*1998年・秋* 11月 何嘉文「哇哈哈」 ・ヴィヴィ・ホー 1979年生まれのアイドル系シンガー(たぶん)。 東京で取られた表題曲「哇哈哈(わ、は、は)」のビデオ・クリップは中国語の字幕がいきなり日本語になったりしてとてもかわいい。曲も60年代キャンディー・ポップスの趣があって、なかなか元気があっていい。 アルバム全体としては台湾の市場を意識してかちょっとおとなし目だが、明るく突っ走って欲しい。 許美静「許美静EP」 ・メイヴィス・シュウ(シュウ・メイジン)(特選!) まず、完全透明のジャケットが斬新。ジャケットというより、歌詞が印刷された透明フィルムが三枚重ねてはさんであるだけで、漢字の向こうにCDが見える。写真一切なし。また5曲入りミニ・アルバムに2曲入りボーナスCDが付いているという恐ろしく製作コストが掛かったアルバムでもある。 5曲中3曲を作曲、1曲を共作と力も入っています。 曲はいたって穏やか、いつもながら暖かく包み込むような、それでいて切ないボーカルが楽しめます。 V.A.「想念雨生」(特選!) 「1997年11月12日夜11時48分、雨生の心音が止まった・・・。」というモノローグで始まる、涙なしには聴けない張雨生の追悼アルバム。 彼と同じForward Musicに所属するアーティストが彼の歌を歌う。ほんとに彼の死は惜しまれて仕方がない。 陶晶瑩の歌う穏やかな「湖心草深長」もいいし、コメディアンかと思っていたト學亮の「動物的悲歌」は明るさの中にもの悲しさが同居した味のある曲になっている。蘇[サ/内]はさすがの貫禄、阿妹妹は彼女たちのために作られたの如くいつもどおり楽しげで(歌詞は環境汚染のこととか、結構重い)バッチリはまっている。 唯一生前の雨生の声が聴ける「我期待」は素晴らしい出来ゆえあまりに悲しい。歌詞が「Say Good bye」なんだもの・・・。この曲でデュエットしている陶晶瑩の歌が同時期に録られたものでないことが信じられない、素晴らしいデュエットをしている。 ラストを飾る張惠妹の「後知後覺」は彼女のアルバム「牽手」に納められていたのと同じバージョンだ。このアルバムのためにもともと録られたのであろうか。もし、そうだとしたらこの曲がアルバム「牽手」の中でなぜ飛び抜けてソウルがこもっているのかわかった気がする・・・。 黄鶯鶯「為愛瘋狂」 ・トレイシー・ホワン 1974年デビューというからこれは何作目なんでしょう。結構お年のはずですが、年齢不詳のこの若々しさは何でしょう(もちろん、落ち着いた貫禄もあります)。 3曲目なんて、なんとドラムン・ベース(←この言葉は嫌い)ですごいかっこいい。 シタールをフィーチャーした異色の「地心引力」はインド音楽のようでこれまたすごい。 割と抑えた歌い方をするのであまりテクニックとか目立たないが、ふと裏声になった瞬間とかとてもきれい。 日本では月之海(Luna Seaです)のSugizoが楽曲提供、ギターで参加した「咫尺天涯」が話題になりそう。ちなみにこの曲はハード・ロックではなく、彼女に敬意を払ったのであろうゆっくり盛り上がる渋い曲に仕上がっています(U2に通じるものがあります)。 [虫章][虫郎]「IPIS1997[虫章][虫郎]」 ・IPIS 記念すべきIPISのデビュー・アルバム。リリースは97年11月。 彼らを知った頃はすでに2ndがヒットしていて、1stは店頭に置いていない状態でした。 ずっと、捜していたこの1stをやっと手に入れることができました。 技術的にはさすがにハモりのところとか2ndの方が格段に進歩していますが、音楽的にはバラエティに富んだこちらのほうが好感が持てます。とても元気があるし、変に落ち着き払ったりしていないところもいいです。 スイート・ソウル・バラードをメインにした音楽性は一貫していますが、あっと驚くカリプソ・アレンジの「両個字」、張惠妹の「牽手」を思わせる珍しくアップ・テンポで小気味良い「It's OK」、大胆にも王菲の名曲中の名曲「天空」のソウル・カバーなど、アクセントを持たせることも忘れていません。大推薦。 南方二重唱「太陽恋愛了」 まず、清楚な2人とクレパス処理をした背景が奇麗なジャケットが目を引きます。 一曲目は、「Yan Ma Le O Ae」というコーラスで始まる印象的な曲。 陰りのあるメロディー・ラインはケルト音楽を思わせたりもします。前から不思議に思っていたのですが、東洋のメロディーとケルトのメロディーって、どこか似ていないでしょうか。 全曲とても清楚な曲が並び、心が洗われる思いがします。 ハーモニーがとってもきれいで、ふっとAmazing Graceや童謡を聴いているような錯覚を起こす瞬間さえあります。 なお、ベスト・アルバムと二枚一組で値段据え置きというスペシャル・パッケージ版がお得です。 周華健「有故事的人」 ・エミール・チョウ改めワーキン・チョウ エミール・チョウというと、美川憲一(ちょっと大袈裟)みたいに語尾で声が裏返る歌い方が嫌いでずっと聴いていなかったのですが、この新譜はなかなかいいです。歌い方も思っていたほど気にはならなかった。 なんといっても注目は、李宗盛(なんつーダミ声)、品冠とトリオで歌うコミカルな「最近比較煩」が秀逸。ブルージーなアコースティック・ギターもかっこいいし、「我夢見和飯島愛一起晩餐」「台北的女生有些高不可攀」なんて歌詞も出てくる。 他人への提供曲も多いだけあってツボを押さえた歌作りをしています。ちょっとバラードが多いですが。 これまたボーナスCD付です。 亞洲創作人原音大牒(石偏)DEMO1(特選!) 創作人(ソング・ライター)がシンガーに提供した楽曲を自身が歌い(2曲だけ例外有り)、ライターにスポットライトを当てるというありそうで無かった新しい試みのアルバム。 全曲(!)バラードながらなかなか興味深く聴きました。 収録曲は「征服」「原來[イ尓]什麼都不要」「不愛我放了我」「聽海」「She's Gone(張惠妹のライブでもワンコーラス歌っていた「解脱」の英語版)」「短髪」「値得」など、有名曲目白押し状態です。 特に、郭子の歌う「原來[イ尓]什麼都不要」では、張惠妹に負けず劣らずの名唱に思わずほろりと来ます。 ほとんどの曲が弾き語りで、聴き終わるとしんみりとして人恋しくなること請け合いです。 なお、「聽海」だけは、インストですが、MIDIによるデモの段階でほとんど曲として完成しているのに新たな驚きがありました。こんなデモ・テープをもらったら歌手冥利に尽きます・・。 これもまた創作人のインタビュー収録されたビデオCD付のスペシャル版がお買い得。もっとも字幕はないのでぼくには何て言っているのか判りませんが。(早いとこ、中国語上達したい・・・。) 陳潔儀「有[イ尓]愛過」 ・キット・チャン リリースは98年5月なので新譜ではありませんが、今日買ったので。 広東語では2枚目のアルバムです。 まず、シンプルかつ斬新なジャケットが目を引き、インナー・ブックレットの写真ががまた美麗。 最近、この人の太くて深い歌声にとみにはまっています。 音楽のほうも深くて、なに風とか言えないけど、とてもいいです。 とりわけ、民族ぽくアンビエントな味付けの曲が印象的です。 10月 王菲「唱遊」 ・フェイ・ウォン(特選!) 待ちに待った王菲の出産・移籍後第2弾「唱遊」が出ました。 とにかくすばらしくて間違いなく彼女の、また中華ポップスの名盤といえそうです。 「浮躁」が出たとき、彼女はここまで来たのか、これからどこまで行ってしまうんだろう、とか思ったけど、そんなことを考えることは意味がないと思える、完全なFaye Wong Worldになっています。 「天空」の開放感とアコースティック感、「浮躁」のアーティスティック精神と浮遊感、 「Di−Dar」の「假期」でみせた唯一無二の作曲構成力、そういったものすべてがいい感じで詰まっています。 しかもとても穏やかな表情で。 気がつくとこころがどこかへと飛んでいく曲が満載です。 蛇足ですが、ジャケットはいつになくあどけない表情が印象的です。笑っているのは初めてじゃないでしょうか。 張惠妹・4「牽手」 ・チャン・ホェイメイ 初のライブも大成功を納め、今や中華圏で知らない人がいないほどの大スターとなった張惠妹の早くも3枚目のアルバム「牽手」。と思ったらジャケットには「4」と書いてある。 演唱會先聽版「妹力四射」が3rdということでしょう。 もともとソウルのこもった歌と声が魅力の人ですが、この新作はかなり洋楽寄りです。 「原來[イ尓]什麼都不要」のような曲はほとんどありません。 たしかにR&Bの似合う彼女ですが、その分個性が薄れたようにも感じます。 もちろん張惠妹は張惠妹、ボーカルは素晴らしいんですが。 そんな中で乗りのいいギター・ストロークで始まる「牽手」は軽快でアルバム中ひときわ光った曲になっています。そんなことを思いながらラストの曲になって突然の素晴らしさ。ゴスペル調のアレンジに彼女のボーカルは打って変わってのびのびとして聞こえる。ふと、歌詞カードをみたら・・・、張雨生のカバー曲だった。涙・・・。 順子「I am not a star」 ・シュンズ デビュー曲「回家」でその歌唱力に皆が驚嘆した順子。この2ndでは更に磨きがかかったようです。 R&Bを基調とした洋楽テイストは相変わらずですが、1曲目はアコースティック・ギターだけをバックに歌われる渋い曲。なんとなくベン・ワットを思い浮かべてしまいました。ラップの曲なんかもはいっていますが、個人的には「回家」をさらにストイックにしたようなボーカルが冴える「星星(I'm not a star)」が気に入りました。 1stが気に入った方はきっと気に入るでしょう。 2個女生「READY TO FRY」 ・2 Girls 1stアルバムの英語表記が2 Galsだったのに対して、今作はシンプルに2 Girls。 ベリー・ショートと赤毛だったふたりのルックスも別人かと思うほどナチュラルに。 だから、という訳かどうかはわかりませんが、曲調もミディアムテンポの落ち着いた曲が多い。 また、10曲中9曲が彼女ら自身のペンになる曲。 即効性は余りないかもしれないけど、何度聴いてもあきがこない。そばに置いておきたいアルバムです。 |