呆冗記
呆冗記 人生に有益なことは何一つ書かず、どーでもいいことばかり書いてあるぺえじ。

バーで見た人達

 随分と久しぶりに喫茶店『R』へ顔を出したら友人Sがカウンターで分厚い本を読んでいた。
 何を読んでいるのだ。
 「ああ、これか」
 そういって、見せてくれた本の名前は『新聞は戦争を美化せよ』とある。
 面白いのか?
 「ああ、面白い。読みたくて探していたんだが、『K』書店にようやくあったんだ」
 春の札幌はすっかり日が暮れている。というか、もう9時を廻っているではないか。それまで仕事なのか? こいつは。
 「いや、今日は7時に職場を出た。それで、アドビの『イラストレター9.0』のアカデミックパックを『a』に発注して、この本探しに『K』書店に行って、『A』書店で田中芳樹氏の『岳飛伝』出てるのを見つけて、『リーブルはにわ』で買って、ここにいるという訳だ」
 7時までって・・・。ま、人のことは言えないのだが。しかし、アドビ『イラストレター』なんぞどうするのだ? お前、イラストサイトでも開く気か?
 「仕事で、職場のサイトを作っているからな。なんだかんだで必要なんだ。操作系が揃っているから使いやすいしな」
 なんだ、公費か・・・。
 「いや、自腹だ」
 ・・・。ときどき、こいつが判らなくなるのはこう言うときである。5万を超えるソフトをあっさり買う根性・・・。判らない。

 ま、なんだかんだで呑みに出ることにした。
 「ならば、一件、いい店を見つけた。そこへ行こう」
 おや、狸小路の『R』じゃないのか?
 「最近、ビアグルメが廃止されてもの悲しいのだ。そこより『H』という居酒屋がある。札幌地ビールも飲めるし、料理もうまい」
 しかし・・・。10時過ぎに我々は『T8』にいた。
 どーして、ここまできて『T8』なんだ?
 「仕方がなかろう。10時半ラストオーダー、11時閉店ではゆっくり飲めもしない。その点ここは夜26時までやっているからな」
 確かに、最近不況で人件費をケチるためか早仕舞が多い。飲み助には辛い時代である。
 「ま、仕方がない、ここで下地作って『CE』へ行くぞ。第2回改訂打ち上げ記念だ」
 へ・・・。もう貴様の作った時間割第3版なのか?
 「ああ、教科と時間講師の連絡がうまくいってなくて1回、教科の出してくれた基礎データが間違っていてもう1回」
 あっさり言うな! それって大事ではないのか? やっぱり、こいつ、得体が知れないのである。

 で、ようやく本題に入る。久しぶりの『CE』は11時を過ぎているというのに混んでいた。
 奥の方にはカップル。中程に会社の3次会と思われる騒がしい集団。、職場の同僚、女性3人、そして我々。女性のバッグをよけてもらって椅子に座る。
 「最初はアイランド・モルトで」
 混んでいるが、最初の酒はすっと出てくる。流石である。しっかし凄く混んでいるのだ。カウンターは満席。バーテンさんは大変である。
 奥のカップルの男性は上司の愚痴を延々と言っているのを黙って女性が聞いている。愛がなければ出来ない芸当なのだろうか?
 3次会は騒がしい。少なくともBARで呑む態度ではない。女の子とキャッキャキャッキャ騒ぎたければ居酒屋へ行けばいいのだ。
 職場の同僚らしき二人はすっかりぬるくなったロングカクテルを舐めながら職場の若い連中の愚痴ばかりだ。
 で、すぐ隣の女性3人は海外旅行や趣味のガーデニングの話などしながら豪快にショートカクテルを飲んでいる。
 「こりゃダメだ・・・」
 ああ・・・。全くだ。
 私達は小声でそう言うとため息をついた。私達は性差別主義ではないつもりだが、まったくもってこの場に限定するならば、女性陣の方が遙かに優勢ではないか。
 BARの作法は現在、女性の方が理にかなっているのかも知れない。
 「寒い時代になったとは思わんか」
 Sが言う。ま、三十男がこういう事を言っているのがいけないのかも知れないが。(01,4,14)


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