呆冗記 人生に有益なことは何一つ書かず、どーでもいいことばかり書いてあるぺえじ。
土用丑の日に考えた
「あのなあ・・・」
Sが地ビールのグラスを傾けながら言う。
「あれは非道いのではないのか?」
何がだ? 理由はわかっていたがそう応じる。
「いや、昨日の内容だと、まるっきり俺がネズミ女好きの変○さんみたいじゃないか」
だっていっただろう? そう私は突き出しを頬張りながら答える。
思わずエンディングに涙ぐんでしまったこと。FF7のエンディングよりよかったこと。ずさんなすりあわせ、黒魔導士はDG細胞。フレイアが一番いじらしいキャラクター。
これ、全部、お前の意見だよな。
「それはそうだが・・・。何で文章化するとああ、変○さんみたいな表現になるんだ?」
「実際変○さんだからニャ」
「あのなあ・・・」
今日は土用丑の日。9時半過ぎ。今年の夏を無事に乗り切るために、ウナギを『K』さんに食いに来たのである。天然ウナギ。一年に1回の(去年は2回食えたのだが)美味である。しかも時間は少しずらしてある。6時からの第一陣。7時半頃からの第二陣をかわした完璧なセッティングだ。
しかし、そうまでして鹿肉ステーキに固執するか? T。
「しかたがないニャ。ま、ここははっきり上杉のサイトに出ているTやSはあくまでも我々をモデルにした架空の存在と思う方が気が楽ニャ。だいたい僕はそんなにニャアニャア言っていないニャ」
そうか? T。
ま、ややこやしい事は抜きにしてウナギである。
「ウナギだ。ウナギ。これ喰ってから、俺はウナギが嫌いになったんだ」
ほう、どういう意味だ?
「いやな、このウナギを食ってからスーパーのウナギがどうしてもゴムのような舌触りで喉を通らないんだよ」
「美味なものを食べたが故の不幸というわけニャ」
振って悪いが、俺はひたすら喰わせてもらう。ウナギと天麩羅は腹を空かせてあっという間に食わねばならないのである。
「だから、池波正太郎氏にかぶれているって」
正しいことは正しかろう。しかし、ウナギにお前が選んだ特別酒ではすこし腰が弱くないか? S。
「うむ、年に1度の贅沢だから、『K』の特別酒をあわせたのだが・・・。確かにウナギの脂に負けているな・・・」
はあ、喰った喰った。ふっくらとしたウナギは非常に美味であった。満足満足。ふふふふふ。なんだかエネルギーの充電ができたみたいだ。
「その腹に半年分貯まっているニャ」
おのれ、T。言いたいことをずけずけと。8月からダイエットを行うのだ。モンクあるか?
「何回目だ?」
えーい。ダイエットと禁煙はとっても簡単なのだ。それが証拠に、私は何度もしているぞ。
「マスター、あの『水鶏』ってなんですか」
あ、聞いてない。
「へえ、珍しいニャ。アワビの代わりに名古屋コーチンを使うのかニャ」
確かに美味である。軽く湯引きしたコーチンがだしに沈み、針生姜と一緒に口にする。
旨い。いやあ、生きてて良かった状態である。
そういえばあわびの『水貝』も喰ったことがないんだよな。
「へえ、8月5日、瀬棚でアワビ祭りですって? それはいいなあ。朝3時に出たら安く買って帰ってこれるかな?」
その日、予定はどうなっていたであろうか? なんだったら買って来て『水貝』を喰ってみるか?
さてさて、最後は・・・。お、めじまぐろがあるではないか。
へ、ないの・・・。ああ、そうか土用丑の日で千客万来。めじまぐろは品切れかあ・・・。じゃあシマアジください。
めじまぐろでしめることしか考えていなかったのでこういう表現になったが充分にシマアジも美味しいのだ。
というわけで希少な美味である天然ウナギと水鶏、シマアジの刺身と日本酒3合、地ビール1本でしめて1万円コース。
うーん。30代の飲食費にしては贅沢すぎるかも知れないが。たまにはいいであろう。たまには。しかし、あんまり幸せで何にも考えられないなあ。まったく。だから今回の本当の題名は土用丑の日に考えないなのかもしれない。(00,7,30)