シチリア旅行記
(2004/04/27〜05/06)


2004/05/01(Sat) アグリジェント観光

ホテルで朝食を取る。
パンにバターとジャム、クラッカー、大きなポットたっぷりのカプチーノ。
ほんとにたっぷりでひとり3杯注いでもまだ余った。

今日はアグリジェントの遺跡を中心に観光する予定。
その前に、まず旧市街にあるサント・スピリト教会へ行く。
9時開館なのに時間を過ぎても開く気配がない。今日はメーデーだから休み?
10分くらいまで待って開く気配がなかったので帰ろうとしたら、近くの家のドアから出てきたお婆さんが「Spirito?」と聞いてきた。
うなずくと「ちょっと待て」と家の中に消える。ひょっとして管理人さんだろうか。

やがて出てきたお婆さんは、大きな鍵の束を持っていた。
教会の大きな扉を開け、中に入れてくれる。
薔薇の咲く中庭の向こうに小さな礼拝堂があった。
内部は簡素な作りだが、祭壇の周囲はスタッコ細工で飾られ美しい。
横にある修道院の一室には、昔のアグリジェントの町のミニチュア模型があって、昔の暮らし振りが人形でほのぼのと描かれていた。
私たちが見終わって教会を出ると、お婆さんはまた門に鍵をかけた。
やっぱり今日は休みだったんだ。
お婆さんに出会えてラッキーだった。
サン・スピリト教会
サン・スピリト教会

駅前のバス乗り場から2番のバスに乗る。
博物館前で降りるつもりだったのに、バスは通り過ぎてしまった。
あわててその先の「神殿の谷」でバスを降りる。予定を変えて先に神殿の谷を見よう。
バス停周辺は駐車場になっていてトイレや売店もある。
ここの売店で遺跡の地図を買う。
バス通りを横切り、チケット売り場で博物館との共通券を買おうとしたら、窓口のお姉さんに「今日は博物館は13時までよ」と言われる。
現在、時刻は10時。
今から博物館まで戻るのは面倒だし、時間に追われながら遺跡も慌てて見るのも…。
しかたなく博物館はあきらめることにした。

入口からエルコレ神殿の柱が見えている。
エルコレとはヘラクレスのこと。アグリジェントのドーリス神殿では最も古い紀元前520年の建造で、8本の円柱だけが残っている。
かつてはファサードに6本、側面に15本の柱が並んでいたそうだ。
柱だけでもその姿は堂々としている。
きっと「ヘラクレス」の名前の通り、勇壮な神殿だったのだろう。
エルコレ神殿
エルコレ神殿

エルコレ神殿の柱につられて歩いて来てしまったけれど、地図を見ると駐車場の向こう側にも遺跡がある。
先にそっちを見たほうがよさそうだ。
再びバス通りを渡り、駐車場の向こうへ。
最初に目に入ったのは瓦礫の山。
ここにあったジュピター神殿(ジョーヴェ・オリンピコ神殿)は、完成前にカルタゴに破壊され、その後の地震によって廃墟になったという。
完成していればギリシア建築で最大級の規模だったそうだ。
一角に8メートル近い巨人の像が無造作に横たわっている。
これは神殿の柱の一部。
崩れ果てたその姿は、昔見たアニメ映画「ラピュタ」の巨神兵の残骸を思い起こさせる光景だった。

ジュピター神殿の瓦礫を抜けると、その向こうには赤いポピーと黄色いクリサンセマムの花が広がっていた。
周囲には大小さまざまの神殿の基部が残っている。
その一角にたたずむのがカストル・ポルックス神殿(ディオースクリ神殿)。
神殿の角の部分の4本の柱のみが修復されて残っている。
ディオースクリ神殿
ディオースクリ神殿

この辺りからは見晴らしがよく、アグリジェントの旧市街とその向こうの新市街のビル群を見渡すことができた。
遺跡の背後に高層ビルが見えるというのは変な感じだ。
ローマのように古代と現代が共存しているという感じではなく、もっと唐突に二つの時代をつぎはぎしたような感じ。
この遺跡が現実なのか、あのビル群が現実なのか、わからなくなってしまう気がした。

駐車場まで戻って、売店でジェラートを買った。
12種類ほどの中からレモンとピーチのジェラートを選ぶ。さっぱりした甘さで美味しかった。
ジェラートを食べながら神殿の谷の遺跡を結ぶSacra通りを歩く。
さっき見たエルコレ神殿は通り過ぎ、さらに10分ほど歩くと、この神殿の谷で最も保存状態のよいコンコルディア神殿が現われる。
「コンコルディア」という名前は付近から発見された石碑に由来し、「平和」「調和」を意味する。
紀元前450年頃、ディオスクロイ神に奉献されたものと推定されている。
前面6柱、側面13柱がほぼ完全な形で残っている。
当時は鮮やかな色の漆喰が塗られていたそうだ。ちょっと想像できない。
6世紀末頃にはキリスト教の教会として使われていたため、保存状態がよいそうだ。
コンコルディア神殿
コンコルディア神殿
さらに15分くらい歩くと高台の上にヘラ神殿が見えてくる。
ここがちょうど神殿の谷の東端。
神殿に続くの坂道を登る途中、振り返るとコンコルディア神殿やエルコレ神殿が下のほうに並んで見えた。
「神殿の谷」と呼ばれるだけあって、ここは神殿だらけだ。
神殿の谷
ヘラ神殿のある丘から見下ろす

坂を登りきると、頂上にヘラ神殿(ジュノーネ・ラチニア神殿)がそびえている。
その向こうには遠く青い海を見渡すこともできて、眺めは抜群だ。
数本の柱と基盤のみが残るこのヘラ神殿は、紀元前406年のカルタゴの侵攻で炎上し、さらに中世の地震で全壊してしまった。
人災と天災と。
過酷な歴史をたどったこの神殿は、2000年経っても変わらぬ海の青さを見つめているようだ。
ヘラ神殿
ヘラ神殿


Sacra通りを戻り、途中から北にのびる遊歩道を歩いた。
ここをまっすぐ行けば考古学博物館のあるヘレニズム・ローマ期地区の遺跡方面に行けるはずだ。
道は一本道で両側には紫色の花が絨毯のように広がっている。
道はゆるやかな登り坂になっていて、振り返りながら歩くと段々と景色が広がっていく。
坂を登り切ったところから振り返ると、神殿の谷のパノラマが素晴らしい。
壊れかけたベンチがあったのでここでちょっと休憩。
このあたりには黄色い花が一面に咲き乱れていた。
やがて国道が見えてきた。
でも、国道に続く門は閉まっていて鍵がかかっている!
どうしようと思っていると、向こう側にいた人が横の金網を指差す。そこには人がひとり通れるほどの破れ目が…。
とりあえずそこから出てみたのはいいけれど、ヘレニズム・ローマ期地区の門も閉まっている。
地図によると、さっきの遊歩道から直接遺跡へ行けるようになっているので、もう一度金網をくぐり、遊歩道に戻ってみると遺跡に通じる道を発見。
無事(?)遺跡内に入ることができた。

こちらは紀元前4世紀からから7世紀末まで人が住んでいた地区。
整然とした町の遺構から、しっかりした都市計画によって築かれた町だということが感じられる。
床は美しいモザイクで飾られていたらしい。
比較的きれいにモザイクが残っているところは、プレハブの小屋に囲われて保存されている。
その模様は繊細で美しく、この町はとてもきれいな町だったんだろうな〜と思った。

ヘレニズム・ローマ期の遺跡

いつのまにか見渡すと敷地内には私達以外誰もいなかった。
ふたたび金網をくぐって外へ。
それにしてもこの金網の穴がなかったら、私達はどうなっていたのだろう?

国道をはさんで反対側にはサン・ニコラ教会と考古学博物館がある。
サン・ニコラ教会は13世紀建造のゴシック・ロマネスク様式の教会。
その隣に円形劇場後があり、その奥が考古学博物館になっている。
どちらも今日の午後はお休み。
バスを降り損ねなければ見れたのに…と思うとちょっと悔しい。

劇場後と博物館

さすがに午後になると暑い。
バス停から100メートルほど先に見えていたカフェに入って休憩することにした。
中庭の日陰のテーブルに座り、ナッツ入りのパンとババとエスプレッソと注文。
ババはサバランのようなお菓子でナポリの名物。酔っ払いそうなくらいラム酒が効いていてしっとり柔らかくて美味しかった。
のんびり食べながら絵葉書を書いたりしていたら、ここでハプニングが!
飛び立った鳩の糞がAさんのシャツにかかってしまった。
おしぼりを持って来てくれたお店の人は「君は運がいいからロトが当たるぞ。何か数字を言ってみてくれ。」などと言う。
深刻にならないのがイタリアのいいところなんだろうけど…。

陽が傾き暑さも和らいできたので、バスで町に戻った。
しばらくホテルで休憩。(Aさんはシャツの洗濯。)
夕方涼しくなってから町を散歩した。
夕食は昨日とは違うトラットリアへ。時刻は7時くらい。
ちょっと早いせいかメーデーのせいか、あまり開いているお店がなく、唯一開いていたお店に入った。
プリモにゴルゴンゾーラとピスタチオのパスタと海の幸のリゾット、セコンドに「Scaloppineのマルサラ風」、サラダ、もちろんワインも注文。
プリモはどちらも美味!
日本でも同じようなゴルゴンゾーラのパスタを食べたことはあるけれど、断然こっちのほうが美味しい。
海の幸のリゾットはムール貝、あさり、海老などがいっぱいで潮の香りがたっぷり。
次はセコンド。実はScaloppineが何なのかわからないまま注文。
出てきたのは一見普通のお肉。とても柔らかくて、あっさりした牛のような、柔らかい豚のような…。(日本に帰ってから調べて、仔牛のことだと判明しました。)
こちらもとても美味しかった。
サラダも美味しかったし、デザートはジェラートと生クリームのかかったいちご。
これまでの食事で一番の大満足。
「Manhattan」という名前のこのお店、オススメです。


ゴルゴンゾーラのパスタ(奥)
海の幸のリゾット(手前)

Scaloppineのマルサラ風

(5/1終わり)

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本日の出費(2004/05/01)
サン・スピリト教会
2.5ユーロ
バス(2枚)
1.8ユーロ
神殿の谷
4.5ユーロ
ジェラート
1.8ユーロ
昼食
4.8ユーロ
夕食(トラットリア)2人分
34.0ユーロ
ホテル(2泊)1人あたり
67.0ユーロ