呆冗記
呆冗記 人生に有益なことは何一つ書かず、どーでもいいことばかり書いてあるぺえじ。


マ・クベ閣下に捧げる・・・

 塩沢兼人氏が5月10日未明、お亡くなりになられた。謹んでご冥福をお祈り申し上げたい。まだ46歳の若さであったという。本当に惜しい方を亡くしてしまった。
 塩沢氏は三枚目もできる一枚目であったと思う。すなわち、冷酷非情な悪役ができながらなおかつ三枚目を演じることができる。もしくは冷酷非情な悪役であってもどこかに諧謔味を持つことができる。これは希有の才能であったのではないだろうか?
 塩沢氏の悪役の格好良さを継ぐことのできる若手声優は数多い。しかし、ここに諧謔味を持つことができる声優諸氏は寡聞にして聞かないような気がする。
 だから、塩沢兼人氏といえば、私にとっては単なる熱血主人公のライバル(彼をこう呼ぶと語弊があるかもしれないが)としてのダンクーガーの司馬亮よりも、ガンダムのマ・クベ閣下なのである。勝利のためならば核すら平気で使用する冷酷さを持つ彼が、美術品である壷を偏愛する面白み。それは塩沢氏でしか表せなかったのではないだろうか。
 その延長に、銀河英雄伝説のオーベルシュタインがいる。ラインハルトの覇道のために権謀の限りを尽くし、最期には自らをも道具としてラインハルトに捧げた男。キルヒアイスを間接的にせよ殺した非情な男。しかし、彼は老犬を養い、彼のために鶏肉を求めるような優しさと諧謔味を持った男でもあった。
 可能ならば、R田中一郎についても評論を進めたいところだがこれは私の任ではあるまい。おそらくは久部さん。久部真さんが、なさる仕事だと思う。よって、私はもう一度塩沢氏のご冥福を祈ってパソコンの電源を切りたいと思う。
 現在、この世にヤン・ウェンリー亡く、そして、オーベルシュタインも逝く。この世はだんだんと面白みを失っていくのではないだろうか。
 しかし、この第2期の50回も残すところ約20回。5分の3を終えて、このまま訃報を聞かされることはあるまい。与太話だけで50回を終わらせることができると考えていたのだが。残念である。
 五月の風はまだまだ冷たい。(00,5,12)


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