中隊へ配属されても通常の訓練からそうで無いものまで、彼らの為すべきことは実に多彩である。


<銃剣道>
(その壱)
皆さんは、「銃剣道」と言うものを、ご存じだろうか?。
自衛隊特有の武道の一つで、「木銃」と呼ばれる木で出来た棒状の物で相手を突くものである。
決して、叩いてはいけない。
突く部位は、胴の左脇付近(もちろん、分厚いクッションで保護されている。)、のど、小手、肩(グラスファイバー?で一部が保護された防具。)である。
銃剣道も自衛官としての必須科目になるわけだが、中隊、さらには師団規模の大会もあるため、各中隊とも熱の入れようは、かなりのものである。
さて、その試合形式であるが、剣道とたいして変わりはない。
試合場中央付近の2本の線に向き合って立ち、お互いに礼をし、構える。
剣道と違うのは、「はじめ!」の声と共に双方が木銃を突き出しながら、おもいっきりぶつかり合うことだろう。
で、たいてい勝負はこの一瞬で決まる。
決まらなければ、「待て!」の声が掛かるまで、突きだけの剣道みたいなものである。
いや、実際は、ちょっと(かなり?)違うらしい。

マークの用語解説
「木銃」とは、昔の三八式歩兵銃に銃剣を付けた位の長さになる、木製の棒で、持つ所は銃床を型どってあり、その先端にはゴム製?のタンポが装着されているものである。


(その弐)
銃剣道の大会があることは前にも言ったが、中隊配属後の彼も当然訓練を受ける。
新隊員の中からも大会選手を選ぶため、新隊員の訓練は大変厳しい。
基本から応用、試合を含めての訓練を経て結果的に彼は、選手として選ばれてしまった。
断っておくが、彼は武道などとは縁遠い人物である。
さらに言うなれば、とても戦闘向きな人間ではない。(ガンマニアではあるが・・・。)
そんな彼が自衛隊に入隊したのには訳がある。
彼の名誉のために言っておくが、決して銃が撃ちたかった訳ではない・・・と思う。
その訳については、彼の希望によりここでは語ることはできない。
そんな彼が選手に選ばれた理由は彼の勝率にあった。
彼には、相手を翻弄する技やスピードは無い・・・相手を圧倒する力も無なければ金も無い。
その彼が、試合では結構、勝ってしまうのである。
その彼の必殺技(キックや**光線ではない。)をここに公表しようと思う。
試合の時、両者が構え終わってから「はじめ!」の声がかかる。
よって、基本的には相手より早く構えて態勢を整え、「はじめ!」の「は」の声で突っ込むように教えられる。
たいていの審判は両者が構え終わるとすぐに「はじめ!」をかける。
彼は、これを逆用したのである。
彼は、相手よりも、遅くゆっくりと構える、当然彼が構え終われば「はじめ!」がかかるはずなので、構え終わった彼は審判の声を待たずに動作を開始するのである。
人間の動作にはタイムラグがある。
「は」の声を聞いた時に動作を開始するのと、動作しているのとでは雲泥の差があるのだ。
結果、相手が1歩踏み出す頃にはすでに、彼は相手を突いているのである。

これが銃剣道の防具だ!


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