力の限りツォンを引き剥がし、一発平手打ちを喰らわす。叩かれた頬に手をやり、呆気に取られている彼を尻目に、湯をかぶり泡を流すとスタスタと再び湯舟に入ってしまった。
ツォンは、頬に当てていた手を、恐る恐る見る。
一体、何が起こったのだ…?
ルーファウスは怒りのオーラを発して、湯につかっている。
急に機嫌が悪くなるのは、今までも何度もあった事とはいえ、今回はかなり根が深いらしい。身体と髪を洗い乍ら、色々原因を考えてみるが、どうも心当たりが無い。
仕方なくルーファウスに原因を聞くべく、彼の後ろから少し遠慮がちに近付く。
裸で正座なんぞをしている姿は、端から見れば、ハッキリ言ってマヌケである。
「どうか…したのですか?」
ルーファウスからの返事は無い。
機嫌を伺おうと、そろそろとルーファウスの隣に据わるが、彼はプイッと後ろを向いてしまう。
「あの…――」
ツォンが言い掛けた言葉を、ルーファウスが遮る。
「お前はいつもそうだ。二人きりになりたいのなら、『なりたい』って、はっきり言えば良いのに……、こうやって回りくどい事をするんだ。そりゃあ、俺の為に色々考えてくれるのは、嬉しいケド……」
ツォンは、ポカーンとした表情でルーファウスの言葉を聞いていた。尚もルーファウスは続ける。
「俺はお前に追い付こうと、一生懸命なのに、それなのにお前はどんどん先に進んでしまう。俺はお前の隣に居たいだけなのに…」
「………。すみません」
後ろからルーファウスの小さな肩を抱き、ツォンは心から詫びた。
「私はあなたに甘えていたようですね」(←っていうか、突っ走り過ぎ)
ルーファウスもツォンと向き合うと、しっかりと抱き合った。
自然と唇同士が触れ合い、深く口付ける。
ツォンを湯舟に据わらせると、ルーファウスはその上に跨がる。
湯で十分、温まった白いルーファウスの窈窕たる肢体は、仄かに桃色に染まっている。
ツォンの手が、ルーファウスの後を探り、指を潜り込ませる。
「あ…んっ……」
始めは緊張していた身体から、次第に強ばりが消え、指を迎え入れる。
辺りは時々鳴く鳥の声と、流れ落ちる湯の音。そして、二人が絡み合う波の音とルーファウスの甘い声だけが静かに響いていた。
「あぁ、流れ星ですよ」
「うん…」
「何か願い事を唱えましたか?」
「ううん…。そんな余裕なかった。お前は?」
「あなたとこうして、ずっと二人でいられるように」
火照った身体を冷ます為に、湯舟の端で寄り添い今日何度目かのキスを交わした。
満天の星空は、幸せな二人を見守っていた。
「さて、湯冷めをしないうちに、部屋に戻って、続きをやりましょうか♪」
「……………!!!!」
作者注:
*1 全てオンラインで繋がっていて、いつの間にやら勝手に会議の予定とかが入っているのだ →戻る
*2 絶対、労働組合なんてないよね!健康保険組合…は、どうなんだろう? 以前の仕事場には、労働組合と健保組合と、それぞれに保養所があるんすよ。ともあれ、『福利厚生課』なるものを作ってみました。 →戻る