ルパンと不二子は、シークレットファイルと共に行ってしまった。
屋敷は、その後もスコーピオンの一団に襲撃され続けていた。
マシンガンの乱射が浴びせられ、屋敷の壁が細かく砕け飛んでいる。
次元と五右ェ門、そして銭形とスコットも加わって、それに応戦していた。 「奴らは何者だ!?」
銭形が訊く。
「スコーピオンの襲撃部隊だよ」 と次元が答える。
その言葉に、スコットが勢いよく反応して、次元の胸ぐらをつかんできた。
「奴らはスコーピオンなんだな!」
「あぁ・・・そうだよ」
「よ〜し、ついに手掛かりをつかんだぞぉ!」
スコットは、次元を突き放すと、勢い込んで窓から飛び出そうとしたが、銭形と五右ェ門が彼の背中をつかんで引き止めた。
「お主、死ぬ気か」
「え〜い、離せ!」
「スコット、そう焦るな。まだ危ねぇ!」
銭形は、そう言って彼を強引に引き戻した。
スコットの髪の毛を、マシンガンの弾丸がかすめていく。
ここで、次元と五右ェ門が新戦法に打って出た。
五右ェ門が前に出て、マシンガンの弾を斬鉄剣で斬っている肩越しから、次元がマグナムで狙撃するのだ。
この戦法は実に有効だった。スコーピオンの戦闘員を次々倒していく。 1人、2人、3人、4人。
「警視庁一の腕を持つ、この銭形をなめるなよ〜!」
銭形も、別の窓際に身を隠しつつ、スコーピオンの奴らを倒していった。
スコットも同様に、銃の腕前はなかなかの様だった。
しかし、やはりジーナはその正確な射撃で、4人を苦しめていた。
「残りは、あと1人のようですね・・・」
スコットが言う。
「あぁ・・・」
銭形は、そう短く答えたが、その残りの1人にただならぬものを感じ取っていた。
「ジーナだな・・・」 と次元が呟く。
「・・・・・・」 五右ェ門は答えなかった。
ただ、真剣な表情でジーナの放つ銃弾と格闘していた。
「だめだな」 銭形が吐き捨てる。
銭形とスコットは、ジーナの攻撃で、窓から身を出せない状態になっていた。
次元も一杯一杯のようだ。
「くそ〜う!」
五右ェ門も、もう限界らしい。
「ここまででござるな」
そう言うと、次元と共に身を伏せてしまった。
4人には打つ手が無くなってしまったのだ。 どうする・・・
が、その数分後に銃撃が止んだ・・・
「またか?」 五右ェ門が呟く。
「そうらしいな・・・」
次元が、ゆっくりと立ち上がりながら答えた。
屋敷にいる次元達には、木々の陰になって見えなかったが、ジーナは急な目まいに襲われていたのだった。
額に手を当てて、苦しそうに後ずさりをしている。
「う〜ん・・・、う〜ん」
手にしていた銃器の重さも、急にその体に応えだしたようだ。
ストラップを肩から外すのももどかしいといった感じで、その場に落としてしまった。
目まいは更に激しくなってきている。
よろけた拍子に、土手の下まで転がり落ちてしまった。
その時、被っていた帽子が脱げて、中から見事な金髪が現れた。
ジーナは、その場からなんとか立ち上がると、よろよろと歩き去っていった。
窓から顔を出したスッコットだけが、木々の間にジーナがよろよろと下がって行く姿を見つけ、一人窓から飛び出していった。
「警部!後はお願いしま〜す! よーし、この手掛かりは逃がさんぞ〜!」
「おーい、スコット!」
銭形が止める間もなく、彼はジーナを追って走っていってしまった・・・。
「あいつ、行っちまったよ・・・」
次元が五右ェ門に耳打ちする。
「シークレットファイルも見つかったことだし、ここにはもう用はねえな」
「行くか」 と五右ェ門が小声で返した。
「そうしよう」
2人は、銭形に気づかれぬ様に、ゆっくり静かに部屋を抜け出した。
「今度のヤマは何なんだ次元?」
そう言って振り返った銭形が唖然とする。「ん?」
「ちくしょう、逃げやがったなぁ〜!」
屋敷の外から次元が声をかける。
「とっつぁん、じゃあな〜!」
2人は、フィアットに飛び乗ると、走り去っていった。
ルパンは、走るハーレーの後ろで、例のファイルを読んでいる。
『スコーピオンの大金庫は、コミッショナー所有の〈青龍の涙〉というエメラルドをその鍵とする。
〈青龍の涙〉を金庫の扉の穴にはめ込み、テンキーで7桁の暗証番号を押すと、その穴にレーザーが照射されて、エメラルドのカットにより乱反射する。
その反射紋が一致した時に扉が開く・・・・・・・』
「なあるほど、そういう事か。 ―――〈青龍の涙〉ってエメラルドはどこだ・・・」
ハーレーを運転しながら、不二子が妙に甘い声で話し掛けてきた。
「ねぇルパン聞いて。キングったらね、私の〈ナイルの瞳〉を盗っちゃったのよ。
私をスコーピオンのターゲットから外すとか何とか言って・・・」
「キングって、あのX野郎の息子のキングか?」
「そう! そして、〈青龍の涙〉とかいう大きなエメラルドと一緒に悪趣味なサソリの像の目に入れてるのよ」
「青龍の涙・・・」
そう呟くとルパンはニヤリと笑った。そしてかなりオーバーな口調で言葉を続けた。
「そうか! 俺がせっかく不二子ちゃんにプレゼントしてやったのに。あんちくしょ〜う!
不二子の為だ! よ〜し断然取り返しちゃうもんね〜!」
それを聞いた不二子は、ハーレーを止めると、
「ありがとうルパン♪」
そう言いながらルパンの方に振り返り、頬にキスした。
ルパンは、不二子のキスで嬉しそうにハーレーから降りると、抱えていた自分の服を着ながら訊いた。
「不二子、それで場所はどこだ?」
不二子は、ルパンが持っているのが大金庫の資料だなと気が付いていた。
だが、ここはわざとそ知らぬふりを決めていた。
まだその話に持っていくのは早いと考えているのだろう。
ルパンに背を向けて、ハーレーの方に向き直ると、キラッと目を輝かせ、怪しい微笑みを浮かべていた。
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