君は、魔法使いをパートナーに選んだ。
 やっぱりこの手の冒険には魔法使いは欠かせないし、きっと一緒にいたら便利な筈だ。
 魔法使いの少女は、捻じ曲がった樫の木の杖を後ろ手に持ったまま僅かに腰を屈めると、悪戯っぽい目をして君の顔を覗き込む。
 「よろしく、あたしはクロウ」
 そう言って微笑む彼女はなかなかチャーミングで、君は思わず見惚れてしまった。
 クロウは、君が名乗るのも待たずにくるりと踵を返すと軽やかに夜道を歩き出す。
 彼女の動きに合わせて2つに結い上げられた烏羽玉の髪が揺れるのが黒い蝶の翅のようで、君はそれを目印に彼女の後を追いかけた。
 道すがら、クロウは君の為に大体の事情を話してくれる。
 ただし、その口調はあまり「魔法使い」らしいとは言えなかった。
 「蛇王のヤロウは、あたし達の森の奥深くに巣食ってるの」
 ――蛇王のヤロウって…。
 呆気にとられる君に気づいているのかいないのか、クロウはぺらぺらと話し続ける。
 「傍には王様と王妃様の廟所もあるわ。生命の宝珠も其処に」
 そもそも、彼女の格好からしていけない。
 膝上丈の真っ黒いコートの裾が揺れる度にショートパンツから剥き出しになった生足は覗くは、サイドで編み上げるロングブーツの片足はルーズに下ろしてるはで、これで杖を手にしていなかったら黒服系バンドのライブにでも行くつもりかと思うところだ。
 それとも、「魔法使い」と言われると瞳に叡智の光を宿した威厳あるご老体を思い浮かべてしまうのがそもそも間違っているのだろうか?
 「単独で動くのは、出来るだけアイツを刺激しない為よ。それでも時間の問題だろうけど」
 そこで言葉を切って、クロウは君を振り返ると「着いたわ」と告げた。
 些末事に気を取られているうちに、いつの間にかそれなりに距離を稼いでいたらしい。
 「あたし達は此処を抜けて蛇王の許に向かうわ」
 クロウの視線を追って顔を上げた君は、其処にあった景色に不覚にも絶句してしまった。
 君達の目の前には、棘だらけのからたちの茂みが生い茂っていたのだ。
 「…本気で此処を抜けるワケ?」
 少々顔を引き攣らせて尋ねる君に、クロウは最初に会った時と同じ悪戯な瞳を見せる。
 「お望みなら、魔法で焼き払って道を作るけど?」
 

…お願いします。
それはちょっと…。