そう言いながら笑う彼の身体を抱き締める。
「待ち焦がれて、私の胸は張り裂けそうでしたよ」
レゴラスの顎を上に向かせ、唇を重ねる。私の首に腕を絡ませ、身体を預けるレゴラスの腰を抱き、何度も向きを変え唇を貪る。
酸素を求め、官能的な吐息が漏れる。
「…っ、んっ…はぁ…」
彼の羽織る薄緑色のローブを肩から落とす。
「――…んっ、グロールフィンデル様…」
「愛しいレゴ…ラス…」
この時をどれだけ待ち望んだ事か。
しかし間近でレゴラスの熱い吐息を感じながらも、私の武人としての感覚が別の気配を感じ取った。
上手く存在を隠してはいるが、私には通用しない。
これは…ハルディアか。
裂け谷の金華公と闇の森の王子の情事を盗み見するとは、軽い灸を据えてやらねば。
私はレゴラスの胸元に手を掛け、衣服を脱がしにかかる。
「ぁ…んっ、…ここで、これ以上は…」
身を捩り、拒否を示す身体を捕らえる。
「この時を、どれほど待ち焦がれていたと思っているのです?」
はだけさせた胸に指を滑らせながら、不届き者に見せ付ける様に、そちらの方に視線をやり、姿を探りながら、レゴラスに囁く。
ロスロリアンの近衛隊長は周辺の警護中に、たまたま通りかかっただけなのだろう。
これを見た彼が災難なのか、見られた私が災難なのか。私の愛撫に甘い声を漏らすレゴラスは、彼に気付いていない様だった。
まあ、堅物で知られるハルディアなら、他言をする事はないだろう。
気配は遠ざかって行った。
「…でも、ここでは服を汚してしまう」
美酒に酔った所為だけではなく仄かに頬を朱に染め、僅かに潤んだサファイヤの瞳で見つめてくる。
「あ…!」
レゴラスの衣服を肩から落とす。
ロスロリアンの月明りに、白磁の肌が晒される。
「こうしてしまえば大丈夫でしょう?」
“部屋”と言う限られた空間ではない場所で肌を露わにする行為に、レゴラスは明らかに羞恥と戸惑いを覚えている様だった。
彼の腕を掴み、フレト同士を繋ぐ回廊を支えるマルローン樹に、後ろ向きに押し付ける。
レゴラスは軽く呻き、表情を歪ませた。
その隙に、例のものを腰帯から取り出し、中身を手に取る。
「何を…んっ!」
香油で濡れた中指は、尻の割れ目に滑らせただけで、スルリとレゴラスの後孔へ潜り込んで行った。
指を動かす度に、レゴラスは甘い吐息を漏らす。
「良い香りでしょう? この匂いには催淫効果もあるんですよ。大きく息を吸って」
私の言う通りに、彼は深呼吸をする。
指を更に増やす。
「…はぁ…んっ、あ…」
きつい…。
指を増やした所為なのか、催淫効果という言葉の所為なのか、レゴラスはきつく指を締め付けて来る。
一旦指を引き抜き、香油を更に増やした。甘い匂いが鼻孔を突く。
発情期の私と同様に、レゴラスにも感じて――いや、前回の彼の初めての発情期のセックスの様に、自ら身体を開かせる為に用意した物だったが、発情期の終わりかけた私の性欲の方が再び誘発されてしまったようだ。
もう私の欲望は、止どめる事が出来なくなっていた。