呆冗記
呆冗記 人生に有益なことは何一つ書かず、どーでもいいことばかり書いてあるぺえじ。


鮪と秋刀魚

 さて、先だってお久しぶりで久部さんと遊んでいただく機会を得た。
 なにせ、久部さんもお忙しいので、タイミングが合わないとなかなか遊んでいただけないのである。最近はせいぜい月に一度お会いできればいい方である。今年の春はまだしも暇だったのだな。そう思うことしきりだ。
 さて、今回は「ぬらりひょん」から始まった。
 「面白いものがあってね」
 お迎えにいった私に差し出されたのはなんと小さな妖怪のフィギュアだった。
 「300円のお菓子付きおもちゃなんだけどね」
 「はあ・・・」
 「海洋堂なんだよ」
 ぐああああん。
 ガレージキットの雄。海洋堂。それが「お菓子付きおもちゃ」を作る。信じられない話である。しかし、間違いなくフィギュアの底には『海洋堂』の刻印がある。
 「いやあ、出来がいいですねえ」
 確かに出来がいい。さすがは海洋堂である。
 「でしょう。六つのシリーズに彩色、墨絵、蓄光の3種類があってね。合計18種類」
 なんと言うことだ。これはもう、大きなお友達のための」フィギュアではないか。
 「これをあげよう。ダッシュボードの上に置いておくといいよ」
 「は、はい・・・」

 さて、今日の晩餐のメインディッシュは何あろう。久部さんお持たせの『一の蔵無鑑査超辛口』である。
 「和食でしょうね」
 「うーん。いくら超辛口でもフライドチキンにはあわないと思うよ」
 人生、考えない方がいいこともあるのである。
 となれば寿司と塩辛と佃煮あたりで超辛口をいただくのがいいだろう。
 寿司は久部さんのお好きな鮪である。
 「江戸前はやっぱり鮪だよね」
 それに関しては完全に同意させていただく。
 幼き日。私が大病して死にかけたときに食べたがったのが『鉄火巻き』であったとは私の知らざれる過去のエピソードである。
 それから・・・。鱒トロも捨てがたい。
 そして、サンマ?
 「大丈夫かい?」
 たしかに秋刀魚はは秋の味覚である。しかし、寿司にして大丈夫なのだろうか・・・。塩焼きにして大根おろしで戴くのが美味なのだが・・・。寿司・・・。
 「根性決めましょう」
 私は秋刀魚の寿司をかごに入れた。そのとき我々は緊張の極にあったのだろうか。
 「そう言えばうちの近くのスーパーでこのぐらいのが198円だったなあ」
 久部さんが手を25センチほど広げて言われる。
 「へえ」
 「近くの魚屋では、このぐらいのが250円」
 こんどは手を30センチほど広げて言われる。
 「・・・」
 「・・・」
 「ですか・・・」
 「秋刀魚。上杉君、一回目は真面目に通したね・・・」
 いや、稚魚の鮪が売っているのかと思ったのだ・・・。それも凄まじいイメージではある。

 そのあと、2人でしこたま飲んで、DQしたりアニメの『トライガン』を見たり、翌日ラーメン屋『M』のラーメンを喰ったりしたが、我々の頭の中には30センチの鮪が泳ぎ回っていたのだった。
 イメージとは抜けないものである。

 そして、私のボロ車のダッシュボードの上には今も「ぬらりひょん」様が鎮座ましましているのである。 (00,9,24)


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