコースティック・ギターのリフで始まる、フォーク・ロック・タッチの爽やかでドリーミーな曲。メロディー・ラインもいいし、フックも効いているし、言うことなし!
更にこの路線を推し進めたような8曲目「It's Enough」は英語詞で歌われており(オリジナルです)、Melanie Garsideを彷彿とさせる素敵な曲です。言葉の乗せ方もネイティブかと思うほどで舌を巻くばかりです。
早くもこれからが楽しみな人たちです。


12月
阿妹妹 「想」 ・アメイ・メイ(推薦!)
前作「愛最大」からほぼ1年ぶり、阿妹妹の新作が届けられました。
前作はファンキー・ダンシング・ソウル・ミュージック全開のノリノリの1枚でしたが、本作はジャケットも自然体、音楽のほうも自然体で爽やか、優しさ漂うものとなりました。なんと、このジャケットは日本人スタッフのもと、日本で撮影されています。
とにかく1曲目「想」がアルバムの印象を決定付けています。爽やかなミディアム・テンポの曲で2人のハモリもばっちり、覚えやすいサビが印象的です。
2曲目「冬天」はSaya+夢.飛船をゲストに迎えた曲で、ソフトでメローな雰囲気がいいです。Sayaの素直で綺麗なソウルっぽい歌唱が素晴らしい。こうして聴くとお姉さん(張惠妹)とはずいぶん声質が違いますね。
5曲目「無人島」はRayaのソロ。ちょっとコミカルで楽しい曲で、爽やかなギター・リフもいい感じです。
7曲目「不能改」(Sayaのソロ)はひしゃげたシンセのリフが印象的なテクノ・ソウル・エスノ・ロック(?)といった感じのなかなかユニークな曲。こういうのも、結構好きです。
ラストの「著火[口拉]」はタブラのなまめかしい音で始まり、エスニック調か?と思わせておいて、懐かしの歌謡(?)・ロックンロールになだれ込む、これもなかなかにチャーミングな曲。
一作ずつ無理なく成長していく彼女たちはほんとにグッド。

廬春如 「我不是[女也]」 ・ルビー・ルー
台湾から、ソウル/R&Bテイストの新人の登場です。
今Top 20でも上位に上がってきた「我不是[女也]」は彼女の声量が生かされたバラードで、盛り上がるとてもいい曲。「わたしは彼女じゃない、私は私。」という歌詞と、性格の良さそうなビデオ・クリップも印象的でした。
パワフルでノリのいい「Go On」ではラップも難なく聴かせ、なかなかにかっこいい。
全体に洋楽志向のソウル色と、バラードが半々といった印象でしょうか。あとはいい曲に恵まれて、個性を発揮していって欲しいなと思いました。
なお、12人のRubyが見れる折り畳み式特殊ジャケット仕様となっています。

范曉萱 「我要我[イ門]在一起」 ・メイヴィス・ファン(推薦!)
ドラマティックでアーティスティック、ダークでメランコリック、オルタナティブでプログレッシブ。
彼女はこんなに遠いところまで来た。いったい誰に今の彼女の姿を想像できただろう。
普通に聞き流せる普通のポップスは1曲もない。どの曲も聴く人の耳に心に引っ掻き傷をつくる。
彼女の高い志は今ここにひとつの形を成したのではないだろうか。

アップテンポのマイナー・ワルツで始まる「我要我[イ門]在一起」。50年代のセピア色の映画のワン・シーンに迷い込んだようなメランコリックな旋律で始まる。サビでは一転してふんわりと天空を漂うような「ai-yo, ai-yo」というスキャットが美しくも切ない。アコーディオンも入る間奏部ではサーカスのような不思議な浮遊感が漂う。
2曲目「Sometimes」は最も落ちついた雰囲気のバラード。弦楽器のピチカートが独特のゴージャス感を醸し出す。
3曲目「我是真的很会心」はダークな曲調のロックでサビでせめぎ合う楽器の音とメイヴィスの多重録音ボーカルが圧巻。
5曲目はさらにダークで、近未来的な音処理と切迫したボーカルがすごい。一時期のコクトー・ツインズや王菲らの音世界に通じる独特な音だ。
6曲目はぼくがとても好きな曲「過期」。6/8拍子の切ないスロー・バラードで透明に突き抜けるボーカル、エンディング近くでの「我[イ門]的愛情 就這麼過期」のリフレインがいつまでも心に響く。
9曲目「看不見」はエレクトリック・ギターとベースだけをバックに淡々と歌われる曲。EBTGを結成する前のベン・ワットのような音世界。
ラスト「Into You」はノイズ・ギターの海にファズの掛かったボーカルが絡むものすごい陰鬱なオルタナ・ロック。しかも、Beatlesの「I Want You」の如く、突如として曲は(そしてアルバムは)終わる。思わずのけぞったのはぼくだけではないだろう。

メイヴィスはこのアルバムでも、作詞、作曲、プロデュース、コーラスアレンジ、ビジュアル、コピーライトとアルバム作りの多くに関っています。
前作と大きく異なる方向性を打ち出したメイヴィスはまだ22歳。その若さを考えると少し(これからどこへ行くのだろうという)不安も感じますが、これからも独自の道を進んで欲しいと思います。

張惠妹 「妹力99張惠妹演唱會」 ・チャン・ホェイメイ(2VCD)
会場を埋め尽くす人、人、人、高まる熱気。アジア中のファンを興奮の渦に巻き込んだ1999TourのVCDが遂に出ました。
頭から「給我感覺」「Bad Boy」「High High High」と飛ばして、すごい盛り上がりよう。観客のノリは去年のライブより格段に上がっております。
アルバムとまた違ったアレンジを楽しめるところもライブならではの楽しさでしょう。アコーディオン、ピアノ、ギター、ベースのアコースティック・セットをバックに歌う、ずいぶん穏やかで風通しの良くなった「一想到[イ尓]呀」が最高!!ストライクです。
ふたたび大盛り上がり(阿妹、観客に水かけてます)の「三天三夜」もすごいですが、続いて歌われる「我可以抱[イ尓][口馬]」はしっとりした曲なのに、前の曲につられてか(笑)ずいぶん盛り上がってます。アルバムより幾分リズミックでソウルっぽいアレンジが面白い。
「別在傷口灑鹽」では途中で感極まって少し歌えなくなってしまいました。
阿妹妹の「愛最大」、阿妹ママも加わった阿妹ママの曲「A-LA-MU」も収録。
残念なのは、上の写真にある阿妹のドラムを叩くシーンと「姉妹」がカットされていること、ボーカルが小さめ(ひょっとしてカラオケ対策なのでしょうか)なことですが、まもなく出るDVD版に期待することにしましょう。
なお、VCDはB5サイズブックレット付きの豪華版がお勧め。
ところで、観客がみなペットボトルのようなものを手に持って振っているので??と思っていたら、スプライトを形取った蛍光棒(ボトル?)だったのですね。中にはどさくさにまぎれてただのペットボトルを振っている人も映っていたりします(笑)。

趙薇 「愛情大魔咒」 ・ヴィッキ・チャオ
今や中華圏で知らない人はいない、大陸出身売れっ子女優ヴィッキのアルバム。1999年9月リリース。
決して歌がことさらうまいというわけではないのですが、女優らしい表情豊かな歌い方と、素直で飾らない雰囲気がなかなかグッドな好盤です。
1曲目はプロモで掛かりまくっていた「愛情大魔咒」。テクノ・ビートの軽快な曲でキャッチーなスキャットもかわいい。
2曲目「是否」は一転して穏やかで静かなバラード曲。繊細なピアノの音が透明な彼女の声に良く合う。
特にぼくが気に入ったのが6曲目「車廂 包廂」。ミディアム・テンポのリズムが良く立った曲で、アルバム中最もソウルっぽい。「♪空回り、空回り、空回り、空回り、私は転ぶ、私は愛にころりん。左にころりん、右にころりん、一回転、乱転、不転、方向を見失う〜。」う〜ん(笑)。
「耳洞」と「E-Mail Love」は再びきれいなメロのバラード曲で聴かせるし、「玩[而/女]はもっともロックっぽいつくりの曲でD-F-G-Aのサビがクールでかっこいい。
バラードあり、アップテンポあり、カラフルで一気に聴けてしまうアルバムです。

徐若[王宣] 「不敗の恋人」 ・ヴィヴィアン・スー
ヴィヴィアン待望の中国語の新譜の登場です。今や台湾と日本をつなぐ魅力的な歌手になりましたね。
地元台湾での人気が爆発した前作「大麻煩」は、台湾勢・日本勢入り乱れての制作で、キャッチーでタイトな表題曲をはじめ魅力的な曲満載のカラフルなアルバムでした。
さて、本作は前作に較べると、淡色系の仕上がりと言えるでしょうか。前作で見られた日本勢によるファンキー・チューンは少ないものの、聴き込むとゆっくりと染みてくるバラードが多くなっています。
アルバムはキャッチーなタイトル曲「不敗の恋人」で始まります。ハーモニカも入った快活な曲です。
3曲目「希臘咒語」は浮遊感漂うギリシャ語の呪文(?)で始まる面白い曲。
ぼくが特に気に入ったのは4曲目の「姐 [女尓]睡了[口馬]?」。「お姉さん、寝たの?」という題のように、枕もとでお姉さんに語りかけるような歌で、子守唄のようなせつなく優しげな雰囲気、フリー・テンポで静かに盛り上がるのがとてもいい。
6曲目「不需要理由」もドラムレスの静かなバラード。こういう曲は何度も聴くほど味が出てくるように思います。
ブルージーでダルな歌い方が面白い「21世紀」は、アルバム中もっともキュートな曲。さらさらと流れるサビがとても気持ち良い。
また、いつもは快歌を提供することが多い深白色が、珍しくバラード曲「貝殻」を提供しています。ただそこは彼のこと、深みのあるメロディーラインで聴かせます。憂いのあるボトルネックギターもいい感じ。
ラストは「希臘咒語」の日本語バージョン「Ars Amatoria」でアルバムを締めくくります。