ヒューズの家で、ロイはグレイシアとエリシアに優しく迎えられました。はじめ、ヒューズの腕にちょこんと乗っている猫をぬいぐるみだと思っていたエリシアは、それがぴょんと床に降りて歩いていくのを見て目を輝かせました。


「パパぁ、本物の猫!どうしたの、どうしたの?」
「可愛いだろう。今日からウチのコだ。エリシアちゃん、ちゃあんと面倒みれるかな」
「みる!ちゃんとみる!」


何が今日からウチのコだ。冗談じゃない。
そうは思っても、一生懸命抱こうとしてくるエリシアをひっかくわけにはいかなくて、甘ったるい子供の匂いの膝に抱き上げられると、ロイは仕方なく大人しくなりました。ヒューズとその奥方は、猫のしっぽをするすると撫でてうっとりしている愛娘を、うっとりした顔で眺めていました。


「エリシアちゃん、その猫の名前どうする?」
「エリシアがつけていいの?!」
「もっちろん。エリシアちゃんの猫だからなぁ」


もし、いまロイをだっこしているのがヒューズだったら、猫はフギィーと暴れてその腕に「ROY」と自分の名前を爪で書いてやったでしょう。でもロイは罪のないエリシア嬢に、とてもそんなことは出来ません。(ヒューズには罪があるのです。ロイに気付かないという大罪が)


エリシア嬢は膝の上でなんだかぷるぷるしている猫の、なめらかな背中をそうっと撫でてから言いました。


「ええとね、ええと…。真っ黒だからクロにする」


そのストレートな名付けがツボに入ったのか、ヒューズはぶっと噴き出して、隣のグレイシアから肘鉄を喰らいました。


「素敵な名前ね、エリシア。クロにリボンを付けてあげましょ。それとベッドも作りましょうね」
「うん!赤いのがいい!」


猫ってなんて非力なんだろう。ロイはもう抵抗する気もなくして、黙ってつれていかれました。明日の朝には、どうか魔法が解けていますようにと祈りながら。