*1999年春* 5月 曾寳儀「a-baw曾寳儀・阿寳」 ・ア・バオ(特選!) 初夏にぴったり、柔らかで爽やかな、阿寳の1stアルバムを紹介しましょう。 フルアルバムは初めてながら、その歌声は既に「想念雨生」で披露済み、また司会などで見かけた方も多いのではないでしょうか。 彼女はなんと、映画俳優曾志偉(映画「甜蜜蜜」でやくざ役をしていた人ですね)の娘さん。そういえば顔の輪郭とか低めの鼻(失礼)はお父さんに似ていますね。 1曲目「[イ尓]一直存在著」はミディアム・テンポでリズムが立った落ち着いた曲。最近の蘇慧倫たちに通じる渋い曲で、たよりな気だけどあったかな歌声がそよそよと気持ちいい。ストライク。なんと許茹芸の書き下ろし曲。彼女にしてはめずらしい曲想です。 主打曲である2曲目の「等[イ尓]道歉」は爽快・人力ギター・ポップ。とってもノリのいい曲で「だんにだおちぇ〜ん」というサビは思わず口ずさんでしまいそう。なんとこの曲をはじめ何曲かでウエスト・コーストの名手、Leland Sklarがベースを弾いています。これまたストライク。ライブで歌ったら気持ちいいだろうなあ。 ちなみにこの曲のアニメーションを交えたビデオ・クリップは、かわいくてお勧めです。 4曲目「分享」はハンモックの上で風に揺られながらお昼寝したいゆったりした曲。こういった曲は彼女の素直な歌声には良く合う。 5曲目「最dong得愛[イ尓]」は「○的○的○的○的」という歌詞もかわいい、再び快活な曲。なんと、作曲は郭子。彼、バラードだけじゃなかったんですね〜。 9曲目「不想失去[イ尓]」は先の「想念雨生」でも披露していた張雨生の曲。改めて、いい曲です。 歌唱力で聴かせるアーティストはもちろん好きですが、彼女のような素直で気負いのないボーカルも好きです。 ポップス・ファンはぜひ。 潘越雲「拍拍屁股去戀愛」 ・ミッシェル・パン 潘越雲は1981年デビューの台湾のベテラン・シンガーです。過去のアルバムを聴いたことがないので詳しいことは判りませんが、なかなか太く力強い歌を聴かせる人です。 なぜかポパイみたいに力こぶをつくっている恐いジャケット、日本人には“変な”アルバム・タイトル(ちなみに「拍屁股」は熟語で「何も話すことがない」といった意味のようです)にちょっとひるみますが、音のほうはなかなか風通しのいい穏やかな感じです。レコーディングはカリフォルニアでされており、ミュージシャンも恐らく現地の方を起用しているものと思われます。そのためか、やや地味目のバラード曲も味のある仕上がりになっている気がします。 ラストの厚いシンセ・ストリングスをバックに歌われる「Forever」は淡々としながら緩やかに盛り上がっていく、とてもいい曲です。 4月 [虫章][虫郎]IPIS「[封/帛]個忙」 ・IPIS 「♪ばん、ばん、ばん、ばん、ばん、ばん、ばん、ばん、ばん、ばん、ばん、ばん、ばんがまんっ」 一度聴いたら耳から離れない、言葉は分からなくとも思わず口ずさんでしまうサビ、さりげなくうまいコーラス・ワーク、フィリピン華僑の男女混成兄弟4人組IPISの新作はそんなドゥー・ワップ調の曲「[封/帛]個忙」で始まります。 前作はちょっと曲が地味すぎて残念な気がしましたが、本作は1stの明るさを取り戻し、加えて兄弟ゆえの素晴らしいコンビネーションもより強力になりました。 特筆は紅一点のJenniferのソロ・パートがかなり増えていることでしょうか。それゆえ、華のある実にバランスのいいコーラス・ワークを聴かせています。 最後に、3重構造になったとっても凝ったケースに入っていることを付け加えておきましょう。 藍心[シ眉]「看新[シ眉]」 ・ラン・シンメイ 前作「肉飯餅[米団]」は強烈なジャケット・ワークにひるむものの、陽気で明るいロックと胸打つバラードのコントラストも素晴らしいアルバムでした。 本作「看新[シ眉]」はそのアルバム・タイトルから想像できるように、新しいスタイルを打ち出した模様で、前作の楽し気な路線とはずいぶん趣の違うものとなりました。 前作同様、黄韻玲が多くの曲でプロデュースを担当していますが、加えて陳珊[女尼]が共同プロデュースも含め3曲担当していることに注目されます。 その影響もあるのか(しかも冒頭3曲が陳珊[女尼]プロデュース)、全体的に打ち込みを多用し焦燥感漂う鋭角的な曲が増えています。後半は比較的穏やかな曲が多く、藍心[シ眉]と黄韻玲の共作「亂糟糟」はいかにも彼女ららしいノリのいい曲でなごめました。 なぜかもんた&ブラザーズの「Dancin' All Night」のカバー曲入り。しかもサビは中国語で「但是又何奈」と歌っております。そして最後はやっぱり不安げな鋭角的な曲で終わるのでした。 齋秦「齋秦的世紀情歌之迷」 ・チー・チン(特選!) ぼくが齋秦について知っていることは齋豫姉さんの実弟ということと、Top 20に登ってくる曲はどれも湿っぽいバラードだなあという印象ぐらいでした。ところが、最近 Top 20に登場してきた齋秦の曲を聴いてぼくは耳を疑った。「これがあの齋秦?」。 その時聴いた曲こそ、本アルバム1曲目の「一無所有」という曲ですが、テクノとニュー・ウェーブとハード・ロックが一気に来たみたいなアグレッシブな演奏と歌で、ぶっ飛び。かっこ良過ぎです。 本アルバムは題からも想像できるように簡単に言うとラブ・ソングのカバー集ということになりますが、どの曲もアレンジが半端じゃない。 とことん生バンドの音にこだわった、無骨で男気溢れる硬派のロックが大半を占めます。特に軽いオーバードライブの掛かったギターの音、乾いたドラムの音が素晴らしい。ちなみに「一無所有」は中国の崔健の曲。 林憶蓮がライブ「最愛」で取り上げていた「情人的眼涙」と「寂寞難耐」もすっかり渋い曲になっています。 王菲の「我願意」のカバーは原曲に敬意を表してか、淡々としたギター弾き語りのアレンジ。これがまたじんときます。 10曲目(漢字がない)はほとんどレッド・ツェッペリン。「我是一片雲」はプログレ?? 台湾の男性歌手は軟弱でという方にもお勧め、目からウロコを落としましょう。 呉名慧「無可救藥」 ・Mar-G 黄韻玲率いる友善的狗からまた期待の新人が登場しました。 アルバム・フォトではどのページも目を閉じていたりフォーカスをずらしてあって、顔が良く分からないのですが、なかなかミステリアスなジャケットです。 まず、驚かされるのが繊細かつ神秘的な裏声を駆使したボーカル。王菲を彷彿とさせる瞬間もありますが、もっと感情的なところは、Tori Amosに近い気もします。 全曲の作曲を鮑比達が手がけており、結果いろんなタイプの曲がありながら不思議と統一感のあるクールな歌世界を展開しています(ピアノ及び全キーボードも彼自身)。 個人的にはイギリス的叙情漂う「冷飯」、鮑比達の入魂のピアノと呉名慧のボーカルが静かな火花を散らす、6分にも及ぶ「春色已冷」が気に入りました。 錦繍二重唱「我的Super Life」 ・ウォーキー・トーキー ほのぼの路線驀進中、誰が言ったか(誰だっけな)台湾のKiroro、錦繍二重唱の2nd アルバム登場!。 箱入りジャケットの裏を見ると、「10首10主打」と気合い充分。 大人しいイメージも一新、「告別悲情、行[月卻]歌壇暴走2人組」とあるように、今作はジャケット同様とっても明るい! 一曲目「我的Super Life」から歌謡ポップス調の陽気な歌で、「我的天、ぷっしゅ!」という合いの手がとってもかわいい。 2曲目「交換日記」は2人の可笑しいおしゃべりから始まる、静かな曲。黄韻玲が書き下ろしています。 3曲目「明天也要作伴」はウー・スーカイの曲で、中華なメロディー・ラインが和めます。 「快點!! 快點!!」はなぜかイントロが「Proud Mary」(笑)。 あと一般的には今売れている阿牛とのデュエット曲が話題かな。 唯一このアルバムで錦繍二重唱の二人の書き下ろし曲「幸福」は、エレピとオルガンの穏やかな音で始まる温かな曲で、アルバムの中でも光った出来栄えとなっています。 個人的にはちょっと歌謡ポップス寄り過ぎるきらいもありますが、これはこれで明るくていいですよ。前向きなパワーがもらえます。 なお、ブロマイド3枚入り写真ホルダーが付いています。 高慧君「認眞的女人最美麗」 ・フランシスカ・ガオ(特選!) 台湾では日本と同じく新人発掘に余念がないように感じますが、実力ある新人が次々と現れるところが台湾のすごいところだと思います。ここにまた"才色兼備"の新人の登場です。 彼女の歌をはじめて聴いた時、最近はSHINOやMar-Gのような個性的なアーティストが増えてきただけに、割とおとなしい印象を受けたのですが、どうしてどうして、何回か聴くうちにすっかり彼女の魅力にはまってしまいました。 例えば1曲目「認眞的女人最美麗」、出だしは台湾バラード調で彼女の声も透明で温かい感じなんですが、サビに入って張りのあるよく通る声にびっくり、曲が終わる頃にはすっかりその歌声に感動してしまいます。2曲目の「管我快不快樂」ではさらにハスキーさ、ワイルドさも加わって、張惠妹ばりのパワフル・ボーカルが冴えます。 フォーキーな「Asking For The Moon」、アコギのギター・リフが冴える凝った展開の「報應」、キャッチーな「You & I」、穏やかなオルガンの音がいい感じの「Please Don't Go」など、曲も魅力的。 派手さはないけどじわじわくる実力派、これからも応援したい人です。 3月 陳慧琳「真感覺」 ・ケリー・チャン ちょっと遅いご紹介ですみません(こればっかだな)。ケリーの最新広東語盤が早くも発表となりました。 前作の國語盤「愛我不愛」はクールでなかなかの好盤でしたが、ふっと力を抜いた時の声の色っぽさはやっぱり広東語のほうが出ている気がします。 1曲目「真感覺」はお馴染み雷頌コの曲で、落ち着いたブリティッシュ・ポップっぽい曲は相変わらずいい感じで和めます。2曲目「對[イ尓]太在乎」はバラードですが、後半ギターがうなり、なかなか盛り上がります。 6曲目「一生一愛情」も雷頌コの曲で、ここでも冴えたポップなアレンジを聴かせています。 個人的にとても気に入ったのが9曲目の「還是趁早把[イ尓]忘記」。ウッド・ベースが入ったとてもオシャレでかわいい曲で、ケリーも気持ち良さそうに歌っています。 僕はリミックスというのはあまり好きではない、というか元曲を越えるリミックスを聴いたことが余りなくて、わざわざリミックスをいれるのに疑問を感じることが多いのですが、11曲に入っている「真感覺」のリミックスは元気があってなかなかグッドです。 このアルバムには香港の時代広場でのライブVCDがついていて、こちらもお勧め。 あの狭いデパート前のスペースに、人、人、人・・。すごいです。 動くケリーは、さすがにかっこいい! 李[王文]「大家都愛李[王文]萬人迷演唱會精彩實録」 ・ココ・リー 発売は1998年末なので、ずいぶん遅いご紹介となりました。実は、ジャケットの余りにもショー的な雰囲気から、音楽的にはもうひとつなのではという邪推をしてしまいました。大変失礼致しました。これは、ココのファンはもちろん、ポップ好きな人みんなにお勧めできる楽しいアルバムです。 ライブならではの凝った展開、ばねのある演奏は素晴らしく、全篇でサックスがさらに雰囲気を盛り上げます。 先にMTVでヒットした「過完冬季」もいいし、原曲よりいくぶんルーズでアメリカの土臭い(?)「亮亮的承諾」も盛り上がります。白眉は、コーラスをバックにアカペラで歌われる「黙黙愛[イ尓]」。会場も大歓声!。まさにライブならではの楽しさです。 それにしても、ココの声は明るい。王菲の歌が内面に向かうものだとしたら、ココの歌は外に開かれた声という気がする。歌って踊ってこの安定した歌いぶりはすごいよ。加油、Coco!! 李慧敏「在屋頂唱歌」 ・アマンダ・リー 香港のシンガー、アマンダ姉さんの新譜です。 実はアマンダ姉さんのアルバムを買うのは2回目なのですが、大人しいバラードを歌ったかと思うと、軽率(?)ダンス・ビートのアルバムを作ったりして(→未確認情報)、いまいち掴めておりませんでした。 でも、この新譜はいいです。1曲目「我[dong]」がいきなり、最近の蘇慧倫、林憶蓮に通じる渋いアコースティック・ビートの曲でとてもいい感じ。冒頭に入る尺八の音もいい味出しています。 そしてなんといっても、注目は4曲目の「在屋頂唱歌」。主打曲を4曲目に持ってくるのも自身の表れでしょうか。妖しく艶めかしいメロディー・ラインにのる色っぽいボーカル、憂いを含んだギター・ストローク、最高です。余談ですが、この曲のビデオ・クリップにはファミリー版とアダルト版(!)があるらしく、中文Top 20で流れているのは当然ファミリー版なんですが、これとてけっこう危ない雰囲気でした(笑)。かっこいい・・・。 なお、本作は國語版です。(狙っているわけではないんですが、國語版のアップが多くてすみません。) 周華健「My Oh My 」 ・ワーキン・チョウ エミール改めワーキン・チョウの新譜は英語アルバムです。 主打曲「My Oh My」の原唱は不勉強にして知らないですが、とてもいい曲。やさしげな美メロの曲で後半大合唱で大盛り上がりです。 11曲中8曲がカバーですが、変わったところでは、Bob Dylanの「Knockin' On Heaven's Door」を取り上げています。この曲のみライブ録音でなかなかの出来ですが、どうせライブでやるんなら10分くらい延々とやって欲しかったな(笑)。 蘇慧倫に続きなぜか彼もThe Beatlesの「Yellow Submarine」をカバーしています(Rock Recordsで流行ってるのか?)がこちらはBeyond、無印良品、リッチー・レンを迎えて硬派のロックに仕上げています。他にも女性ボーカルとのデュオがあったりなかなか飽きさせません。楽しい一枚です。 蔡健雅「Tanya 蔡健雅」 ・タニア シンガポール出身のシンガー・ソングライターで、英語アルバムは既に発表済ですが、本作は初の中国語アルバムとなります。 中文Top 20でもじわじわとヒットしてきた主打曲「呼吸」の印象から、Clannadのようなヒーリング系の曲を得意とするシンガーかと思っていましたが、実際聴いてみると、音楽性はかなり豊かで、ブリティッシュ・ポップ、アコースティック系、SSW系アメリカン・ミュージックなどの影響が見え隠れします。 1曲目「好無聊」、3曲目「[イ尓]快走開」に代表される彼女の作る曲はアコースティック・ギターとエレクトリック・ギターを絶妙をフィーチャーしていて、湿った空気感がThe Sundaysのようでもあり、かなり好き。 2曲目「呼吸」は太く透明な声がとても魅惑的。いい曲ですが、アルバムの中ではどちらかというと異色です(この曲は彼女の作曲ではない)。 5曲目「與[イ尓]無關」は彼女の弾き語りギターにチェロが絡む渋い曲で、彼女の透明な歌が堪能できます。 ちょっとカントリー・バラードのようなメロディーの「無所謂」も胸にじんときます。 さらにカントリー・ロック色の強い「餘興節目」をはじめ3曲では彼女のハーモニカも聴けます。これが、実にいい味を出していて、オヤジの心に染みます。 The Sundays, EBTG, Sheryl Crow, Divine&Statton, Jonatha Brookeあたりを好きなひとにはぜひお勧めです。 ところでこのジャケット写真、主打曲が「呼吸」なんで、ずっと手を息で温めている動作だと思っていましたが、内ジャケットを見て、もしやこれはハーモニカを吹いているのかなっと思いましたが、皆さんはどっちだと思いますか? 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