呆冗記
呆冗記 人生に有益なことは何一つ書かず、どーでもいいことばかり書いてあるぺえじ。


自転車屋で考えた

 さて、実はボーナスでどうしても欲しかったものがある。それは真新しい自転車だったのだ。ドロップハンドル、15段変速機。クローム・モブリデンのフレーム。昔、丸石ロードマンのグレードの上の方にこういう車があり、実に欲しかったのだが・・・。結局新車は買えなかった。
 ま、それには間抜けな逸話がある。
 初代の自転車はタケダの16インチだったはずだ。ゴム製のぱふぱふ鳴るベル? のついた青い自転車である。黄色い補助輪も格好良かった。これには補助輪を外してずいぶん長く乗っていたような気がする。で、次が24インチの5段変速機付きのスポーツ車もどき。これはせっかく買ってもらったのに本屋で買い物をしているときに鍵を壊されて盗まれた。そのあと、しばらくは父親のさび付いた丸石の26インチ実用車に三角乗りして乗っていた。
 1年もそうしていただろうか。再び26インチのスポーツ車もどき。ディスクブレーキに5段変速、スピードメーター付。ベルは青。こいつはワイヤーキーまで付けていたのに、再びブチ切られて盗まれた。
 以後、私は新車にあたっていない。ま、2回も盗まれたなら当然である。
 次に当たったのがあこがれのドロップハンドル。でも、中古である。最初は黄色の廉価版ロードマン。スチールフレームの重い奴。一応10段変速。高校の通学の足はこれだった。この車は手入れも悪かったのかあちこち傷んで結局廃車。その後が緑色のロードマン15段変速。これはかなり長く乗ったが現在は家の裏でタイヤが腐ってしまっている。
 というわけで今度こそ。新車のドロップハンドルだ! とばかりに自転車屋へ行ったのだが・・・。

 「ドロップハンドル車って幾らぐらいするんですか」
 そう聞く私に店の親父さんは修理中の自転車から顔をあげたのだった。
 「今の季節、ドロップハンドルはないよ」
 へ・・・。いつから自転車は季節の商品になったのだろうか?
 「お客さん、ロードマンとか、そういう時代でものを考えてるだろう」
 口調が典型的な職人オヤジである。
 「いまは違うんですか?」
 「ああ、MBTが主力だからね、ドロップハンドルは春に少数生産しておしまい。ほとんど受注生産だな」
 「なんてこったい・・・」
 カタログを見せてもらうと完全なキャンピング車や趣味の街乗り用、ひたすら細いタイヤにライトすらついていない競輪選手がアドバイザーの何に使うのか悩んでしまう自転車しかない。しかも高いのだ。5〜6万してしまう・・・。いや、金額はどうでもいい。物がないのだ・・・。
 「ま、今、あんたの言う『普通』のドロップハンドル車の国産はほとんどないな。輸入車扱ってる店に行ってみたらどうだ。高いだろうがな」
 そういうとオヤジは再びMBTに向き直った。
 時代は変わる。確実に変わっている。しかし、自転車がこうも変わるとは。何となく歳を感じてしまう出来事だった。
 しかし、自分がMBTに乗るイメージがどうしても沸かないのはどうしてだろうか? 食わず嫌いしないで乗ってみるのもいいかも知れないのだが・・・。どうもいまいち乗り切れないのだ。(00,7,3)


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