呆冗記
呆冗記 人生に有益なことは何一つ書かず、どーでもいいことばかり書いてあるぺえじ。


でたまか 轟沈

 最近、とても心配なのがろくごまるに氏の消息である。まったくもって、ファンタジーで、「ああ、この人が書いてくれるなら、私は書く必要がないな。私の読みたいファンタジーを、この人が書いてくれるな」そう思っている人だけに、最近の遅作ぶりは心配なのだ。ご病気から回復されたのではなかったのか? 
 さて、ろくごまるに氏の件はさておき、今回は、もう一人の最近の「ああ、この人が・・・」になりかけた作家についてである。
 その人とは、いっぺんここで評論する必要があると考えていた鷹見一幸氏。あの『でたまか』の作者だ。(何故やらなかったのかは後述する)
 過去にあったかもしれない、残念ながら、私が寡聞にして知らないだけかもしれない。しかし、現在のファンタジー、もしくはスペオペに『軍師もの』とでもくくるしかない作品集団があることは間違いなく、その作品集団の嚆矢が『銀河英雄伝説』のヤン・ウェンリー氏であることも間違いない。この凄まじいほどの軍事的才能を持ちながら、あえて民主主義という頸木にその身を囚われ、崩れゆく共和国にその身を捧げた。(ご本人はこんな言い方を最も嫌うだろうが)彼の後、亜流があちこちに出たことからもその人気が伺える。ま。その正統な後継者である人参色の髪の青年は、3巻を最後に沈黙しているのだが。
 ま、身近でもその亜流は存在する。おそらくは日の目を見ることはないであろう『如露如芦庵』(予定通りなら、我が『夢民書屋』に遅れること、4月、11月には産声をあげていたはずである)のマスターたる、友人Tこと武田暗も書いたことがある。
 コンセプトは、
 上司にも部下にも恵まれないヤン・ウェンリー。
 であった。
 幸いにして、ヤン・ウェンリーは腐った政治家や上司に翻弄されたこともあったが、数少ないが優秀な上司と、ファミリーとまで言われた同僚、部下に恵まれた男であった。しかし、武田のものした作品、『虚空戦記』の主人公、リュウ・アリエスは上司に疎まれ、同僚に嫌われ、部下に軽蔑される。そんな男なのである。(書いてて可哀想になってきた)
 むろん、それは生け贄の羊であるはずの彼が時を読みすぎて作戦計画を滅茶苦茶にしてしまったり、莫迦な同僚の失敗の濡れ衣を着せられたり・・・とあるのだが、武田がヤン・ウェンリーのアンチテーゼとしてリュウ・アリエスを書いていたことは間違いない。
 ところが・・・凄まじいパラダイムシフトが発生する。
 それが『無責任艦長タイラー(富士見版)』である。((富士見版)とあるのは、私が現在の『真無責任艦長タイラー』を認めていないからだ)
 彼こそ、ヤン・ウェンリーのアンチテーゼだった。
 「そうか・・・。魔術師の敵は卑怯者(リュウ・アリエスの作品中の呼び名)ではなく無責任だったか」
 そう、武田は呟き、その一大絵巻(となるはずの)作品の筆を折った。随分と昔の話だ・・・。
 なんか、前書きが長くなった。しかし、まだ前書き。
 そんな状況で幾星霜。
 我々の前に、一人の青年が姿を現す。マイト・ガーナッシュ。帝国下級貴族。持ちうるものはその知恵と才覚だけ。そんな彼が駐在武官として赴いた星系はド田舎ながら純朴な人々の住む星だった。ところが、突然降ってわいた隣国の侵攻。しかし、士官学校時代のある事件により、彼は帝国軍上層部に睨まれ、一切の援護を受けられない状況となる。さあ!
 という話だったのだが・・・。
 ま、元はといえば雑誌か何かの投稿コーナーを元にしたものらしいのだが、なかなかもって面白く読めた。
 3巻の終わり近くまではである。しかしだ、あそこまでファンタジーにするならば、最後までファンタジーでどこがいけなかったのだろうか? なぜ、アウトニア王室は壊滅の憂き目をみなければならなかったのか? なぜ、ヒロインの両親は惨殺されなければならなかったのだろうか? (むろん、実は生きていたというのもアリだが・・・。それよかだったら最初から殺さない方がましではないか?)
 士官学校時代にこてんぱんにした皇族が皇帝となり、反逆者にされてしまう主人公達。主人公の再起を信じ切ってる健気な姫様に、入り婿にお家再興からなにからなにまで任せきっておおらかに趣味に生きる王様、「婿殿よしなに・・・」とにこにこ笑いながら無言の圧力を発するお后様・・・。あと小姑あたりがいればもう、これは・・・かの名作『僕はムコ養子』の世界ではないか!
 だからこそ、あそこまでファンタジーで行くならば、そういう第二部の方が良かったのではないだろうか? 両親を、家族を殺され、母星を焼き尽くされた主人公達が血のにおいを消して第二部を戦い続けることが出来るのだろうか?(あるかは知らないが)
 というわけで、ここで評論することを避けていたのだが。
 まさか、ここまで前置きが長くなるとは思わなかった。
 ここから数行が本題である。

 その鷹見氏が架空戦記に殴り込みをかけてきた。それが学研の歴史群像新書『大日本帝国第七艦隊 1』である。
 もう、紙数がないので内容の詳述は後日に譲るが、もう、これ、最初の数ページでツボにはまった。なんと、あの、日本人の、IJNの象徴たる某が数ページであんなことになってしまうのだ。をいをい。というわけで、この調子で続くのか?と期待しつつ、近日評論アップである。はずだ。(01,11,4)


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