呆冗記
呆冗記 人生に有益なことは何一つ書かず、どーでもいいことばかり書いてあるぺえじ。


デビル17

 すべての主要先進国政府は否定している。しかし<エンジェル>は実在する。天より降臨したかのごとく出現し、いずこともなく去っていく世界最強の特殊部隊。その正体はまったく不明である。
 しかし彼らは必要とされる時、そこにいる。彼らは主義、体制、宗教、金銭では敵を選ばない。自分たちの求めているものと、この世界のどこかから響く助けを求める叫びが合致した時、すべてを解決する。素早く、鮮やかに、そして、時には無慈悲に。 <エンジェル>による救いを求めるものは声を上げるがいい。どんな手段でもかまわない。公開されているある番号への電話でも、Eメールでも、新聞の尋ね人欄でも……時にはただ大声を上げるだけでも。その叫びが彼らにとって意味のあるものであれば、血まみれた天使たちはかならず降臨する。

 というわけで、佐藤大輔氏かもしれない豪屋大介氏の新作。『デビル17 みなごろしの学園』を、本日購入し、読了。
 うわあ、自己充足小説。・・・。

 「嬢ちゃん 自己充足小説ってのはアレだろ 主人公は人間離れした反射能力や運動能力 獣のように敵をぶちのめし 怖ろしいほど清楚な美少女美女にもてる」
 「読者と作者の願望を感じ その願望を満たすため話はご都合主義に動く 使ったこともない銃やナイフをたやすく扱い 敵を襲い 乙女に憎まれることなく去っていくんだろ? 」

 という話なのだ・・・。いや、あの美少女に囲まれた『A君』がもう、苦闘の歴史である。よくある、自己のコードが決まっていない甘ちゃんが突然、すっごい力を持ってしまって。という話である。
 個人的には、あくまでも個人的なのだが大迫氏の『最終エージェントちかる』の方が面白かったかな。と思うくらいなのだ。
 やはり、私は『性区別主義者』なのかもしれない。可愛い女の子が突然苦難に巻き込まれるのはかわいそうでも、17位の野郎が苦難に巻き込まれるのは、けっ。と思ってしまうのかもしれない。女性の方々は嫌うかもしれないが。
 まあ、A君みたいに、魔族を守るという心地よい偽善すらないこの世界では、主人公が自分の心地よい世界を守るために行動する、そのようにしか見えないのだ。むろん、それはそれでOKである。大藪晴彦氏の諸作品は、そのような主人公に満ちていた。しかし、あの物語は、男としての絶対性。己のコードをしっかり持っている人間の行動だったからこそ面白いのであって、このような何だか解らないような、自己の確立もできていないような主人公では爽快感が失せるのである。困った話だが。
 むろん、面白くないわけではない。しかし、大藪晴彦に大学時代、首まで浸かったオサーンにとっては、これよりもっと旨いものがあったんだぜ。と、愚痴りたくもなるのである。なぜ、大藪晴彦全集は発刊されないのであろうか。私は発刊を切に願うのだが。
 ま、面白くないわけではない。しかし、『A君』のように、読み終わってもっぺん最初から読み直し。なんて事にはならなかっただけである。
 しかし、この発売と時を同じくして、色々なところで佐藤大輔=豪屋大介の証拠が発見されたとかネットで騒がれている。しかし、逆に、今回は少し疑問点がある。いや、今までの佐藤氏の作品が全て士官として完成された男達や、戦場で急速に覚醒せねばならなかった男達、女のいない世界で覚醒していった男達を書いていたからだろうか。どうもキャラクターの手触りが違うような気がしてならないのだ。
 しかし、その、生堅い主人公の台詞がどうも『皇国』の新城のデッド・コピーのような感じがするのは何故なのだろう。個人的には盤石の佐藤大輔=豪屋大介説がなんだか少し揺らいできたりするのだが。
 それとも、最初から、全部すっ飛ばしてギャグのつもりで書いているとしたら。それはそれで凄い話なのだが。
 ともかく、エンディングはラノベ。実に後味はよろしい。
 というか、逆に言えば、これは、『特殊部隊A(エンジェル)チーム』のエピソード0。というわけで、秘話みたいな感じにした方が良かったかもしれない。最初の話は、この話の後の、ある程度成長した主人公で、という話ならば、佐藤大輔=豪屋大介の補強材料になったかもしれないのだが。
 なにわともあれ、2巻目待ちである。
 それよりなにより、『A7』だ!はたすべきちかい。近日発行予定! わくわく。(
03,1,20)


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