競技規則の重箱の隅

その1〜その10

フロアバレー競技規則の基本事項から細かい部分に至るまで、「あみーごす通信」管理人の縫田光司が、自身や他の方々の疑問に対して調べた内容をまとめたコーナーです。 この中でのルールの解釈についてご意見などありましたら、縫田(連絡先はこちら)までお気軽にご連絡下さい。
なお、競技規則の記述は日本フロアバレーボール連盟発行『フロアバレーボール競技規則(2002年4月改定)』に基づいております。

目次

その1:後衛選手が両手を組まずにレシーブしたら?
その2:前衛選手がネットから離れてブロックしたら?
その3:試合中にラインテープがボールに貼り付いたら?
その4:指サックを着けたままプレイをしても良い?
番外編:2004年度ルール改定内容
その5:アイマスク使用者が後衛に入る際の注意点
その6:通称「ネット前コール」、実際には何の反則?
その7:不戦敗の扱いについて
その8:相手コートのフリーゾーンでブロックしたらどうなる?
その9:フリーゾーン内のボールに対するプレイについて
その10:サーブ時の番号のコールについて

その11〜


その1:後衛選手が両手を組まずにレシーブしたら?

(2004年4月5日掲載)
第10条第1項1
競技者は、連続して2回ボールを打つことはできない。
第10条第2項2(2)
ボールは、身体への接触が同時であれば、数個所に当たってもよい。
第10条第2項4
ボールは、両手あるいは片手(いずれも手を握った状態)又は腕を用いて打たなければならない。
(解説)両手で打つ場合は、同時であることが要求されるので、紛らわしいプレーにならないように手を組むことが望まれます。(後略)
第10条第3項3(反則事項)
キャッチ・ボール(ホールディング):競技者がボールをヒットせず、ボールを持ち上げたり、持ち運んだり、投げたり、体内で停止させたり、バック競技者が床面(地面)に押し付けたりした場合。(後略)

この疑問は、以前アミーゴスの後衛の某氏が試合中に「両手を組まずにレシーブした」として反則を取られたことに由来しています。 先日の別の某氏との会話中に「あれはキャッチボールの反則を取られたんだと思う」と管理人が答えたのですが、上記の記述を読む限り、両手を組まずに両手でレシーブしたとしても、それだけではキャッチボールの反則にはならないようです。
とはいえ、第10条第2項4の解説にもある通り、両手でレシーブする際に手を組んでいないと、たとえ手を握っていたとしても、ボールに同時に接触していないとみなされてダブルコンタクト(ドリブル)の反則を取られる恐れがありますので、やはり注意が必要です。

目次へ

その2:前衛選手がネットから離れてブロックしたら?

(2004年4月5日掲載)
第15条第1項1
ブロックとは、フロント競技者がネットに接近して相手方から送られてくるボールを、ネットの下端から下方で阻止しようとする行為をいう。
(解説)ネットに接近とは、通常ネットに手が届く範囲とし、サービス時にポジションに戻る場合等、最大離れてもセンター・ラインとアタック・ラインの中間(1.5メートル)を基準として主審が判断します。

先日の神奈川リーグ、対湘南クーカーズ戦にて、アタックをネットから離れてブロックした前衛の選手がこぼれ球を拾ったところダブルコンタクトの反則を取られる、という場面がありました。 このような反則を取られる場面は珍しいと思いますが、上記のように、本人はブロックしているつもりでも、ネットから離れすぎているとブロックとみなされない可能性があるわけです。 最近はアタックライン付近まで下がってスパイクを打つ選手もしばしば見られますが、この点には注意する必要がありますね。

目次へ

その3:試合中にラインテープがボールに貼り付いたら?

(2004年4月5日掲載)
第18条第2項
競技中、外部から何らかの妨害が発生したときは、競技は停止されなければならない。 そして、ラリーはやり直しとなる。
第24条第2項5
主審は、試合開始前あるいは試合中に、競技場、施設およびコンディションが競技に適しているかどうかを決定する責任を持つ。

先日の神奈川リーグ、対川崎リバース戦において表題のような事態が発生し、主審がそのラリーを中断するという場面がありました。 これもかなり珍しい事態だと思われます。
ラリーが中断された瞬間にアミーゴスがボールを保持していたこともあり、中断せず続行してもらいたかったメンバーもいたようです。 しかし、ストップボールになるかどうかの瀬戸際ではテープ1枚の厚みの影響が出る可能性もありますし、妥当な判断であったと思います。 まぁ、「外部から何らかの妨害」の「外部」にラインテープが含まれるのかどうかには異論もあるかもしれませんが…

目次へ

その4:指サックを着けたままプレイをしても良い?

(2004年4月14日掲載)
第4条第3項7
安全のため、必要であれば手袋、サポーター等の着用が認められる。
第4条第5項1
競技者は、けがの原因となるような物、または自らのプレーが有利となるような物を身に着けることは禁止される。

ということを先日の練習試合の際に質問されたのですが、上記の規則を読む限り問題はなさそうです(その人のものは布製だったので)。 ただし、材質や形状(硬いとか尖っているとか)によっては審判に止められることがあるかもしれませんので、お気をつけ下さい。
余談ですが、管理人は以前副審をしていた際、「危険だから」と前衛選手がしていた指輪(石無し)を外してもらったことがあります。 今になってみれば、そこまでしなくてもよかったかなぁ、と思いますが…

目次へ

番外編:2004年度ルール改定内容

(2004年4月26日掲載)

今年度は2年ごとのルール見直しの年です。 今回は、6人制バレーボールのルールとの関連で、以下のようなルール改定が行われることになりました。(『JFVA_News』4月号より引用)

1 第5条第1項第2号(ゲーム・キャプテンの権能)について
「競技中断中のとき、競技者の中で、ゲーム・キャプテンだけが審判に対して話すことができる。」から、「競技者の中で、」が削除され、監督のタイム・アウト及び競技者交替の要求を除いて、競技者でない監督やコーチなども審判に話(質問や要求等)ができないことが明確になりました。
2 第16条第4項第2号(タイム・アウトおよびテクニカル・タイム・アウト)について
1セットが25点で行われる場合のリードしているチームの得点が8点および16点に達したときのテクニカル・タイム・アウトの時間が、90秒から60秒に短縮されるとともに、正規の30秒のタイム・アウト1回の制限規定が削除されました。 このことから、テクニカル・タイム・アウトがあっても、各チームは独自にタイム・アウトを2回まで取れることになりました。

なお、以上の改定内容や、審判部に寄せられた様々な疑問点に関する解説を加えた、2004年度版のルールブックが販売されるとのことです。 注文先などにつきましては、日本フロアバレーボール連盟に問い合わせるか、もしくはお近くの『JFVA_News』を持っていそうな人を探してお尋ね下さい。

目次へ

その5:アイマスク使用者が後衛に入る際の注意点

(2004年5月1日掲載)
第7条第4項1(3)
アイマスク使用者がバック競技者となることもできる。 この場合10-1-2(同時の接触)、10-2-1(打球の特性)、13-4-1(サービスに要求される条件)のみ、フロント競技者に対する規定を適用する。

というわけで、アイマスク使用者が後衛に入ること自体は何ら問題ありません。 ちなみに、上で「フロント競技者に対する規定を適用する」と書かれた3項目は、「ボールを押さえてから打って良い」とか「軸足を動かさなければ1打」という類の内容です。 大雑把に言うと、前衛に入っているときと大体同じプレイが許される、ということです。
ただ、上記の記述からはよくわからない点もいくつかあります。 例えば「アイマスク使用の後衛がサーブを打つ際、味方が方向指示をしている最中に相手チームが声や音で妨害したら反則になるのか」(第7条第8項1)、「アイマスク使用の後衛が靴の紐を結び直す時間は与えられるのか」(第17条第1項5)、といった点について、上記の規定を厳密に適応すると答えはどちらも「いいえ」となると思われます(上記の三つの例外規定に含まれないため)が、それでは実際の場合に困るのではないかと心配されます。
更には「アイマスク使用者がリベロとして後衛に入った際、片手で相手コートに返球して良いのか」(第20条第3項1)という疑問も生じます。 まぁ、これは実際には滅多に起こらない状況だと思いますが、もし万が一のことがあった場合に説明に困るので、少なくとも管理人が主審を務めている試合では、両チームの方々はこのような采配をしないで頂きたいなぁと願います。

目次へ

その6:通称「ネット前コール」、実際には何の反則?

(2004年5月1日掲載)

サーブの際、主審の笛が鳴ってからボールがネット下を通過するまでの間に(サーバーのサーブ番号以外の)声や余計な音を出してはならない、というのが所謂「ネット前コール」の反則ですが、実は「ネット前コール」という名称の反則は存在しません。 それでは本当は何の反則なのか、という話なのですが、この文を読まれている方の中には、真っ先に次の項目を思い出される方もおられるでしょう。

第13条第5項1
サービスを行うための主審の吹笛から、ボールがネットを通過するか相手競技者に触れる前に、サービング・チームの競技者が一人または集団で相手を撹乱したり、ボールの起動を見えにくくしたり、ボールが転がる音を聞こえにくくするため、次の行為などをすることによりスクリーンが形成され反則となる。
13-5-1(1) 声を出すこと。
13-5-1(2) 手や床等をたたくなどサービスされたボールの音を聞こえにくくすること。(後略)

上記はスクリーンの反則に関する記述です。 確かに「ネット前コール」の一部を言い表してはいるのですが、その中に「サービング・チームの競技者が」とある通り、スクリーンの反則はサーブ側のチームにのみ適用され、レシーブ側には適用されません。 では、実はレシーブ側のチームは声や音を出しても良かったのか、というとそんなことはなく、以下の項目がちゃんと用意されています。

第7条第8項1(1)
サービスを行うための主審の吹笛から、サービスされたボールが完全にセンター・ラインを越えるか相手方競技者がボールに初めて触れるまで、サーバーのサービス番号を告げる以外の言葉は反則となる。

この項目は「方向指示等の制限」という項目の一部です。 これはサーブ側のみならずレシーブ側にも適用されるので、これでめでたく「ネット前コール」の正体が明らかになったことになります。

なお、表題の質問の正解は「方向指示違反」です。 「スクリーン」と答えた方は部分点。
この件はファミリーのU野氏に教わりました。 ちなみに管理人も「スクリーン」と答えて部分点だった人間の一人です。 いやあ、勉強になりますなぁ。

目次へ

その7:不戦敗の扱いについて

(2004年5月29日掲載)
第6条第4項1
チームが競技するように勧告されても、なお、これを拒んだ場合は、不戦敗を宣告され、その試合は0対2、それぞれのセットは0対25の結果でその試合を没収される。

この規定が最も頻繁に適用されるのは、試合時間になっても片方のチームが6人揃わない場合で、アミーゴスは過去この理由で2勝(0敗)を挙げております。
しかし、この規定を読んでいつも思うのは、両チームとも人数が揃わなかった場合の扱いについてです。 トーナメント戦の1回戦などならまだしも、得失セット数差や得失点差が順位に影響し得るリーグ戦においては、この場合にどのような扱いをするかによって最終結果が変わる可能性もあります。 まぁ、そもそもそんな事態が起こらないようにしなければならないわけですが。

目次へ

その8:相手コートのフリーゾーンでブロックしたらどうなる?

(2004年6月11日掲載)

という疑問を先日の練習後にチームメイトに話したところ、思わぬ盛り上がりを見せました。 つまりこれは、ブロックの際には相手のプレイを邪魔したり相手コートに触れたりしない限り、ネットの向こう側の空中でのブロックが許されているわけですが、ではその際にボールの当たった場所がサイドライン外であった場合はどのような扱いになるのか、という疑問です。 後日別の方にも意見を訊いたりしたのですが、様々な意見が得られました。 例を挙げると、

といった意見です。 どれも一理あるように思えて悩ましいところです。

そこで競技規則を調べてみたところ、以下の記述を見つけました。(なお、第15条第3項の解説にも同様の記述があります。)

第12条第1項1の解説
ブロッカーの手が相手方フリー・ゾーンの空間にあり、その手にボールが触れたときは、ボールが許容空間(管理人注:ネット下のサイドライン内)外を通過しようとしていることから、そのボールが3打目のときは、そのまま相手方のアタック・ミスとなります。 また、1・2打目のときは、相手チーム競技者の許容空間外を通過しようとしているボールを取り戻そうとする行為を妨害しない限り、同様に相手方チームのアタック・ミスと見なします。

つまり、規則上は先のご意見のうちの3番目が正解ということになりますが、疑問も残ります。
最も大きな疑問は、このボールがフリーゾーン内から打たれたもので、かつ仮にブロックされなければネット下のサイドライン内側をちゃんと通過したであろう位置関係の場合についてです。 この場合にアタックミスと判定されてしまうと、本来は守備側に対する「救済措置」であったはずのネットを越えたブロックによって、攻撃側に過剰な不利益が生じてしまうことになり、ルール上の整合性という意味で懸念が生じます。

なお、上記の解説文の根拠が「ボールがマーカー外を通過しようとしているから」ということですので、そうでない場合には上記規定を適用しないという可能性もあります。 その場合どのような判定を行うのか、管理人には明確な基準を示した記述を発見できませんでしたが、一つの案としては「ボールがマーカー外を通過しようとしている場合にはアタックミス、そうでない場合はブロックの反則」というものが考えられます。 実際にボールがマーカー外を通過しようとしているのかどうか、特に変化球をブロックした場合などに予測が非常に困難になり得るという問題点は残るものの、ルール上の整合性には問題ないものと思われます。
ちなみに、冒頭のご意見を寄せて下さった方々の中には、フロアバレー歴が長く、ルールに対する関心の高い方も複数含まれております。 そのような方々の間でも意見がまちまちな現状を鑑みるに、この項目は更なる啓蒙と意思統一が必要な項目であると言えましょう。

おまけ。
それでは「ネット上部を通過しようとしている3打目のボールに対し、相手方の前衛がネットを越えて手を伸ばして触れた」場合にはどのように判定すべきでしょうか? なお、ブロックとは「ボールをネットの下端から下方で阻止しようとする行為」(第15条第1項1)ですので、この場合は前衛のブロックとは判定されません。

目次へ

その9:フリーゾーン内のボールに対するプレイについて

(2004年10月27日掲載)
第1条第1項1 解説
ボールがフリー・ゾーン内にあるときは、フリー・ゾーンに身体の一部があれば、フリー・ゾーン外からのプレーが認められますので、このプレーに対しフリー・ゾーン外にいる者は協力しなければなりません。

ある試合で実際にこの状況でのフリーゾーン外からのプレイが生じ、一旦はオーバーゾーンの反則とされたものの協議の結果判定を訂正する場面がありました。 上記の通り、ボールがフリーゾーン内にあって、身体の一部がフリーゾーン内に残っていれば有効なプレイですので、訂正内容は正しいものでした。

目次へ

その10:サーブ時の番号のコールについて

(2004年10月27日掲載)
第13条第4項4
サーバーは、主審がサービス許可の吹笛後、5秒以内に自分のサービス番号を明瞭に告げ、ボールを打たなければならない。
第13条第5項1
省略(重箱の隅その6に引用あり)

サーブ時にサーバーが、サーブ番号の後に奇妙な語尾を付けたり、深呼吸をしてからサーブ番号を告げる場面は一部の試合でよく見られます。 上記の引用箇所によれば、これらがスクリーンの反則の対象になるかどうかは「番号を明瞭に告げているか」「相手を攪乱する意図もしくは効果があるか」によって決まると言えそうです。
某氏の深呼吸に関して言えば、番号自体ははっきり告げていますし、深呼吸ぐらいで攪乱される相手もいないと思われます。 また、某氏の奇妙な語尾については、やはり番号自体ははっきり告げていますので、後は攪乱の意図や効果となりますが、意図はともかく効果については微妙なところです。 もしこれが原因で相手の選手が吹き出してしまったら、一体どちらの反則になるのでしょうね。

目次へ
次ページ:その11〜
「あみーごす通信」トップへ

製作者 縫田 光司(ぬいだ こうじ)  nuida (アットマーク) mwa.biglobe.ne.jp

(c) Koji NUIDA 2004: All rights are reserved.