*1998-9年冬*

2月
何欣穗「完美小姐 Miss Perfect」 ・シャシャ・ホー
またまた台湾から素晴らしい才能の出現です!
のっけからブラスを大フィーチャーしたうきうき・わくわくのスカ・ロックナンバー「miss perfect」で始まります。ヴォーカルがはいったとこでいきなりドラムのリズム取りが半分になって体が思わずつんのめるところも渋い。続く「it's not OK」も良質のギター・ポップ。
メランコリックな「分心」、オルガンをフィーチャーした軽快な「everyday's a holiday」に続くのは主打曲「自己[口畏]狗」(犬のエサはご自分で)。疾走するギター&リズム隊を、早口言葉のような歌詞が畳み掛けるパンキッシュな曲。みんなカラオケでここぞとばかりに張り切るんでしょうか(笑)。ブラスも入って気分はGreen Day(!)。
そして・そして・そして、7曲目には、涙ちょちょぎれロックバラードの「我不想説話」が待ち受けています。色っぽく転がるピアノの右手、ふわっと包み込むオルガン、切ないボーカルがかぶさる頃には、ここで泣け〜と言わんばかり。途中からバイオリンまで入ってきます。Rolling Stonesの Fool to Cryに涙した人なら、もう、もう・・・。
この人は完全にロックしています。
なお、全曲彼女の作詞、曲も3曲で書き下ろしています。
詞の世界はねじれている模様で「2:54天還没亮」の歌詞は、ここではちょっと発表できないくらいきてます。う〜ん・・・。

柯以敏「想[イ尓]想瘋了」 ・ミンディー・クー
mindyの新譜が出ました。彼女は伸びがあり太く声量のある歌声の歌手です。彼女の歌う曲はちょっと粘りのあるバラードが多く、もうちょっと軽い歌も歌ったらいいのになと、個人的には思っていました。本作も確かにバラードが多いのですが、今までに比べ曲の幅が出てきていい出来です。
1曲目「想[イ尓]想瘋了」は「想[イ尓]想[イ尓]想[イ尓]・・・」というサビのリフが心に残る曲。何と彭佳慧が書き下ろしています。彼女、自分のアルバムでも曲は作っていないんじゃないでしょうか。
後半に割と軽目の曲があって8曲目「打電話」、9曲目「想念[イ尓]」、10曲目「戀天」あたりがお勧めです。

菲菲「出境入境」 ・オーヤン・フェイフェイ
日本人なら知らない人はいない欧陽菲菲の全中国語のニュー・アルバムが、今や飛ぶ鳥落とす勢いの上華レーベルからリリースになりました。
なんと言っても、MTVでも流れている1曲目の「出境入境」が素晴らしい。「雪の降る飛行場で・・」で始まる、胸が熱くなるバラード。余裕ある温かな歌声と美メロの名曲です。
懐かしさ漂うダンス・ナンバーの「ヘイ、ヘイ、Taxi」(クレジットにはそっけなく日本曲となっています)は許茹芸とのデュエットで、全く声質の違う2人の声がいいコントラストとなり、とても楽しげ。筒美京平作の「愛我在今宵」は、これもまた美しいメロディーで感動します。
前後しますがこのアルバムにはまったくの新曲に混じって、日本でヒットした曲の中文再録の曲が入っています。
こういう曲を聴いていると70年代から80年代に日本人が作り出したメロディーが、台湾で確実に息づいているようでなんか嬉しくなります。いい曲はいつまでも残していきたいですね。

林憶蓮「鏗鏘[王攵]瑰」 ・サンディー・ラム
Welcome Back, Sandy! 結婚、出産、育児を経て、私たちの前に再び元気な姿で戻ってきました。オリジナル・スタジオ・フル・アルバムとしては1997年1月の「Wonderful World」以来、また中文版としては実に1996年7月の「夜太K」以来の発表となりました。
発売前から本作については、今までの彼女のスタイルにない斬新なものになるであろうとか、いろんな情報が飛び交いましたが、実際に聴いてみると、そこにはいつも通り穏やかな表情のサンディーが歌っている、と個人的には感じたのですが、いかがでしょうか。収録曲は全部で10曲です。
1曲目「鏗鏘[王攵]瑰」はスネア・ドラムのフィルで始まる、サンディーのオリジナル曲。Shawn Colvinに通じる洋楽系のアコースティック・ロックを思わせる曲で、いきなりサンディーの才能に驚かされます。ハモンド・オルガンが実にいい味を出しています。
2曲目「理由」と、3曲目「Let Go」は今人気の張震嶽が書き下ろしています。
温かな雰囲気漂うバラード曲。
4曲目「風箏」はタイトでロックっぽさの漂う乗りのよい曲でサンディーのボーカルも生き生きとしています。下降するキーボードがいい味出しています。
5曲目「讓一讓」はこれは珍しい、重いディストーション・ギターのリフで始まるさらにロック色の強い曲。サンディーは、ことさらロックぽく歌おうとはせず、柔らかにそして少し気だるく歌っています。
6曲目は、当初アルバム・タイトルになるはずだった「飛翔」。
たゆたうようなふわりとしたピアノのイントロで始まる印象深い曲。サンディーの柔らかなボーカルがここでも堪能できます。アルバムの中でもベスト・トラックでしょう。
7曲目「明白」は、個人的にかなり気に入った曲です。
6/8拍子のメロディー自体は懐かしさの漂う中華歌謡を思わせますが、リズム取りがオルタナ・ポップぽくて面白い。最もサンディーらしさ漂う吐息のようなシルキー・ボイスが冴えます。
このアルバムにもおまけVCDがついていますが、よくあるビデオ・クリップではなくて、ベッドの上であぐらをかいたサンディーのロング・インタビューやスタッフへのインタビュー、フォト・セッションの模様を捉えたファン必見の映像になっています。
ひとつだけ、このアルバムに注文をつけるとしたらサンディーのボーカルにかかったエコーがちょっと強すぎること、そのせいで全体にクールにまとまっている点かな。これからも、歌い続けてね。

1月
黄韻玲「黄韻玲'93巡回演唱會實録」 ・ケイ・ホワン(特選!)
うわあ〜。やっぱりいい。最高です。
最近は、パフォーマーとしてより、創作者としての活躍が多い彼女の貴重なライブ・アルバムです。
彼女より歌のうまい歌手はたくさんいるし、もっと録音のいいライブ・アルバムもたくさんあるでしょう。でも、このラフさ加減がいかにもライブ的だし、このアルバムの魅力でもあります。
ライブということもあって実に和やかな雰囲気の中、オリジナルに加え、民歌や演歌(かな?)なども織り交ぜながらライブは進行します。6/8の「聽一首傷心的歌」や「喜歓[イ尓]現在的様子」はやっぱりいつ聴いてもいい曲です。
いつまでも鳴り止まない感動的な「アンコール!」と「小玲!」の大歓声の後に歌われるのは「改變」。しっとりと幕を閉じます。
バラードの多い台湾にあってボサノバ、サンバ、ジャズ、ニュー・ミュージックなどをいち早く取り入れ、台湾の音楽に与えた影響は大きかったに違いないでしょう。
これからも素晴らしい曲をつくり続けて欲しいと思います。

許美静「快樂無罪」 ・メイヴィス・シュー(シュウ・メイジン)
前作の「許美静EP」は全く写真を使っていない文字だけの斬新なジャケットでしたが、本作も虹色に光るこれもまた写真が一切ない不思議な包装がされています。CDを取り出すと、藍色を基調にしたうつろな許美静のポートレイトがあります。インナージャケットをパラパラめくると、恐らく光りをモチーフしたと思われる − 光といっても、太陽のようなまばゆい光ではなく、心の中の灯かりのような淡く不確かな光 − 一連の写真が目を引きます。
前作の広東語盤「許美静EP」の北京語バージョンの曲を多数含むため、前作を聴いた人にはちょっと物足りない気もしますが、それを差し引けば、音楽的にはジャケット同様、より内向的で深く、ほの暗い中に灯る温かな炎を思わせる仕上がりになっています。
このアルバムにもおまけビデオCDが付いていて、歴史を追うようにこれまでの代表曲が収録されていますが、これを聴くとどんどん声が深く暖かくなっていくのがよくわかります。

蘇慧倫「Happy Hours」 ・ターシー・スー(特選!)
ベスト盤やEPの発表はあったもののオリジナル・アルバムとしては「FOOL」以来、実に久しぶりの発表となりました。
初めの2曲は往年の歌謡曲路線を思わせる曲で、あれっ、快活路線に戻ったのかなとちょっと寂しく思っていると、3曲目以降が実にいい。
先の2曲を除くと、全体的にロック色/ギター・ポップ色が強まったようで、リズムがよりタイトになり、ミディアムテンポで渋い曲が増えています。もっとも、彼女の舌っ足らずなボーカルが乗っかるとロック臭さは全くないですが。
実は3曲目、4曲目、9曲目で渋い曲を提供しているのは僕が嫌いな(はずだった)張震嶽でした。4曲目の「防空洞」は本当に名曲です。
ところでこのアルバムにも最近台湾盤にはこれでもかと付いてくるボーナスCDが付いています。2曲入りで1曲はなぜかビートルズの「Yellow Submarine」。いまいち意図は判りませんが、取りあえずかわいいです(笑)。

彭佳慧「敲敲我的頭」 ・ジュリア・パン
いやあ。参りました。今まで、地味なバラードを歌う人くらいの印象しかなかったので。失礼致しました。
1曲目にして表題曲にして主打曲の「敲敲我的頭」がとにかく、冒頭からやられた、という感じです。ハード・エッジなギター・カッティングが左右からステレオで迫ってくるロックン・ロール。この人、こんなに太くパワーのある声でしたっけ。シャウトもかなりいけます。この曲は中文Top 20にも上がってきました。
全体的には、バラードがやはり多いのですが、ラストの曲も1曲目と呼応するかのようにドライなギター・ストロークで始まるロックっぽい曲になっています。
注目すべきは、かの陳[女冊][女尼]が「想」という曲を書き下ろしていることでしょう。モダン・中華・オルタナ・ポップ(なんだそれ)とでも言いたい曲で、さすがという感じです。ポルタメント(音程を滑らかに繋げること)した歌い方が他の曲と全然違っていていいです。「失恋一個月」はちょっとクラプトンのChange the Worldみたいで、これもなかなかいい曲です。新春一つ目のお勧めです。

林佳儀「没有[イ尓]的我」 ・ニサ・リン
林佳儀と言えば、私は1996年の「I Love My City」しか知らないのですが、その時は日本のニュー・ミュージックを下敷きにした音楽くらいの印象しかなかったのですが。
このアルバムの1曲目「没有[イ尓]的我」が時々MTVでかかっていて、聴いたら今までの印象とがらっと変り上品なバラードに、おやっと思った。”没有[イ尓]的我”という歌詞のリフレインがぴったりとメロディーにはまっていてなかなかきれいでいい曲です。ちなみに、この曲の作曲者は許茹芸です。声質もぴったり曲にはまっています。他の曲にインパクトのある曲が少ないのがちょっと残念です。


12月
王力宏「公転自転」 ・ワン・リーホン(特選!)
久々に男性シンガーのご紹介です。
以前はアイドル・シンガーだったらしいのですが、前作くらいからぐっとアーティスティックな姿勢を打ち出してきたようで、本作は陶[吉吉]に並ぶ、素晴らしいソウル溢れるアルバムになりました。発売は何ヶ月か前だったと記憶しているので既にご存知の方も居られるかも知れません。
声は、少しかわいさが残るもののソウルフルで、なにより曲作りの才にも秀でています。
5曲目「我的情歌」はまるでVan Morrisonの「Tupelo Honey」のような趣。5曲目、6曲目は特にお勧めです。
ルックスも甘く爽やか、これは要注目です。

汪佩蓉「Chilly請[イ尓]Cha Cha」 ・フランキー・ウォン
またひとりソウル風味の歌を聴かせるシンガーの登場です。
1曲目は韓国の人気ラップ・ユニットCLONが参加した曲で、この曲だけ打ち込みタテノリ・ビートでアルバムの中では異色です。二曲目はサンプリングによるブラスをフィーチャーしたかなり黒っぽい曲でなかなかかっこいい。そういえば、フォト・セッションの中に黒人のコンポ・バンドをバックに歌うショットがありますが、なるほど頷けます。新人離れした太くなかなかパワーのある声に驚かされます。
それにしても、台湾では本当にR&Bが流行っているんでしょうね。バラードでもう少し声に柔らかさが出るといいと個人的には思います。

張雨生「未来Orginal Collection」 ・チャン・ユィシャン
突然の事故死が未だに惜しまれる張雨生が、兵役後のUFOレーベル時代(1992〜1995)に残した曲の、コンピレーション・アルバムです。2枚組でレコードサイズの厚手のジャケットに入っており、表にはシリアル・ナンバーがスタンプで付されています。1枚目には「日光」、2枚目には「月光」と名づけられています。
先に発売された「想念雨生」で阿妹妹が歌った「帯我去月球」が幾分おっとりした曲だったとか、陶晶瑩の歌った「湖心草深長」がもっとアップ・テンポの曲だったのかと新たな驚きがありましたが、これは彼がつくるメロディーそのものがきれいだから歌う人のイメージでアレンジしても曲の良さがそのまま生きるのだと思います。
こうして30曲を一度に聴くと、バラードからアグレッシブなものまでいろんなタイプの曲があって、本当に才能ある人だったのだと思います。ハイ・トーンの歌声が美しく響きます。

阿妹妹「愛最大 Big Love」 ・アメイメイ(特選!)
1stアルバムも好評だった阿妹妹の待望の2ndアルバムが発売になりました。
君たちはパフィーか?と突っ込みをいれたくなる裏ジャケットを眺めながらさっそく聴いてみましょう。
1曲目「大鬧一場」からかなりブラックな曲で、ヘビーなリズム隊とギター・リフがかっこいい。続く2曲目「DJ請別放情歌」は一変して、超メローなハーモニー・ボーカルが堪能できるソウル・バラード。はやくもベスト・トラックの予感。これは泣けます。3曲目「愛一個人應該很快樂」はカントリー・タッチのイントロで意表を突いておいて、クラプトンを彷彿させるブルージーなアコースティック・ギターが絡む、これまたグッドな曲。以降、間にグォズ作のバラードを挟みつつ、怒涛のヒップなソウル・ミュージックで責めまくります。
1stアルバムはある意味、体ならし的印象を与えたのに対して、本作は「我が道をいく」パワー全開です。正直言って姉貴分の張惠妹の新譜「牽手」には芸能界の荒波に飲み込まれそうな不安と曖昧さを感じたのですが、こちらはかなり突きぬけててかっこいいです。1曲も捨て曲なし。思わぬ儲け物をしたような、うれしいアルバムです。

許茹芸「[イ尓]是最愛」 ・ヴァレン・シュー(特選!)
この12月に早くも許茹芸の新作が届けられました。このアルバムのジャケットは精霊苑部ナ・天使苑部ナ・凡人苑部ナと3種類あるようです。僕の手許に今あるのは精霊苑部ナですが、上下黒のジャンパーとパンツに身を包みおへそを出したジャケットに「おおー。ロック姉ちゃんに転向か??」とびっくり。
実際はそこまでは変身していませんが、彼女としてはかなりの意欲作だと思います。
はじめの2曲はいままでのイメージを継承したバラード。3曲目は映画「美夢成真」の中文主題歌で彼女にしてはリズムの際立った曲という印象。ところが、4曲目からだんだん壊れて(?)いきます。
4曲目「生氣」は緊迫した空気感がTori Amosばり。続く「學琴的孩子」はピアノの(子供がよくやるような)でたらめ弾きから始まる印象的な曲でピアノだけをバックに歌う曲。"・・放手"という言葉をキーワードに詩的な世界が歌われています。続く「透氣」はエレクトリック・ベースと彼女のボーカルと、あと途中からシェーカー入るだけ(!!)という最小限の音で歌われるかなり尖がったかっこいい曲。このすごい緊迫感のあとは、バリバリ歌い上げバラードの「[イ尓]是最愛」。彼女の中でも1,2を争う名唱を聴かせます。しかし、すごい落差。続く「All your heart」はこれも彼女としては珍しいR&B色の強い曲。さらに続く「一直」はこれぞ、パワー・ポップという曲。しかもこれが自作曲!。
彼女自身、自分の歌いたい歌を積極的に歌い始めたとそんなことを思わせるに十分なかっこいいアルバムです。

劉沁「青[目來]」 ・リョウ・チン(特選!)
これは、すごい新人が出現してしまいました。以下、ちょっと冷静さを欠きますがすみません。順子や李[王文]の歌に初めて出会ったときは中華にはなんて素晴らしいシンガーがたくさんいるのだろうといたく感動しましたが、もうそれどころではありません。この方は新人ながら軽く林憶蓮の域に達しています。聴き始めてから聴き終わるまでに5回は感動で胸が詰まることを保証します。
しかも、全曲自作、自己プロデュース、キーボードも自身というすごい才能ぶり。なんで、もっと大騒ぎにならないのか不思議で仕方が無い。ぜったいこのまま埋もれないで、ぜひ、順子以上に大ブレイクして欲しい。超超お勧め。
なお、彼女はソング・ライターとしては既に知られた存在で、莫文蔚、辛曉hなどに曲を提供しています。

孟庭葦「恋人」 ・モン・ティンウェイ
久々の新譜がリリースされました。実は彼女は日本人プロデューサーを迎え日文アルバムを全曲録音し終えていたにも関わらず、移籍問題のためそのアルバムはオクラ入りになってしまったそうである。業界のことは判りませんがどうしてそんなひどいことが起こってしまうのでしょうか。
心機一転、新しいアルバムはあの友善的狗からのリリースとなりました。髪が伸びて少し中山美穂似に見えます。内容も正に心機一転、ナチュラルでアコースティックでしなやかな名盤が出来上がりました。冒頭から陳慧琳に通じるとてもポップでノリのよい曲で始まります。この曲を含む3曲で薛忠銘という人が素晴らしい曲を提供しています。また、友善的狗ということで、黄韻玲が2曲、洪[竹/均]惠が2曲提供しています。
「恋人」は最近盛り上がっているUAのカバー曲でサビの6小節は日本語で歌っています。この曲はかのLenny KayeがUAのために書き下ろした曲だが、なぜかこの曲が一番日本っぽい。
ブックレットのフォト・セッションはすべて北海道で撮られています。北海道名所写真がついたメモ帳付き。

陳慧琳「愛我不愛」 ・ケリー・チャン
最近、ベスト盤・ライブ盤とリリースしまくっている陳慧琳。余りのリリースの早さに前作「Da De Dum」を買うのをためらっていたら、早くも新譜が出てしまいました。この早さは年に1枚しかリリースしないことを宣言した王菲とは対照的です。
彼女は、インタビューで「目標は?」と聞かれて、全曲好きな曲のアルバムをリリースすることと答えており、決して芸能界然とした音楽活動に満足していないと思われます。
今回は冒頭2曲を除いて
(*)北京語です。曲のほうは典型的なバラードとそうでない曲が同居していますが、アップ・テンポで切れのいい「三秒鐘」「Sugar」といった曲のほうが断然彼女のドライな持ち味が生かされてていいと思います。この路線でアルバム一枚作って欲しいなあ。また、シリアスな表題曲「愛我不愛」もじわじわ盛り上がるいい曲です。
蛇足ですが、アルバム表ジャケットの写真は余り陳慧琳には見えず、どう見ても鈴木紗理奈に見えます(?)。
(*香港版のみ収録。台湾版は冒頭2曲はなく、代わりにボーナスCDが付いています。もともとのアルバムの流れからも台湾版の方をお勧めします。)

彭羚「絶色音展・Cass True Voice」 ・キャス・パン(特選!)
絶色(極めて美しい)音展、と名づけられたキャス・パンの新譜が11月に発表されました。
なんでもこのアルバムを最後に移籍するらしく、EMIはもう彼女に力を入れていないといった話を聞くにつけ、とても悲しい気持ちになります。でもそれって、無難な曲ばかり歌わせて彼女の力量を発揮させなかったEMIが一番悪いんでしょう。
アルバムは全体にとても静かな印象を与えます。決して声を張り上げること無く、ささやくような歌い方は、元気がないという意見も聞こえてきそうですが、ぼくはいままでの彼女のアルバムの中で最も美しい歌声だと感じました。
特に、冒頭の3曲は素晴らしく、アコースティック楽器を使用した演奏は、ある意味アメリカ的な軽やかさに満ちています。彼女は、本当はこんな歌を歌いたいんじゃないのでしょうか。
静かな曲が多い中、2個女生の楊孝芬がつくったフュージョン・ジャズの趣のある「肥皀」が華を添えています。

陳明「仙楽飄飄」 ・チェン・ミン
1997年発表の4thアルバム。
前作はAOR的滑らかさの中にもアジアン・テイストを散りばめた佳作でしたが、今作は原点回帰的な内容になっています。そういえば、前作までの3枚は日本盤でも紹介されていましたが、今作はどうも中国大陸だけの発売のようです。
各紙で絶賛されていたのですが、僕はなぜか違和感を感じてしまいました。とても大陸的な雰囲気のするアルバムです。
(後日落ち着いて聴いたら、違和感を感じたのは曲のせいでも、彼女の歌のせいでもないことが判りました。ボーカルはいいのに、それに完全に負けている打ち込みの演奏のせいです。)