呆冗記
呆冗記 人生に有益なことは何一つ書かず、どーでもいいことばかり書いてあるぺえじ。


なごり雪

 春が近い。仕事が忙しい。そのうえ風邪をひいた・・・。風邪をひいたおかげで気が弱くなっている。何でも悲観的になっている。
 ああ、倉庫の梁がなんと魅力的に見えることか・・・。ディルバートにおける転職の時期かもしれない。(バスの中で職場に行きたくなくなったり、ベッドで職場に行きたくなくなったりしているうちはまだOK、首を吊ったら転職する時期という3コママンガである)
 「だから、上杉さんが首吊ったら倉庫が壊れます」
 うるさいぞ、後輩N。

 しかし、春である春となれば日本人の感性にしみる歌がいくつかある。イルカの『なごり雪』など、その最たるもののひとつであろう。女は美しくなって古い男の前から去っていくのだ。その男に思い出だけを残して。
 そう・・・あの時もそうだった。彼女はにっこりと笑い
 「さよなら、上杉君」
 そう、言うと颯爽と東京行きの飛行機の人となった。そうして今は神奈川で幸せな(そうでないとこちらの立つ瀬がない)2児の母をしているという。まあ、高校時代のほろ苦い思い出である。そのとき、帰りがけの汽車の中、AIWAのチューナー付きカセットボーイで聞いたのが『なごり雪』だった。
 彼女は、私の見た最高の笑顔で新天地東京へと向かっていった。
 1回目の大学受験を失敗した私は彼女を追いかけることも、彼女に行くなと言うことも、東京に行っても恋人でいようと言うこともできなかった・・・それだけの話だ。
 いまごろFMでかかる『なごり雪』は心に染みる・・・。はずだった。

 先日、昼食時にFMで『なごり雪』がかかった。
 「いやな歌よね」
 そう言ったのは職場の先輩(1児の母)である。
 「へ・・・?」
 「男はね、女に選択をまかせるのよ。そうして、自分が振られたようにして、女を悪者にするのよ」
 先輩はえいやっとばかりに幼稚園の息子と、旦那さんのお弁当と同じたこさんウィンナーに箸を突き刺した。(時々足が6本や7本しかないタコさんやカニさんがいるのは秘密である)
 「はあ・・・? この歌って、女の人が新しい男か目的作って綺麗になって、古い男を振る歌なんじゃないですか?」
 「はん」
 先輩は私をねめつけたのである。
 「上杉君も男だねえ、女はね、勝負に出てるのよ」
 そこで遠い目をする。
 「いつまでも煮え切らない男に対して勝負をかけているのよ。最高の笑顔でね」
 「・・・」
 「まったく、男って奴は女心がわかってないんだから・・・
 先輩のけがフェードアウトし、私はかじりかけのカロリーメイトを前に呆然としていた。
 まさか・・・まさかである。

 しかし・・・たぶん・・・私の事例については私が正しいと思う。自信はあるぞ。(泣)(00,3,9)


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