やっぱり男は複雑怪奇
で、本題。
現在最もコンスタントに発刊されているのがこの『皇国の守護者』であったりする。同じ作者の『地球連邦の興亡』の主人公南郷も変人ではあるが、本作の主人公新城の変人さは群を抜く。矛盾の固まり。複雑にして怪奇な精神構造を持ってしまった男。それが主人公新城直衛なのだ。
これが実に、私のような「無能な怠け者」にはしびれるのである。
せっかく本題に入ったのに、話が脱線するが、個人的にこの『皇国の守護者』は徳間書店と佐藤大輔氏の関係の悪化によるものと考えている。勝手な憶測に過ぎないが、『RSBC(レッドサン・ブラッククロス)』の徳間から中央公論新社への移転は絶対に同じ徳間から出版されていた『地球連邦の興亡』の出版に影響を与えたに違いないのだ。
この移転劇に何があったかは解らないが、この移転を期に、『地球連邦の興亡』のテーマを、舞台を変えて実施したもの。それが『皇国の守護者』と考えられないだろうか。だとしたら、この二つの世界の根底に流れる類似性も納得できるというものだ。
この考えを補完するのが作者の書いた短編『晴れた日はイーグルに乗って』である。この『地球連邦の興亡』と『皇国の守護者』。二つの世界の原型は、この短編の中ではじめて我々の前に姿を現した。佐藤大輔氏の描き出すこれら二つの世界はこの作品の中で日の目を見たのである。
そして、その後、徳間書店との間に発生した何らかの事態によって佐藤大輔氏は、「一人の男の目から見た、よりベターな歴史を歩んだ日本と、分裂した米国との戦いを描いた仮想戦記」。『パシフィック・ストーム』を発行していた中央公論新社へ転進を決意されたのだろう。
その際、主戦力である「群像劇としてのよりベターな歴史を歩んだ日本と、ボタンを掛け違えてしまった新旧大陸による仮想戦記」『RSBC』の転進のために、『地球連邦の興亡』と『遙かなる星』は囮となったのではなかったか?
しかし、『地球連邦の興亡』のテーマは佐藤大輔氏にとって是非とも書きたいものだった。故に、大事に取っておいたもう一つの世界をもって新たな物語を紡ぎだした。そう言えるのではないだろうか?
推測の上に推測を重ねた推論だが、そう当て外れではあるまいと考えるのだ。
なんだか、本題に入る前に横道で時間を喰いすぎてしまった。
この物語に対する考察は、来月、もう一度6巻が出てから行いたいと思うのだ。
しかし、佐藤大輔氏。この作品は毎度毎度の事ですが、この引きは酷すぎます。
こんなラストを読まされたなら、早く3月が来ないかと指折り数えるしかないのである。
しかし・・・。本当に3月に発売されるのであろうなあ。
「発売されないと暴れちゃうぞ!」
(三十路男の台詞ではない)(01,2,6)