呆冗記 人生に有益なことは何一つ書かず、どーでもいいことばかり書いてあるぺえじ。
長男について考えた
さて、このたびめでたく田中芳樹氏の名作『夏の魔術』が徳間から講談社に出版社を移して加筆修正されて出版された。これはもう、非常にめでたいことと言えよう。暇さえできたら、この加筆修正部分をすべて調査し、その作者の中での変化をとらえたいと考えたりするのだが、たぶんしないであろう。最近、本当に根気が続かないのだ。
ま、それはともかく、この名作の講談社版なのだが、表紙を見て一言。
「らいむが幼い! 公平兄ちゃん高校生かよ・・・」
であった。小学3年生でも通るぞこのらいむ。確からいむは11歳の小学5年生ではなかったのか。少しばかり今回のイラストは幼すぎ、男の子っぽすぎといえるのではないだろうか。
それとも、そういう作者の依頼だったのかもしれない。となるとどこが改訂されたかを明らかにするのは更に興味をもって行えると思うのだが・・・。おーいS。夏休みあるのだろう。暇だったらやってみないか?
以上、前振り。(最近多いか?このパターン)
さて、今回対象にしたいのは田中芳樹氏における長男の扱いについてである。これはまずもってまともな長男がいないのだ。唯一の例外は『創竜伝』の始氏だが、これは明確な例外とできるので除外する。なぜならば彼は長男以前に家長なのだ。
では、どんな長男がいるかと言えば・・・。
『アルスラーン戦記』、
アンドロゴラスの兄貴。(名前失念)父親に女房寝取られるは、最後にギスカール殺しをアンドロゴラスに遺言するわ、ろくなものではない。
『西風の戦記』。
猜疑心から弟二人殺しまくった親父も長男なら、責任回避して僧院に入ってしまったのもまた長男。ろくなものではない。かたや、レオン・パラミデュースは次男坊である。
『ドラよけお涼シリーズ』
にいたっては準一郎氏のお兄さんは死んでいるのだ・・・。
そして、この『夏の魔術』という作品にも二人の長男が出てくるが、二人ともやっぱりろくなものではない。
かたや主人公公平兄ちゃんの兄貴。『大いなる打算』で公平の遺産相続権を奪ったとされるが・・・。自分は親の期待を背負って必死こいて努力しているのに、次男坊は好き勝手をしようとしている。これをあたたかく見守れるほど人間すべてが出来ているだろうか? いやそうでないに違いない。
それをああいう書き方をされては立つ瀬がないのではないか。
しかも、すべては公平兄ちゃんの主観である。もしかしたら、最後まで悔い改めなかった弟が可哀想で目を合わせられなかっただけかもしれない。そうじゃないかな。ちがうかな。たぶんちがうんだろうな。
もう一人の兄貴はらいむの伯父さんの和彦さん。らいむの本当の父親で、良彦の奥さんの玲子さんを寝取ったとんでもない奴って・・・。でも、最初に付き合っていたのは和彦&玲子だったわけだ。それを後から来た良彦が奪ったのではないか? それでいて和彦ばかり悪人にするのはどうかと思う。この場合、玲子さんの責任の所在はどこにあるのだ。ま、たしかにね。ひとのよめさんとかんけいするのはどうかとおもうけど。
ここまで長男を情けなく、ろくでもなく描く作者の兄弟構成は、果たしてどうだったのか? これは結構興味深い問題定義になるのでは。
そう、弟誕生時に母親から
「弟には決して手出ししてはならない」
そう言われて以来、三十余年。弟に迫害されまくっている長男は考えるのだった。(00,7,10)