第八話
はっ、寝てしまった……。
いや、すまん。あまりに気持ちいい天気だったもので、ついウトウトとなってしまったんだ。
「春眠暁を覚えず」という言葉がある。
温かい春の時期は、実に眠気を誘うものだ。
寒い冬が終わって、春が一番暖かさを感じられる季節なんだからと思う。
お天道様にポカポカと照らされていると、心まで落ち着いてきて、ゆったりとしてくる。実に気持ちいい。
朝の鳥たちのさえずりが収まった頃。ちょうど温かくなり始める頃の時間であろうか。俺はその時間が好きだ。
なんだか、時間も、空気も、みんなのんびりしている。
遠くから聞こえてくる布団を叩くはたきの音を聞きながら、丸くなって寝るのが俺の至福の時だ。
寝るときは車の上が一番良い。車の屋根はいつまでも温かいから、寝るには最高の場所なのである。あんたも一度車の上で寝てみるといい。きっと病みつきになるだろう。
が、ふと気付くと前足に鳥の糞がついており、俺の黒い毛の上で嫌がおうにも目立っているわけである。目覚めのすがすがしさはぶち壊しだ。
どこのどいつだ、こんちくしょう……。
おしまい……
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