呆冗記
呆冗記 人生に有益なことは何一つ書かず、どーでもいいことばかり書いてあるぺえじ。


酒を飲んで考えた

 記念すべき100回目なのだが、あんまりめでたくない。ちょっと個人的な話になる。いやはや、ちょっとばかしショックだったのである。
 私は、今の会社に今の仕事をするために入ったのではない。きちんと別の仕事のために入ったつもりなのだが、前任のきちんと資格を持った者が退職。そのあとをなし崩しに私がやっている。むろん、私以上に適
格者がいるにも関わらずだ。
 うまくいって当たり前。うまくいかなかったり、既得権益を侵すようになればブーイング。外注は文句をたれ、停年間近も文句たれ・・・。わあああああ。
 というわけで、今日も今日とて土曜日なのに、カロリーメイト囓りながら、
職場の先輩(1児の母)に愚痴るともなく愚痴ったのである。
 と・・・。
 「でもねえ、上杉君。会社はあなたの給料、今の仕事に払っているんだと思うけどな」
 これにはがーんときた。
 「上杉君、何年現場離れてる?」
 今の職場に来てひのふのみ。よおいつむうなあやあ。

 わあ、もう、こんなになるのか。転職したときはまだ20代中盤の美少年だったのに・・・この職場でついたのは、米袋二つ分の脂肪だけ・・・。
 「現場戻って、ばりばり出来る?」
 う・・・それは・・・。出来ると思いたいが・・・出来ないかも知れない。
 「ま、気持ちは解らないではないけれどね」
 うう・・・。そんなあ・・・。

 というわけで暗い気持ちで夕方帰宅。汚い部屋に転がっていたら、Tから電話がかかってきたのだ。
 「上杉、今日は空いてるかニャ」
 なんだ、どうした。明日は日曜出勤なので、久部さんに遊んでいただけないので空いているぞ。
 「そうか。実はSがなんと3回目の『ビアグルメ』になるニャ。そこでお前のWEBサイト1周年も兼ねて飲み会をやるニャ」
 飲み会って・・・一昨日やったばかりだろうが。
 「飲む理由があるのに飲まないのは酒に対して悪いニャ。だから飲むニャ」
 お前なあ。一番弱いくせに。そー言うこというのな。
 ま、これ以上部屋に転がっていてもしかたがないので、狸小路の『ライオン』まで出ることにした。

 店に行くと案の定、Tはまだ来ていなかった。
 隅っこの席にSがソーセージ盛り合わせとビールを前に本を読みながら座っている。
 「よお・・・」
 それだけ言うと再び本に眼をおとす。
 なんとそれはシステムアドミニストレターの参考書ではないか。
 「ああ、この秋に受験しようかと思っているんだ」
 って、お前、日本史の教員じゃないのか? それが何でシスアドを・・・。
 「職場が要求してるからな・・・。ま、嫌いではなし。資格はとっておくに越したことはないだろう」
 歴史はどうするんだ?
 「続けるぜ、好きだからな。可能な限り担当できるように努力もしていく。今日も今日とて『阿部謹也著作集 8』や吉川弘文館の『歴史文化ライブラリー』は買っているし、趣味で続けるという手段もある」
 そういうもんかな・・・。
 「そういうもんだと思うぞ」
 しばしの沈黙。しかたがないのでビールを注文した私も買ってきた本を読む。端から見れば異様な風景と言えよう。

 「悪いニャ。遅くなったニャ」
 遅いぞT。しかし、いつものことだな。
 「さて、始めるか」
 そういって本を鞄にしまう。しかし、ということはさっきの大ジョッキは何だったんだS。
 「お、シスアドの解説本ニャ。受けるのかニャ」
 「まあな・・・給料分は働かないとならん。そっちの方に給料を払っているつもりなんだろうからな。職場は。5年も日本史から離れていた俺並の日本史教員ならいくらでもいると踏んでいるのかもしれん。」
 「そうか・・・。でも、趣味が身を助けたニャ」
 趣味にしか走っていない貴様のいう台詞ではないであろうが。それに、趣味のおかげでしたい仕事が出来ないのではないのか?
 「違うニャ。趣味のために給料分だけ働くニャ。それが正しい生き方ニャ」
 「うーむ。それが真の趣味人の生き方かも知れないなあ」
 いいのか? 本当にそんな生き方でいいのか・・・。
 何となく腑に落ちないまま、その夜は痛飲してしまった。Sも無事に前人未踏、3回目のビアグルメを達成したのだ。
 しかし・・・。その後、酔った勢いで『ダークエンジェル愛蔵版』全3巻を衝動買いする人間がこんな事言える台詞ではないかも知れない。
 「上杉が一番趣味人の生き方を実践しているニャ」
 否定できない・・・。(00,7,1)


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