呆冗記
呆冗記 人生に有益なことは何一つ書かず、どーでもいいことばかり書いてあるぺえじ。


Fate 1

 私は『月姫』をやったことがない。そんな私が『Fate』をやる羽目になったのは、本当に偶然であったのだ。
 とある、土曜日、朱雀がS端子ケーブルや、なにやらを持ってくると、『機動戦艦ナデシコ』のLDBOXを貸してくれと言う。まあ、良かろうと久しぶりにLDプレイヤーを引っ張り出して、二人で見ていたときの話である。
 悪夢はやって来た。
 武田が『Fate』を持ってやって来たのだ。曰く、推奨スペックにあの莫迦のマシンでは遠く及ばないらしい。ちなみに現状で私、朱雀、武田の最高性能マシンスペックを並べると(こういう表現になるのは朱雀の阿呆が10台以上所有しているからである)P4・2,6G、P3・880M、P3・660Mということになる。圧倒的じゃないか、我が軍は。
 そこで、私のマシンにインストールさせ(幸いプロテクトが掛かっていてキィディスクがないと起動しないので著作権的にはOKであろう)武田の奴が始めたのを見るともなしに見ていたのだが。
 はまった。見事にはまった。
 いや、凄いなんて言う話ではないのである。物語は単純に王道。少年漫画の定番。なのにプレイヤーを引き込んで離さない。
 まだ、3分の1しかやっていない(ヒロインは3人『タイガー道場』談)のだが、現時点でもう、昨年のゲームランキングならばぶっちぎりの3位である。(1位は『セクフレ』、2位『ワイルドアームズ・アドヴァンスト3』、以下、『斬魔大帝デモンベイン』、『ドラゴン・クォーター』と続く)
 以下、ネタバレを含むのでやってない人間はやるように。(18歳以上)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 聖杯戦争。7人の魔術師に7人のサーヴァント。彼らによって万能の願望機『聖杯』を奪い合う。半人前の魔術師でしかない主人公はその闘いに何故か巻き込まれてしまう。そして、彼の闘いが始まる。
 ええと、並のゲームより主人公の設定がよほどしっかりしているのだ。個人的に、こういった年齢制限のゲームでも主人公の設定がしっかりしているゲーム、もしくは、主人公の内面がしっかり掘り下げられているゲームは傑作が多いと思う。今回は、その双方が非常に良くできている。
 主人公は10年前の聖杯戦争の最終決戦の被害者。唯一の生き残り。そして、その時、誰も救えなかった。助けを求めてきた人々を誰も救えなかったことがトラウマになっている。故に、魔術師の養父に助けられ、彼のようになりたいと切に願うようになる。しかし、その『全ての人を救う正義の味方』とは、過去のトラウマによって、自分を勘定に入れない歪んだ代物だった。
 うーむ。見事である。動機も何もかも完全に機能する。少年漫画のお手本のような、ライトノベルの主人公だってここまできちんと構成されている主人公はそうはあるまい。(シチュエーション・ストーリーは除く)
 そして、ヒロインの最強のサーヴァント。セイバー。彼女もまた、王として最大多数の幸福のために自分と少数の人間を度外視し、『国に滅ぼされた』英雄だった。
 この二人が、策謀渦巻く聖杯戦争に立ち向かうのである。このコンビの構成の妙。全員の幸せなどはあり得ない。主人公の理想論はセイバーの現実によって否定される。しかし、自分をその救われる者の外に置く事自体はセイバーを持ってしても否定は出来ない。なぜならば、王になってしまったことで、国を乱したと思いこんでいる、故に聖杯に自分以外の優れた王を求めようとするセイバーと、大火事から助かってしまった主人公は等しく自分を救われる者の外に置かねばならないと言う枷を自分ではめているからなのだ。自分を幸せになる人間の中に入れないことでは二人は同価なのである。
 更に、サブキャラも渋い。まずアーチャーのサーヴァント(赤)。いや、何というかマジなんだか阿呆なんだか解らないのだが。かし、何の英霊なのであろうか。私のプレイではとうとう正体は分からなかったが。ランサー。こういう兄ちゃんは好きである。正統な魔術師。稟。うーむ、こういうさっぱりした気性の姐さんはツボだったりする。(でも、セイバーの方がお気にだが)
 あと、悪役。いやあ。すげえ。ロリ娘に半人前の主人公とセイバーでは容易に勝てない、サーヴァントである。うう。このロリ娘。敵でなければじっくり攻略したいのだが。残念ながら大人の事情でルートは消滅したとか。返す返すも残念である。あとアーチャー(金)の無茶苦茶な強さ。物語はこうでなければならない。素晴らしい。
 もう一つ、このゲームは容易に死ぬ。簡単に死ぬ。本当にこれ、年齢制限ゲームなのであろうか。更に、年齢制限ゲームとしてらしからぬのは、我々がその種のシーンにたどり着いたのは、ゲーム開始から6時間以上たってからであった。しかも、緊急燃料補給……。あはははは。
 とにもかくにも、気を取り直して、勝ち残った二人が最後に聖杯の前で見たものは。聖杯戦争の黒幕とは。そして、セイバーと主人公の選んだ選択とは。
 ノンストップで10時間以上。いや、読むのは速いつもりでいたが、それでもこの体たらく。オフィシャルのプレイ時間60時間以上というのは、本当なのだろう。
 
 ともかく、最後に基の世界に戻ったセイバーの最期に安らぎがあったことを祈らずにはいられない。あまりにも綺麗な。触れば壊れてしまうような、そんなラスト。何も足せない。何も引けない。作者はおそらくはこのラストがやりたかったのだろうなあ。そう思うのだ。さすがのぬくぬくスト(主人公とヒロインが幸せに暮らしましたとさ。というエンディングを深く愛する人間のこと)上杉明も、このラストにはぐうの音も出なかったのだ。凄い。
 願わくば、3回目に投じられた剣が安息の地に戻ったように、3度目のシナリオでセイバーにも安息が訪れんことを。切に祈るのだ。(04,2,1)


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