「おー、五右ェ門!」
次元は、玄関から静かに入ってきた五右ェ門に声をかけた。
五右ェ門は、斬鉄剣を体の正面に杖のように立てた形で椅子に座った。
「首尾はどうだ?」
「いや〜、全くだめだ・・・」
次元は帽子のひさしに手をかけ、深くかぶり直しながら答えた。
「ルパンは何処にいる?」
「奥の部屋でうなっているよ」
「ぅん?・・・・」ルパンは、その奥の部屋で腕組みをして考え込んでいた。
頭の中では、さまざまな可能性が浮んでは消えているのだろう、何やらブツブツ呟いている。
「・・・スコーピオンの大金庫の資料はどこに在るんだ・・・シークレットファイルは・・・」
となりの部屋から次元が声をかける。
「ルパン!五右ェ門が来たぜ!」
ルパンは、ブツブツ言い続けながら顔を出した。
「よ〜、来たか五右ェ門!」
「それにしても、ニューヨークは恐い処でござるな・・・」
五右ェ門は、思い出したように呟いた。
「どうしたんだ?」
次元が訊き返した。
「ここへ来る途中、川のほとりに有るマンションで爆弾テロが有ったのだ・・・」
「!・・・」 その話しに、ルパンと次元は顔を見合わせた。
ルパンが訊く、「もしかして、それは赤いレンガのマンションじゃぁなかったか?」
「いかにも。――そのマンションの1階は跡形もなく吹き飛んでいた・・・」
「あの、不動産屋じゃぁねえか?」
ルパンと次元が、同時に言った。
さらに、二人同時に同じ言葉を発した。
「スコーピオン!・・・」
「!・・・」
五右ェ門は二人に鋭い視線を投げた。
「ルパン!あの不動産屋が殺られたって事はだよ・・・」
「俺たちが動いているのが、奴らにバレちまったかなぁあ?・・・・・」
その時、レーザーの赤いポイントが部屋の中を走った。
「・・・!・・・」
それに気づいた3人は、レーザーの赤いポイントを目で追った。
そして、そのポイントがルパンの胸に止まった瞬間、3人は同時に身を伏せた!
ズガーン!ガシャーン!ライフルが発射されて、ルパンの後ろにあったバーボンのボトルが派手に弾け飛んだ。
「どうやら、その様でござるな・・・」
「どうするよ、ルパン!」
「奴らが来たからって、ここを逃げ出すわけにはいかねーだろ!ファイルを捜し出すまでは!」
「ならば、やるしかあるまい」
そう言いながら五右ェ門は、身を伏せたまま斬鉄剣に手をかけた。
ルパンはワルサーを、次元はマグナムを手にして窓の両側へと散った。
次元は窓の際に立って、ほんの一瞬、外の様子をうかがった。
「右に3人、左手に5人だな」
屋敷の周りには、迷彩服の武装した一団がじりじりと迫っていた。
ルパンは、胸のポケットからデンタルミラーを取り出すと、窓からそっと出した。
「一番奥にいる、グレーのコートのグラサン野郎がリーダーか・・・」
そのデンタルミラーを見た五右ェ門は言った。
「おぬし、なかなか用意がよいな」
「まあな!」 ルパンが誇らしげに答えると、次元が茶々を入れる。
「この屋敷で、シークレットファイル探すのに使っていた道具だよ」
ズガガガガガン!
マシンガンの一斉射撃がはじまり、ルパンの持っているデンタルミラーも弾き飛ばされた。
「あわわわわ・・・!」
ズガガガガガガ! ズガガガガガ! ズガガガガガガン!
窓ガラスは、窓枠ごと、あっと言う間に無くなってしまった。
五右ェ門は、斬鉄剣で、マシンガンの弾を斬りながら、窓から飛び出した。
「でゃーー!」
五右ェ門に向けられたマシンガンは、ことごとくその剣に弾かれていた。
ルパンと次元も応戦する。ガーン!ガーン!
五右ェ門は、その素早い動きで2人を斬ってしとめた。
迷彩服が2人、手榴弾を投げてきた。
次元は、落ち着いてその手榴弾を空中で撃ち抜いた。
ガーン!ガーン!ガーン! ドン!ドン!ドーン!
1つ、2つ、3と空中で爆発が起こる。 がっ、そのうちの1つが部屋の中まで届いてしまった。
ルパンは、素早くそれを外へと蹴り出した。ドーン!
しかし、屋敷のすぐそばで爆発してしまい外壁に相当なダメージを与えてしまった。
「次元!大丈夫か?」
「なんとかなー!すまねぇ」
その間もマシンガンの乱射は続く。
ズガガガガガガ!ズガガガガガン!
ようやく、ルパンは2人の迷彩服を、次元は3人の迷彩服をしとめた。
しかし、最後のグレーのコートは、正確な射撃で3人を苦しめていた。
ガーン!ガーン!
決して近付かず、かなりの距離をとって、足の長い銃で攻撃してくる。
ルパンが言う、「くそ〜、手強いな!」
グレーのロングコートにサングラス、そしてグレーの帽子。そう、彼らはまだ名前を知らないが、強化人間のジーナなのだ。
ガーン!ガーン!ガーン!
3人のごく近くで、その弾丸が弾けた途端、急に辺りが静かになった・・・
暫くの沈黙の後、五右ェ門が口を開く。
「・・・消えたか・・・」
次元も続けた。「助かったぜ・・・」
「なんでだ、俺達の方が追い込まれていたのに、何故トドメを刺さずに消える?・・・」
ルパンは訝しそうに呟いた。
窓のそばへと帰ってきた五右ェ門は、ルパンに訊いてきた。
「あの女・・・、何者か?・・・ただ者ではないぞ・・・」
「おんな〜?!」
次元は驚いた様に訊き返した。
ルパンは神妙な顔をして、ゆっくりとした口調で言葉を続けた。
「あぁ・・・、女だったな・・・」
そして、その部屋の荒れ果てた様子を見回しながら言った。
「あ〜あ、俺の別荘にひっで〜事しやがって、まったく!・・・」
屋敷の近くの物陰から、今までの襲撃の様子を見ていた男がいた。
FBIのスコット捜査官だ。
彼はこの屋敷を調査に来て、たまたまこの現場に遭遇してしまったのだ。
「あれは、ルパン三世じゃないのか?――そして、あの2人は次元に五右ェ門・・・」
スコットも、あの有名な3人の顔を知っていたようだ。
「これは、ICPOの協力が必要かもしれんな・・・」
彼の頭の中には、もう一人の有名人の名前が浮んでいた。
|