呆冗記
呆冗記 人生に有益なことは何一つ書かず、どーでもいいことばかり書いてあるぺえじ。


A3

 さて、この21日に佐藤大輔御大の著作と噂される『A君(17)の戦争 3 たたかいのさだめ』が発売された。いやあ、台風の影響か日曜日の発売である。いかったいかった。
 しかし、今回の『A3』。重い。今までの明朗快活をたく戦記とは一線を画している。ともかく重いのだ。前半はそれでもまだまだ少しは明るい。
 すなわち、魔王領の戦力回復よりもランバルト国軍の回復が大きい。下手をすると6倍の戦力と戦わねばならない。故にやられる前にやる。これが中心線。これにこの魔王領VSランバルトの開戦原因を知る、斉藤元魔王平価の元へ訪れる剛士くんの動きに呼応した暗殺計画とそれを防ぐスフィアの覚醒? そして、田中魔王陛下が、実に良い味を出しておられるのだ。

 「甘い。甘いな」

 「僕について、調べが甘かったみたいですね・・・・・・」

 「甘いんですよ。人間描写が甘い。女性も書けていない」田中さん、書類をぽんと放り投げた。(『A3』p45〜47)

 ををををを。直前にちょっと取り乱してしまったのが惜しまれるが、実に堂々たる態度である。

 「オタクの何がいけない!」

 「違う! 絶対に違う! たしかに僕はオタクだ!しかし、オタクであることを威張ったことなどない! だから、他人から罵られる覚えはない!」

 「それは覚悟のない奴だ! アニメの美少女がいいと口では言いながら、本当に女の子とつきあっている奴を心の心の奥底で妬んでいるような意気地なしだ!」

 「ひとつだけ、ひとつだけ理解してくれ。僕は覚悟した。覚悟している。オタクである自分について! たとえ君のような美少女からバカにされても絶対に自分を貶めはしない! いや、むしろ君の想像力の欠如を哀れむ」

 まあ、この直後にシレイラ王女に突っ込んで以下のように取り乱すとしても立派なものだ。

 「なんでわからないんだよ! 人はオタクとして生まれるのではない、オタクになるんだ! それにだ、趣味なんてのはもともと恥ずかしいものなんだよ! 僕をそこらへんの奴らと一緒にしないでくれ! 僕は本当に好きなんだよ! だから恥ずかしいんだ!」(『A3』p53〜54)

 うーん。職場に趣味を隠している人間としては耳のいたい話ではある。

 そして、王様との会話も和ませてくれる。

 「えーとですね」田中さんはテーブルに置いてあったアイディアノートをめくった。
 「美形王子様が(上杉注 以下まじでやおい系はやばいので省略)なんてのもありますね」
 「おお・・・・・・」
 フェラール兄ちゃん、陶然としていた。そう言う方向性もあったかとお気づきになり、現実の情景を想像してしまったのである。
 「素晴らしい。素晴らしいですよ田中さん!」
 「あはは、そうですか」

 あはは。田中魔王でなくても笑ってしまうかもしれない。

 ところがである、後半はもうヘヴィそのものである。

 「剛士様! お願いです! もう充分です! これ以上、ご覧にならないでください! わたくし、殺します! 剛士様に仇為すすべての輩を! どうか殺させて下さい! わたくしのお慕いする御方のすべての敵を!」

 メッキ剥げたとしか思えないのである。間違いなく。金メッキの下は純金だった。これって、名前変えたらそのまま美しき両性具有者の台詞でとおるのではないか。

 とにもかくにも、大軍をもっての補給ルート破壊。という奇策に出る剛士くん。しかし、予期せぬ偶然により本陣攻撃を受けてしまう。さあ、大変である。しっかり無能な働き者(今後の活躍が楽しみ)も出てきて事態を最悪の状況に引っ張ってくれるし、この後どうする気なのかとんでもないところで引いてくれる。
 しかし、あの人を殺すとは・・・。

 さて、これで3巻である。次は外伝。そして長い休眠帰還に入るのではないか。それが一番恐ろしかったりする。(02,7,24)


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