一方、泉も清水(せいすい)を溢れ出しながら、その存在を益々主張し、間欠泉へと変貌しようとしていた。
金糸のカーテンからは、深窓の令嬢宛らの白い項が覗き、そこにも口付ける。
きつく吸い上げ、赤い跡を付けて行く。
これを見た父王は何と言うだろうか。自分の息子が、ノルドール・エルフに抱かれ、犯されている事を知ったら。
多分、レゴラス本人は、顔色一つ変える事は無いだろう。
首筋から耳元へ舌を這わせる。
「レゴラス…」
「…はぁ…、ん…」
耳元で名を囁くと、熱く甘い息を吐きながら、快楽の涙を浮かべてこちらに目をやる。
やはりあなたのその表情は、妖艶で私を誘う何物でもない。
「グロール…フィンデル様…、早…く…」
仰け反る背中を、舐め上げる。
「あ…!」
レゴラスの秘密の洞窟は、侵入者を捕らえて放そうとしない。
催淫効果のある香油を使って、正解だった。レゴラスの身体全てが性感帯に変わっている。
内股から股間へ、脇腹から胸へと、指と掌を使って全身をなぞって行く。
一段と感じる箇所に触れると、一際艶やかで、色香漂う声を上げた。
中でも声音や反応が違うのは、やはりと言うべきか、特に敏感な源泉と、胸の固く熟れた果実だった。
そこを両手で、同時に愛撫する。
「は…早…く」
「早く?」
「イキたい…」
レゴラスの身体は限界が近いのか、ビクビクと痙攣した。
「では一緒に」
汗ばむ首から肩へ、背中へと唇を這わせながら、杭を最奥に打ち付ける。
「あっ! あ…っ! イヤ…」
一番感じる箇所を突かれた途端、レゴラスの森の静かな泉は間欠泉へと変わった。
「…んっ!」
私も時同じくして、レゴラスの中に慾を放った。
「はぁ…、はぁ…」
やはり発情期の性処理は、自分だけでするものではないな。特に愛する人とのセックスは、格別だった。これが恋の駆引きでなければ、どれだけ素晴らしいものになった事か。
「あぁ…レゴラス。愛してますよ」
肩で大きく呼吸をし、息を整えながら、愛を囁く。
レゴラスから杭を抜くと、彼はマルローン樹の根元に崩れ落ちた。
「大丈夫ですか?」
未だ息を切らしているレゴラスの身体をこちらに向け、額に口付ける。
私は近くに置かれた水盤へ行き、自分の情事の跡を洗い流す。身支度を整えると、持っていた布に水をたっぷりと染み込ませる。
それをレゴラスの元へ持って行く。
幹に力無く裸体を預けるレゴラスの肩を抱く。
呼吸は大分整っていた。
「水ですよ」
そう言うと、薄らと目を開け、唇をゆっくりと開いた。水を口に含むと、唇を重ね、口移しで水を飲ませる。
「…もっ…と」
余程、喉が渇いていたらしく、貪る様に水を求め、零れた水が喉から首、胸を濡らしていた。
その水を含ませた布で、レゴラスの身体を丁寧に拭いて行く。
目を閉じ、私の腕に預けた肢体は、まだいくらか熱を持っていたものの、再び彫像へと戻り始めていた。
爪先から大腿部へと、精の流れ落ちた跡を拭き取って行く。
愛液と精液と香油で濡れほそぼった股間に手を伸ばすと、レゴラスの身体がピクリと反応を返した。
「っん…」
レゴラスの長い金色の睫毛の下から、碧い双眸が見え隠れする。その視線は、先程までの弱々しいものではなく、私を愛に溺れさせたいつもの鋭いものだった。
「これ以上…私に触れないで下さい」
肩を抱く私の手を剥ぎ取り、背を向ける。
「――あんな時に動かれるなんて…」
落ち着いたのか、レゴラスは大きく深呼吸をし、私を一瞥すると、力の入らぬ身体を叱咤し、自ら上体を起こす。
「レゴラス?」
やはりあの時に動いた事を怒っている様だ。
脱ぎ捨てられた自分の衣装の元へ、這う様に向かって行く。
その後ろ姿は、あまりにも弱々しく、小さく写った。
レゴラスがいた場所には、薄赤く染まった白濁液が落ちていた。
発情期のセックスは、彼の初体験の時以上に手加減出来なかった為、レゴラスの身体を傷付けてしまっていた。
「レゴラス」
その白い肩に触れようと手を伸ばすと、振り払われてしまった。
これでは彼の身体を労り、支える事も出来ない。
彼は服を掻き集める。
「…何故あの様な事を?」
背を向け、据わったまま袖を通しながら、私に問うた。
「……あなたを、誰にも渡したくなかった。あなたには判らないのだ。あなたに好奇の目を向けながら噂をする者、色目を使う者達を、壇上からただ…見ているだけしか出来なかった私の気持ちなど…」