アンカラ
(1992年4月24日)
車窓より
車窓からの眺め


    目が覚めたときには、外はすでに明るくなっていた。
    見渡す限りなだらかな緑の平原が続く。
    寝そべったままぼんやり外を見ていると、ノックの音がして車掌さんがベットを片付けに来た。
    あの車掌さんに髪も梳いていない寝起きの姿を見られてしまうとは…。
    そんな私の嘆きをよそに、列車は定刻通り8時頃、アンカラに到着したのだった。

    Tさんのアパートは閑静な住宅街の一角にあった。窓からは赤い屋根のアンカラの町並みが見える。
    いわゆる3LDKで、ひとりで住むには広すぎるのでは…と思ったが、こちらにはワンルームマンションなどというものはないらしい。それに家賃は驚くほど安いそうだ。
    ここにきて時差ボケがぶり返した私は、今日は休ませてもらうことにした。
    大学へ手続きに行ったり、就学ビザの交付を受けに行ったりと忙しいTさんを尻目に、Tさんのベッドを占領して爆睡していたのだった。

◇◇◇◇◇

    起きたのは午後だいぶ過ぎてから。
    教授の家のティーパーティに行くというTさんに誘われて一緒に行くことになった。
    部外者の私がお邪魔していいか心配だったので聞いてみると、トルコ人はホスピタリティが豊かだから大丈夫だよとの答え。
    その言葉通り、あたりまえのように歓迎してくれた。
    トルコ語がわからない私のためにみんな英語で話してくれたので、お茶をいただきながら和やかに歓談。
    教授の親戚らしい若いご夫婦の奥さんが私に年をきいてきたので答えると、怪訝そうな顔で「How old are you?」と再度聞いてくる。
    私が質問の意味を取り違えたと思ったらしい。もう一度答えるとびっくりした顔になる。
    彼女は18才。絶対年下だと思い込んでいたようだ。
    日本人は子供っぽく見られると言うが、ほんとにそうみたいだ。

    アパートに戻って、夕食はTさんの手料理をごちそうになった。
    Tさんが作ってくれたのはトマトとチーズのサラダと先日の残りというシチュー。
    Tさんの語学学校の友人(日本人)も来ていて、3人での食事だった。
    彼は明日からシリアに行ってくるという。
    トルコではビザがないと3ヶ月しか滞在できないが、一度国外に出ればまた3ヶ月いられる。
    彼はそれを利用してもう1年以上トルコにいるそうだ。
    この前はシリアに2時間いて帰ってきたけど、今回はどうしようかなあなどと言っている。
    トルコでの生活のことなどを取りとめなく話すうちに、明日に備えて彼は帰って行った。

    さて、問題はお風呂だった。
    ちゃんとバスタブのある広い浴室があるのだが、この日はお湯が出なかったのだ。
    アンカラでは断水がしょっちゅうで、水を貯めておくタンクは必需品だとか。
    しょうがないのでキッチンでお湯を沸かして浴槽に運ぶことにした。
    ヤカンや鍋を駆使して沸かしたお湯を浴槽まで何往復も運び、少しづつ水で薄める。
    かなり時間はかかったけれど、なんとかお湯につかることができた。
    もっとも広い浴槽の中は寒くて、のんびりお風呂を楽しむ訳にはいかなかったが…。

    外国暮らしにはやっぱりいろいろ苦労があるのだった。


アンカラ
アパートの窓からの眺め

(4/24終)

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