evidence2 -3- By-Toshimi.H
レノとルードは、再び拳銃を取り出すと、タイミングを測って給水タンクの陰から飛び出す。それに気が付いた警備員は、銃口を二人に向けるも、悉くライフルを撃たれて反撃不能とされる。
ヘリコプターから円筒の物体が落とされ、それは爆音と共に大量の煙を吐く。
「よしゃ!」
警備員達が怯んだ隙に、レノから縄梯子に飛び付く。
二人が掴まったのを確認し、黒塗りのヘリコプターは去って行った。
「ふぅ、助かったぞ、と」
縄梯子を攀登り、ひょっこり顔を覗かせたレノは、笑いながら操縦士に礼を言う。
「早くルードを引き上げてやれ」
「はいはい、と」
ルードも機内に引き上げられ、扉が締められると、ヘリコプターは速度を上げて、零番街へ向かった。
「おやおや、ツォンさん。部下が殺されそうな時に、社長のお守ですか?と」
普段はオールバックの黒髪は乱れ、ネクタイも外されて、上着も着ていないツォンの格好に、赤毛の部下は空かさず詮索を始める。
「私は余計な事を、ルーファウス様の耳に入れたくないだけだ」
ふぅん、と言いながら手を頭の後ろに回すと、レノは座席に腰を沈めた。
神羅ビル内総務部調査課オフィス。
ツォンと任務から戻った三人は、会議机を囲んでいた。
「今日はご苦労だった。何か判ったか?」
「裏金の流出先は、弐番街のアバランチ。ボスの名はファン=デル。アイツ、写真を見せても、知らないとシラを切ったぞ、と」
レノは内ポケットから、ウータイ人の写真を取り出して、机の上に置いた。
そして口から煙を吐き出すと、吸っていた煙草を灰皿に押し付けた。
「弐番街スラムのアバランチと言ったら、反神羅組織の中でも一、二を争う大きさの組織ですよね」
イリーナが考え込む様に呟く。
「こいつを潰せば−−」
レノは新しい煙草を咥え、それに火を点け、空になった包み紙を握り潰した。
「他の組織もしばらくおとなしくなるだろ、と」
「……それより。あの警備員」
今まで一言も口を開かなかったルードが、ここで初めて口を開いた。
「あー、アレね。どう見ても、ただの警備会社の社員じゃねぇよな」
訝しげにレノはそう言った。
「どういう事です?」
まだ経験の浅いイリーナには、このレノの言葉は理解出来ない様だった。
「普通の警備会社は、あんな高性能で射程距離の長いライフルは持たないってコトだぞ、と。相当訓練しなきゃ、あんなシロモノ簡単に扱える様にはならんぞ、と」
「あの男が銀行の金を横流ししていた事は確実だ。その金は警備会社へ流れていた。だが、その警備会社の実態はアバランチだった、と言う事だ」
そう結論付けながら、ツォンも煙草を取り出すと、それに火を付けた。
「でもツォンさん、おかしいですよ」
ツォンとレノの視線だけが、イリーナに向けられる。サングラス下の、ルードの視線は伺い知る事は出来なかった。
「神羅系の銀行なら、警備会社も神羅系のはず…」
イリーナの言葉を遮り、レノが机に拳を叩き付けた。
「ックショー! あのヤロー、密かに仲間の助けを呼んでたんだ」
「あるいは、本当はあの男を殺しに来たのかもしれない。今はただ、憶測しか出来ないがな」
ツォンは口から紫煙を吐き出し、長くなった煙草の灰を、灰皿に落とした。
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