呆冗記 人生に有益なことは何一つ書かず、どーでもいいことばかり書いてあるぺえじ。
傭兵ピエール
さて、佐藤賢一氏の出世作。『傭兵ピエール』が、コミックス化された。コミック化して下さったのは野口賢氏。いやあ、こりゃあ、凄いんでないかい。と掲載誌見た時には吃驚した物である。
なにせ、あの、佐藤賢一氏である。事実上、世界史を元にした若手小説家の中でもピカイチと私が信じる氏は、『ジャガーになった男 単行本版』(第6回小説すばる新人賞受賞作品。単行本版と断るのは、この後発売された文庫本版とでは人称を始め、内容が大きく異なるからである)を皮切りに、『赤目−ジャックリーの乱−』、『双頭の鷲』と次々と秀作、傑作を発表され、『王妃の離婚』で直木賞を受賞したほどの人物なのである。
あ、最新作の短編集。『ジャンヌ・ダルク、またはロメ』。積ん読状態ではないか。それに、今回、この『呆冗記』を書くに当たってAmazonを調べたら『英仏百年戦争』などという講談社新書が出ていたりするではないか。急いで買わねばなるまい。
ま、ともかく、そんな氏の出世作を、『柳生烈風剣連也』を書いた野口賢氏が漫画化したのである。
実は、私、あの『柳生烈風剣連也』。大好きだったのだ。ホント、途中で10週打ち切り喰らった時には血の涙を流しかけたものである。あれほど面白い作品も一寸無かったと思うのだ。手には一刀。倒すは姉を攫いし、異国の剣士。うう、燃える。あ、今気が付いたがこれって『鬼哭街』の逆パターンだったのでは? まったく、素晴らしい設定と世界観だったのだが、少しばかり早すぎたのかも知れない。少年ジャンプで日本刀持った主人公が認知されるのはもう少し後になってから。『流浪人』が明治維新後の日本を走り抜ける事になるまで待たねばならない。
しかし、私が好きになったジャンプ作家は皆さん苦戦するのが定めなのか、その後『竜童のシグ』も10週。『BE TAKUTO』も10週。
で、何書かれているんだろう、まったく、空港物なんて。と想ったとたん『大空港』がスマッシュヒット。以後、夢枕獏氏の『黒塚』をコミック化され、、今回の『傭兵ピエール』コミック化と相成ったのである。
物語自体は、いつか佐藤賢一氏のコンテンツを作ろうと朱雀と言い合いっているので、そちらに譲りたいと思う。だから、あらすじだけ。時は英仏百年戦争時、もう、青息吐息のフランスを救うべく現れた聖女ジャンヌ・ダルク。そのジャンヌと出会ってしまった通称シェフ殺しのピエールの波瀾万丈の物語。といったところである。
それが、野口氏のシャープな絵によって余すところなく表現されているのだ。いや、出会い物である。
ただ、いくつか難点がないわけではない。
いや、原作において、作品の深みと同時に雑味を醸してしまっていたヴィヴィットの存在が、らしき女の子は出てくるのだがばっさりカットである。
まあ、少年漫画のフォーマットからすると、主人公がそうそうあっちこっちに彼女作るわけにも行かないだろうが、残念でもあり、英断かも知れないと思ったりするのだ。
原作でも、彼女は非常に難しい地雷女であった。いや、メインヒロインのジャンヌ自体が、地雷女なのだが、ヴィヴィットは、更に踏むとヤバイ、典型的な湿式地雷であったのだ。
そのやせぎすな躰故に、シェフ専用にされてしまった彼女は、ピエールの戯れによって、どんどんその美しさを増していく。しかし、ピエールの中には常にジャンヌが存在していた。うーむ、青年誌なんだし、このくらい何ともないと思うのだが。
ま、ともかく、ある日、ヴィヴィットはピエールによって得たもの全てを賭けて、決断を迫る。
「あの人(ジャンヌ)の代わりは嫌です」
いじらしい叫びだった。が、訪れたのは悲劇。ピエール達の傭兵隊の宿舎を飛び出した彼女はピエールに反感を持っていた傭兵達に殺されてしまう。うーむ、やっぱり大望を持ってしまった脇役は死ぬしかないのであろうか。
いや、彼女、地雷女だが、故に可愛いとも思える。買ってもらったクレープを小動物のようにはむはむ食べていたり。(この辺、コクコク首振って食べる某セイバーたんに似てるかも知れない)ピエールの靴下が同じところに穴が開くのを、「シェフさんの歩き方が変なんです」。とピエールの歩くのを腰に手を当てて見ていたり。安い指輪を買ってもらって、てっころんだり。
うむ、私はけっこう地雷好きなのだろうか。まあ、地雷女にも縁がない故のお気楽極楽かも知れないが。ともかく、まだ、物語は始まったばかり。これから楽しみなコミックスである。(04,3,28)