あれは本当に星の綺麗な夜だった。
満天の星空とは、あのような夜を言うのだろう。一点の曇りもない真の闇の中に満ちた、あまたの星達。
大きい星、小さい星、明るい星、暗い星、形の整った星、歪(いびつ)な星。
星は無限に存在しながらも、それでいて同じ形の物は一つとしてない。
星空は果てしなく続いている。
じっと眺めていると、いつしか吸い込まれてしまいそうな感覚を覚えた。
どこまでも広がる宇宙を前に、俺の身体は何とちっぽけな物だろうか。
だがそれは、俺がこの星に住む動物であるという証でもあった。
無限に広がる宇宙に、数限りなく浮かぶ星の一つの上を、小さな俺は四本の足で立っているのだから。
ちょうどその日の一番星が輝き始めた頃、俺は重じいさんにこんな話しをした。
夜空に輝く星は、人間の魂の生まれ変わりだそうだと。
もちろんこれは人間からの受け売りだ。
俺の話を聞いて、重じいさんは「ふぉふぉ」と表情を崩しながらこう答えた。
「人間の魂だけが星になるのは、不公平なことじゃて。儂ら動物の魂は、死んだら何処へ行くのじゃろうか」
重じいさんの言葉に、俺は答えに窮した。
自分の魂が死んだらどうなるかなど、考えたこともなかったからだ。
俺が頭を悩ませていると、重じいさんは星を見上げながら、呟くようにこう言った。
「あの輝きはな、星自体の輝きなのじゃよ。生きとし生ける物すべては星に還り、その輝きへと戻る。そして星は、自らの輝きを新たな生命に与えるのだ。儂はそう思いたいのぉ」
重じいさんの言葉は、まるで星に語りかけている様であった。
まさに目から鱗が落ちるような言葉だ。
なんてスケールが大きくて、神秘的な言葉であろうか。
星という大きな生命の中で、あらゆる動物や植物は輪廻転生を繰り返し、輝きを生み出している……。
だから俺は、星を見たくなった。そして、感じたくなったのだと思う。
今回は、星の話しをしようと思う。
第四話
と思ったのだが、俺は星をよく見たくて高い木に登り、降りられなくなっていたのであった。
まただよ、畜生ぅ……。
おしまい……
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