運命の流れが一巡りした時
〜グロールフィンデル〜
恋 人-12-


「中のものは、きちんと出さないと…、ね?」
 指の侵入を拒む様に、散らされた花はヒク付いていた。唯一、抵抗出来る足を動かしてはいるが、それはとても弱々しく、抵抗とは言い難かった。
 その股間に顔を埋め、汚れた陰部に唇を寄せる。粘液を舌で舐めとり、綺麗にして行く。
「やっ…!」
 レゴラスの腰が跳ねる。
 根元から先端へ、丁寧に丁寧に舐め上げて行く。
「…や…んっ、あっ…」
 発情期の感じ易い身体は、これだけでも過剰な反応を見せる。全くそんなつもりは無かったのだが…。
 再び液体が溢れ出す。
「そんなに気持ち良いですか?」
 先端から包み込む様に、口に咥える。舌を使って、そこを撫で回す。
「……っん。イイ…、ソコ…気持ち…イイ…」
 私は我が耳を疑った。
 レゴラスが“そんな”言葉を口にするとは。
 私は心の中で、北叟笑む。
 『“愛”とは、オルガスムスの中にこそ存在する』
 自我を――自尊心も価値観も固定観念をも捨て、全てをさらけ出した時、人は“愛”の状態になる。
 これが、イムラドリス一の女性好きと言われた私の持論である。
 レゴラスが私とのセックスに、“愛”を感じ取った瞬間だと確信した。
 これで、あなたは私から離れられない。あなたが…、あなたの身体が私の“愛”を感じる限り、私はあなたを愛してあげる。
 レゴラスは三度目の絶頂を、私の口の中で迎えた。
 それを飲み下し、そのままレゴラスの顔を覗き込む。
 薄らと開いた瞳は、宙を彷徨い、視線が定まっていない。気付けの意味も込めて、唇を重ねる。生臭い精液の匂いと味に、レゴラスは顔をしかめた。
 あなたのものだと言うのにね。
「グロー…フィン…デル様?」
 レゴラスの両手首を拘束する、紐を寝台から外す。
 白い手首には、紐の跡が幾重にも赤く残されていた。
「痛かったでしょう?」
 私はそこにも口付けた。
 レゴラスは何も言わず、眠たそうに瞼を何度か瞬かせたが、やがて双眸は閉じられた。
 彼の身体を綺麗に拭き、脱ぎ捨てられた夜着に袖を通す。手足がスラリと伸びた、大人の身体にそれをするのは一苦労だった。だが、それをも楽しんでいる自分に気付き、思わず苦笑する。
(女性には、した事も無かったな…)
 最後にレゴラスの額にキスをすると、浴室へ向かい、私も情事の跡を消した。
 その夜は愛しいレゴラスの身体を抱いて、朝を迎えた。こんなに満ち足りた気分で朝を待つのは、何百年振りだっただろうか。


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