運命の流れが一巡りした時
〜グロールフィンデル〜
恋 人-20-

 レゴラスは大きく呼吸を繰り返しながら、時折嬌声を上げる。
 指を動かす度に、その細い腰は跳ね上がる。
 私は香油をたっぷりと手に取り、今度は前に愛撫を施す。
 茂みから現れ、既に天を向いていたレゴラスのモノは、清らかな泉さながらに、液体を涌き上がらせていた。その清水と香油が混ざり合う音が慾を誘う。
「あ…っ、はぁ…はぁ…、んっ」
 マルローン樹の滑らかな幹に両手を付き、身体を預けるレゴラスの腰が踊り出す。
 前に突き出されたソレを握り、ゆっくりと慾を引き出す様に扱き始める。
「早く…下さい」
 頬を紅潮させたレゴラスが、背後の私に目をやり、足を開き尻を突き出す。
「判りましたよ」
 衣服を着たままだった私は、情事の痕跡で衣装が汚れぬ様、腰帯を解き、下半身を露わにした。
 私はレゴラスの源泉から湧水を漉し取る。この時、受け切れなかった清水が地面に落ちた。
 起立している己のモノにたっぷりと塗り付ける。
 私の方も、早くレゴラスの中に入りたくて、待ち切れずにいた。
「入れますよ?」
 そう耳元で囁くと、レゴラスは深呼吸をした。
 私は自分の中心をレゴラスの後孔に宛行うと、彼の腰を掴み、一気に中に侵入させる。
「あ…!」
 ビクリと身体を反応させ、すっかり解れた後孔は私を受け入れる。
 始めはゆっくり、そして徐々に激しく、欲望という名の杭を愛しい人に打ち付ける。
「あ! あ…んっ! あぁ…あ! ぁんっ!」
 レゴラスは連れられる腰を揺らしながら、麗しい声を上げる。
 が――。
「レゴ…ラス…、静かに」
 私は人の気配を感じ、完全には繋がっていない状態で動きを止める。
 私の静止に、レゴラスも頬を上気させ、大きく息を繰り返しながら、動きを止めた。
「――誰か…来る」
 ネットリと絡み付く様な口調で、レゴラスの耳元で囁く。
 頭上に架かる回廊を、談笑しながら歩いて来る、数人の気配が近付いていた。
 レゴラスもそれに気付いたのか、固く目を閉じて息を殺し、ジッとしている。
 涙を含んだ長い睫毛、もどかし気に歪んだ表情、そして香油の甘酸っぱい芳香、ワインの様な汗と乳の様な精液の匂い。それらが私の慾の解放を急き立てる。
 私は汗の滲んだ項に唇を這わせる。
「ぁっ」
 レゴラスは小さく声を上げたが、それでもジッとしていた。
 私達は繋がったまま、その気配をやり過ごそうとしたが…。
 私の性欲か悪戯心か、どちらか判らない物が疼いてしまい、半ばの挿入で止めていた杭を奥に進めた。
「あぁ…んっ!」
 案の定、レゴラスは声を上げ、慌てて口を噤んだ。
「し…! 静かになさい」
 ジワジワと繋がりを深くして行く。
 固く眼を閉じ、羞恥で頬を薔薇色に染め、唇を噛み締めているレゴラスの耳元で、意地悪く囁く。
 一つの気配が立ち止まる。
 レゴラスの頭の中は、先程の声が聞こえてしまったのではないか、という思考でいっぱいだろう。
 それでもレゴラスの肉壁を掻き分ける感触が、思いの他心地良くて、挿入を止める事はしなかった。
「……っ」
 ピクッピクッと肉壁が時折、反応するのが伝わる。
 声を上げたければ、上げるが良い。
 私にしてみれば、好都合というものだ。
 闇の森一行が到着した時、宴の席、あらゆる場面で、この美しき緑葉に興味を示す輩や色目を使う女達に、私達が“こういう”関係なのだと知らしめてやれるのだから。
 今迄、この秘め事を何百年も直隠しにして来たのに、こういう気にさせたのは、発情期だからなのか、香油の香り所為か、はたまた宴の雰囲気の所為なのか。
 しかし、この秘密の情事が露呈すれば、それはそれで問題になるだろう。裂け谷の主の眉間に皺の寄った顔が目に浮かび、思わず口許に苦笑が浮かんだ。
「……っ」
 根元迄挿入し終えると、レゴラスが瞼を開き、憾めしそうに私を見る。しかし快楽に溺れる身体は、正直な反応をしていた。
 程無くして、全ての気配は遠ざかって行った。
「行きましたよ、レゴラス」
 堪らず私は、行為を再開させる。
「…あ! あぁ…、ん、あぁ…!」
 若く美しいエルフの肢体をなぞる。普段は白く冷たい彫像も、一度(ひとたび)私に触れられれば、命を宿して踊り出し、熱を帯びて桃色に染まる。
 背後から彼の身体を包み込む様に抱き、胸の赤い果実を探る。それを見つけ摘み回すと、みるみる熟す。
「あ! …あぁっ! はぁ…、はぁあ! ああぁっ…ん、ぅん、ん…」
 身を捩る姿は、淫美なダンスだ。


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