呆冗記
呆冗記 人生に有益なことは何一つ書かず、どーでもいいことばかり書いてあるぺえじ。


あるゲームの話

 今回はあるゲームの話をしようと思う。
 いや、このサイトは原則、全年齢対象を標榜している。(ま、朱雀の職場においては、フィルターに引っかかって読めないページもあるかのように聞くが。しかし、なんであのワードが)
 故にこのゲーム、実名は出せない。あまりにも題名が直球ど真ん中である。ある意味、ニトロプラスさんよりも漢だったりする。この題名を記入したならばたちまち我がサイトは18禁と化すであろう。その名は『S○X FRIEND』。あの、まるちゃんこと丸谷秀人氏がシナリオを、そして、キリヤマ太一氏が原画を担当されている。要は『めいどいんへぶん』のスタッフが総力をあげて作ったバカゲー。そう言う認識だったのである。
 だいたいが、だ。題名からして一直線ではないか。そう言うゲームだと思って何が悪い? ま、忙しいし、良作ならば武田の奴が騒ぐだろう。そう思ったのだが。その考えは甘かった。
 騒ぐどころではなかったのである。ある日、憔悴しきった顔でやってきた武田は3枚のCD−ROMと1枚のMDを持ってきてこう言ったのだった。
 「MOのセーブデータ。7月13日の奴、女医さんの言うことを聞いてほしいニャ。僕にはできないニャ」
 何こいたもんだか。そう私は、その時は思ったのだ。
 流石、ストーンヘッズの『My Angel』で、さくらめーる氏の描くヒロインにすっかりはまり込み、残り2人の攻略ができずに私に下駄を預けた男である。ようは、このゲームもヒロインにはまり込み、外のヒロインのCGを回収させよう。そういう考えなのは容易に想像できた。ま、こっちもゲームを買わずに楽しめるのだから、それはそれでチャラである。
 しかし、『めいどいんへぶん』並のバカゲーをそんな途中からプレイするのもつまらない。爆笑ものの屁理屈が連発するまるちゃん節。こいつを楽しまずしてどうするか。
 で、最初からやり始めたのだが。
 なぎさは、お莫迦である。蝶子たんは、いぢめても壊れない。しかし・・・。早瀬はこのゲームのヒロインは・・・。違った。
 全くご都合主義の導入部。この手のゲームにはありがちなファーストコンタクト。(しかし、さすがまるちゃん。前カレとの修羅場がファーストコンタクトなんて誰も考えなかったであろう)そしてラブラブファイアーな日々。わははははははは。である。しかし、脳天気に笑う私の心の片隅に何か異物が入り込んできたのはそう時間はかからなかったのだ。
 こいつ、精神的に脆いんじゃないか? 同級生と言いながら、実は脆く儚いんじゃないか。
 2人の間で語られる機械になった王様の話。何かがある。何かが。この娘、早瀬は危険なヤツだ。そんな気になる。
 なぎさは絶対的なお兄ちゃん(主人公)への信頼感と自分への自信からくる打算に満ち満ちていた。
 蝶子たんは、母親の血と理性が両立していた。故に主人公が純愛で行っても、鬼畜を邁進しようとも、蝶子たんの存在は変わらなかった。彼女にとっては自分を優しく包み込んでくれようと、母親から受け継いだ血の要求を満たしてくれようと大差はなかったのではないか。そう思う。(むろん、ハッピーエンド後は自分の幸せを噛みしめられたと思うが)
 しかし、早瀬は違う。何が違うって、彼女は言うなれば砂上の楼閣に過ぎない。脆いのだ。何が彼女をそうさせてしまったのかはその時点では解らなかったが、ともかく崩れそうな砂の城。それが早瀬だった。その姿はあまりにも儚い。

 7月13日。私は、女医の甘言にどうしても乗ることができなかった。早瀬を自分のものにしたいという欲望はある。しかし、同時に、そんなことをして、早瀬は本当に自分のものになるかと、理性が悲鳴を上げていたのだ。
 ぎりぎり妥協して武田との約束通り、女医の言うとおりに薬を
入手した。これで言うことは聞いたのだ。私は翌日の映画鑑賞には薬の存在を忘れて遊び回った。
 そして、終業式。私は手をつないで校門へ走る早瀬と主人公を見送っていたのだ。いつしか、私は主人公と同一ではなく、傍観者としてゲームに没入していたのである。良い気分だった。残念ながらトゥルーではなかったがハッピーだった。(むろん、即やり直し通称『夜明けの珈琲エンド』を見たのは言うまでもない)
 結局、私は1枚のCGも増やすことなく、ゲームとMOを武田に返した。

 早瀬のヤツははとんでもないものを盗んでいった。そう思って苦笑する。最近、ここまで萌えたゲームはなかった。
 そうして、私はこのゲームを自分で購入した。
 そうして、私は早瀬と高辺のらぶらぶっぷりに今日もあてられに行くのである。
 自分に失われた時間を補完するために。(03,6,16)


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