呆冗記
呆冗記 人生に有益なことは何一つ書かず、どーでもいいことばかり書いてあるぺえじ。


静かなる朝のために

 なんと、佐藤大輔氏の新刊、しかもまっさらの新シリーズ?(少しばかり引っかかりもあるが)『平壌クーデター作戦 静かなる朝のために』が発刊された。が、ここでは某巨大掲示板に敬意を表し、『静かなる朝のために』と表記させて頂く。佐藤大輔作品に、センセーショナルな表題は必要ないのだ。
 「売らんかな」の根性は必要ないのである。
 しかし、しかしである。こんなものを書くくらいならば、早い所、『パシフィックストーム』や『信長』『パナマ』に『星』の新刊を書いてくれ。そう思ってしまうのは私だけではあるまい。はあ。
 更に、気になるのは、佐藤大輔氏は実は異様に筆が速い人なのではないか? それを逆に感じてしまったりする。古くからの読者である私なぞ、佐藤大輔氏は遅筆の人である。そう信じて、日々を送っているのだ。資料を収集し、プロットに凝り、キャラクター造形に時間を費やし、文体に贅を凝らし・・・。その結果が作品である。そう信じていたのだが、少々、疑念が沸く作品になってしまった。
 内容ではない。内容は充分満足できるものであった。では、何が?
 北朝鮮のクーデター小説については問題はない。問題はないが、その挿話としてイラク戦争が出てくる。ま、展開は佐藤大輔氏のことだから(湾岸戦争の展開を見事にあてた御方でもあるし)その展開は想定できたのであろう。故に3月23日の開戦、5月2日の大統領終戦宣言(私は個人的にあの戦争が終わったとは考えていないのでこういう表現をさせていただく)は、関係ないかも知れない。もっと前から想定されて書かれていたのだろう。きっとそうだ。そう信じたい。
 しかしである、しかし、新型肺炎(SARS)までが出てくるに至っては、あれは命名されたのは4月16日ではなかったか。そんなに早く書いたのであろうか? むろん、2月に異常な現象は出ていたのだが、だとしても、3月あれば書けると言うことなのであろうか。ならば、さっさと『パシフィックストーム』を書いて欲しい。そう思うのは私だけではあるまい。『パナマ』は? 告知されながら発刊されない『皇国』は・・・。
 ま、そんなことで愚痴っても仕方がないので、目の前にある『静かなる朝のために』について語らせて頂きたい。

 はっきり言って、これは北朝鮮版『征途』である。兄の目的を弟が遂げる。兄弟の物語なのだ。
 個人的に言わせてもらえば、北朝鮮の軍人さんにここまで感情移入できるとは思いもよらなかった。
 主人公が渋いのである。いや、佐藤氏の作品は全てそうだが、実に良い味を出してくれている。
 対して、日本側は『東京の優しい掟』から安岡二佐が再登場しているが、浅岡二佐って、こんな人であっただろうか? それとも、パラレルワールドなのだろうか。もう、佐藤氏は『RSBC』に『パシフィックストーム』の太閤さん出してしまったり、『征途』の藤堂家が出てきたりするのだが。
 で、日本側は何というか。道化っぽいのだ。今回の日本側。しかし、内閣情報センターのデータ分析は実に笑える。某日新聞を地でいっているのだ。

 鉄の箱にキャタピラがついて大砲が載ってたらみんな戦車。
 主翼下にエンジンポッドをつり下げていない限り、全て戦闘機。
 軍艦はみんな戦艦。

 だははははは。マジだとしたら由々しき事態である。
 かの昔、朱雀が岩見沢大学生協の学生理事をしていた時、北海道最高学府の学生理事さんが
 「原子力空母ミッドウェイ」と連呼されていたのをさりげなく注意したら極右扱いされたと笑っていたが。どうやら平和運動とは兵器や戦争に無知でなければやっていけないものらしい。結果が現在の日本の現状になるわけだが。しかし、おたく兄ちゃんズも大活躍である。ああ、私も彼らのように見られているのだろうか。
 ま、日本側はともかく、ラストは後味良くまとまっているし良作だと思うのだ。ただし、主人公の基本設定に一部の方からクレームが付かないか心配な点もなきにしもだが。ともかく、はやいとこ、『パシフィックストーム』書いてくれ。そういう気持ちを押さえ込めれば良作である
 しかし、ヒロイン可愛いなあ。(03,5,20)


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