呆冗記
呆冗記 人生に有益なことは何一つ書かず、どーでもいいことばかり書いてあるぺえじ。


冴速氏襲来

 「どうしたニャ」
 電話のむこうで声がする。
 ああ、友人Tか。どうした?
 「どうしたか聞いているのはこっちニャ」
 そうだっけ・・・。
 「いいかげんにするニャ。 夜も遅くに電話をかけてきたのはそっちニャ」
 あ、そうだった。実は今日、冴速さんが札幌に戻ってきてさっきまでSと3人で『M』さんで飲んでいたんだけどな・・・。
 「ずるいニャ。ずるいニャ。どうして連絡をくれなかったニャ」
 携帯電話も持たずほっつき歩いていたのはどっちだ?
 「ま、ともかくニャ。『M』さんで飲んでなんかあったのかニャ」
 いや・・・全く冴速氏というのは・・・。

 「ほれ、冴速さん。こっち向いて」
 「なんなんだわ」
 ぱしゃ。
 『M』さんの小上がりでSが小さなデジカメを取り出すと間髪おかずにフラッシュが光る。
 「おし、これを壁紙にして末永く使ってやるんだな」
 おお、S。壁紙云々はあとでゆっくり話し合うことにして、それはキャノンのIxiではないか。金がない、金がないと言いながらいつ買ったのだ?
 「うむ、実は棚ぼたというかなんというかで手に入ってしまったんだな」
 「ほう。どうしたんだわ」
 「実は・・・」
 話が長くなるので概略を説明すると、Sの学校で見学旅行にデジカメを購入することになったのだそうである。ところが商品はIxiと決定したのだが出入りの業者に商品がない。そこで、そういうコネのあるSに商品を探す依頼が来たのだそうだ。八方手を尽くして探したところ、行きつけのPCショップ(こういう言い方が出来る奴が凄いのである)の店員さんがやっとの事で探してくれた。
 ところが・・・。その後で、「あ、あれよそで買ったから」となったのだそうである。
 残ったのは、無理いって探してもらったIxiが一台・・・。しかし・・・S。それを棚ぼたとは言わないぞ。それに・・・悪いから買ってしまったってな・・・。
 「いや、それは正しいんだわ。人間信義の問題なんだわ」
 冴速さんが大きくうなずく・・・。って・・・。私には人間信義はないのだろうか・・・。

 「で、Sさん。考えたんだわ。そろそろ我々もBAR『Y』さんに行ってもいいんじゃないかなんだわ」
 「そうなんだな」
 『Y』さんとはこの街で一番とも噂されるこの街の草分け的なBARである。私もSから名前だけは聞いている。
 「そうしないと、『Y』さんも引退してしまうんだわ」
 「我々10数年のあこがれだったんだな」
 じゃあ、これから行きますか? 冴
速さん。
 「いや、日を改めてなんだわ」
 「うむ、冴速さんの時間的余裕のある冬にでも行くんだな。なにせ大事なことなんだな」
 確かにBARは男のとって重要な場所ではあるが・・・。そこまで思い入れ出来るのだろうか・・・、この2人は・・・。

 だいたい、冴速さんが札幌に来られるか昨日まで解らなくて連絡来たのが今日の3時、滞在は月曜日まで。それで7時までにSの奴は全力迎撃体制用意してるのである。
 「それはどっちも凄い話だニャ。そうまでしてかえってくる方も、迎撃しちゃう方もだニャ」
 まったくだ。
 で、2人はそのあと、もう一件行くって言っていたのだが、私は遠慮して戻ってきたのである。
 「ああ、あのカラオケには参加したかったニャ」
 本当か? T。
 「だって、絶対特撮、アニメ縛りのカラオケ大会ニャ。あれはとっても楽しいニャ」
 はあ・・・。ま・・・今晩何時まで飲むつもりなのだ。彼らは・・・。良くやるのだ。
 「でも、僕たちも結構良くやってるニャ」
 へ・・・。
 「良くやっていなければこんな深夜に電話付き合わないニャ」
 その言い方、何か嫌だ。(00,10,14)


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