エンタープライズクラウディアIII号星へ到着した。機関部のジョーディからしばらくワープエンジンを止め、リューテリアム・コンジットの調整をしたいと連絡が入った。クラウディアIII号星はガス状の雲に覆われ、快適な環境とは思われなかった。「君主をこんな惑星に送るなんてダレド人は変わっている」とトロイが感想を述べた。はきっと彼らにも何かの事情があったのだろう。
惑星から通信が入った。惑星を覆う雲が原因で映像は入ってこない。声の主はアーニャと名乗り、「サリアを迎えに来たのか」と訪ねてきた。ピカードが「そうだ」と答えるとアーニャはピカードたちの種族が人間であること確認し、すぐ転送するよう命令口調で言った。
しばらくして転送室にアーニャとサリアが転送されてきた。アーニャは小太りの厳しそうな中年女性、そしてまだ少女のサリアはは転送されてくるなり、転送システムのことを質問した。彼女がメカニックに興味を持つとしったピカードは艦内を案内させようと申し出る。サリアは喜ぶが、アーニャが厳しい口調で「結構です」と横から断ってしまった。
ピカードたちが二人を客室に案内していく途中、ジョーディから貨物室にある部品を取ってくるよう言われたウェスリーがターボ・リフトから下りてきた。サリアを見たウェスは彼女から目を離すことが出来ず、彼女も彼のほうを振り返りみている。ふとサリアがウェスリーのほうへ歩み寄り、手に持っていた部品のことを尋ねてきた。ウェスが嬉しそうに答えていると、アーニャが道草するなと怒鳴る。アーニャはその部品は危険だから気を付けてねと言い残し、通路の奥へ消えた。ウェスリーはサリアのことをライカーに質問する。彼女はタレド星の指導者となるべき女性だった。
ウェスはデイタを部屋に呼びサリアについて知っていることを話してくれと頼んだ。デイタの話ではダレド星では長年内戦が続いていたらしい。サリアの両親は敵同士で、彼女が生まれるとすぐに死亡してしまった。彼女は教育係のアーニャとともにクラウディアIII号星へ送られ、安全で中立的な環境で育てられた。そして十分大きくなった今、彼女はタレド星へ戻り、内戦を収める使命を果たそうとしているのだ。ジョーディから通信が入った。早く部品を持ってこいと叱られたウェスはあわてて部屋から出ていった。
ブリッジではピカードたちがサリアたちの話をしていた。ウォーフもアーニャは手に余るとぼやいている。ディアナは二人の外見が二人の感情と一致しない、つまりヒューマノイドらしくない印象をうけるとピカードに報告した。それを聞いたピカードはサリアの部屋に通信を入れる。予想に反してサリアは画像通信をすることに応じた。彼女はウェスリーのことを質問するが、部屋の奥にいたアーニャが近づいてくると急にあらたまり、通信を切ってしまった。デイタによればダレド星では公転周期と自転周期の関係である半休は一年中ずっと昼間、そしてもう半分はずっと夜になっているため、異なった文化が生まれ、それが内戦の原因になっているらしい。ライカーがふと「あんなにきゃしゃな少女に調停役が勤まるのか」と疑問をもらすと、ウォーフが「見かけに惑わされてはいけない。外見は単なるうつわに過ぎない」と答えた。それを聞いたピカード、そしてディアナは漠然とした不安を感じていた。
サリアが若い少女と話している。少女はサリアのダレド星での仕事を改めて説明、不安を解きほぐそうとしているようだ。だがサリアは「そんなことをしたいわけではない」と言う。少女に「あなたが最後の希望なの」と言われたサリアは窓の外をじっと見つめる。サリアが振り返ったとき、少女の姿はなく、ちいさな熊のような異星人が立っていて、サリアに甘えてきた。
機関部。ウェスリーはサリアの事で頭がいっぱい。ジョーディは「お前にも思春期がきたのか」と笑い、仕事は止め、彼女に会いに行けと言う。ウェスは「ジョーディがそう言うのなら仕方ないか」などと言いながら、作業場から下りてきた。そして彼女となんてはなせばいい?とアドバイスを求めるが、「忙しいから他の人に尋ねろ」と言われてしまった。
「ウガー」、ウォーフが吠えている。これがクリンゴン・スタイルのようだ。かなり狂暴な儀式のようだが、話しているうちにウォーフはうっとりとした表情になってしまう。ウェスリーが「人間向きじゃないね」とこぼすとデイタが「ウェスリーとサリアは生物学的に・・・・」と話しはじめた。ウェスリーは「話をするだけだよ」といってブリッジから出ていってしまった。
入れ違いにピカードがブリッジに入ってきた。そしてサリアへ連絡を入れ、アーニャに艦内を案内する準備ができたと伝えてくれと頼む。サリアは私も連れていってくれと言い、通信を切った。通信が終わると部屋の隅に隠れていた、さっきのちいさな熊のような異星人があわてた様子でよちよち歩いてきて、部屋のドアの前で通せんぼした。「私も行っていいでしょう?」とサリアが言うと、熊は急に姿を変え、アーニャの姿に戻った。そして部屋にいろと強い口調で命じた。「私は指導者なんかにならない」とサリアが言い返したとき、ウォーフがやってきた。そしてアーニャは「私にはあなたを教育する義務がある」と言い残し、艦内の見学に出かけてしまった。
テンフォワードではウェスリーがライカーから女性の扱いかたの指導を受けていた。ライカーはガイナンに協力を求め、実際に口説き方を示して見せる。ライカーとガイナンはすっかり雰囲気に浸ってしまい、ウェスリーはため息をつく。「こういうのは好みじゃないんだけど」、ウェスリーが口を挟むとガイナンに黙っていろと叱られてしまう。仕方なくウェスリーは二人を残してテーブルを立った。
アーニャはウォーフとともに機関部にいた。ジョーディがコンジットの検査をしているとアーニャはそれを見咎める。その心配ぶりは常軌を逸していた。問い詰められたジョーディが困っているとウォーフが助け船を出してくれた。
ウェスリーはサリアの部屋の前にきていた。監視の保安部員に何か用があるのかと聞かれ、困っていると、部屋のドアが開き、そこにはサリアが立っていた。ウェスリーがぼーっと見とれていると、サリアのほうからフード・レプリケーターの使い方を教えててれと話し掛けてきた。ウェスリーはにっこり笑って部屋へ入っていった。
なにがおいしいの?と聞かれたウェスはタロス・チョコ・ムースを薦める。サリアは「こんなにおいしいものは初めて」と感激する。そして「私はクラウディア星しか知らない」と彼女がこぼすとウェスリーは「良いところがある」と言って彼女の手をとり、部屋を出た。
ウォーフとともにアーニャが医療部に入ってきた。ちょうどポラスキーが伝染病にかかった患者を看ているところだったが、それを聞いたアーニャが怒り出す。危険だから患者を殺せと命じる。ポラスキーが断ると、アーニャは「それなら私が殺す」と言い出した。そして大きな怪物に変身した。とっさにポラスキーが保安部員を呼び、ウォーフも怪物に飛び掛かった。だが怪物の力は予想以上で、あやうくやられそうになる。ピカードとともに保安部員が到着した。ピカードが一喝するとアーニャはもとの姿にもどった。彼女は「お前たちなど私の力の前では問題にならない」と脅す。ピカード動じず、「この艦に乗っている間はおとなしく部屋にいろ」と命じ、彼女もしぶしぶ承知した。ポラスキーはアーニャは「アラサモフ」という自分の体の分子構造を自由に組み替えられる生命体ではないかと推測する。まさに護衛向きの生物だ。ウォーフは「もしまた彼女が変身したら、どうしますか?」とピカードに指示を仰ぐが、ピカードはただ「運任せだ」と答えただけだった。
ウェスリーたちはホロデッキにいた。サリアは再現された惑星の上から見える星空に感動している。ウェスリーが「いつか君も行けるよ」と言うと、サリアはさみしそうに「私には出来ないよ」とつぶやいた。
部屋の前まで連れてこられたアーニャはウォーフに向かって「あなたも保安部員なら私の護衛という任務の意味を理解できるでしょう」と訴える。ウォーフは「サリアの護衛なら私の任務でもある」と答えると、彼女は「私より弱かったのに?」と言い返す。「誰にも私を止めることは出来ない」、自信たっぷりに言うアーニャ。ウォーフは「試してみるさ」といい、立ち去った。
ピカードはディアナにアーニャの扱いを相談した。ディアナはアーニャはサリアの母親になりきっていて、彼女を守ることに必死なんでしょうと答える。そこへアーニャからサリアがいないと連絡が入った。
当のサリアはテン・フォワードでホロデッキの体験を嬉しそうにウェスリーと話していた。「あれは本当だったの?」「ああ、本当にある星だよ」「そうじゃないの、私の気持ちのことよ」そこへガイナンがムースを持ってきた。「もうあんな体験はできないのね」とサリアは言う。サリア自身もうまくわからないが、彼女は単なる指導者以上のものを求められているらしい。「エンタープライズに残ればいいよ」、ウェスリーがそう言うとサリアはしばらく考え込み、「できないわ」と言うと、飛び出していった。
あっけに取られているウェスリーのところへガイナンがやってきた。「こういう時は追いかけて欲しいものなのよ」と言われたウェスリーは慌てて後を追う。
ウェスリーはようやくサリアに追いついた。「どうしたんだよ?」とウェスリーが尋ねると、「やっぱり私にはできないわ」とサリアは泣きじゃくる。「できないことなんてないんだよ」とウェスリー。彼女は悲しそうに首を振る。そこへピカード、アーニャ、そしてウォーフたち保安部員がやっていきた。「サリアから離れなさい」とピカードに命じられたウェスリーは、なんことかわからない様子だったが、異様な雰囲気に気づき、彼女から離れた。サリアはウェスリーの脇を通って、アーニャのもとへ行き、二人は部屋へ戻っていった。床をじっと見つめるウェスリー。ピカードもなにか言いたそうな顔で彼を見ていたが、そのまま立ち去った。
コンジットの調整が終わり、ワープ航法が使用可能になった。ピカードはエンタープライズをタレド星へ急がせる。
ピカードは作戦室にウェスを呼び、アーニャが人間ではなく「アラサモフ」という生物であり、サリアと仲良くなることはエンタープライズの乗員の命を危険にさらすことになるだろうと説明した。しばらく考え込んでいたウェスリーは命令に従うことを約束する。
サリアはなぜ友人を作ってはいけないのかアーニャに尋ねた。「彼はあなたの心を乱した」とアーニャは言う。「あなたの言いなりにはならない」と言い返すサリア。「努めを果たすのがあなたの運命なのよ」、諭すような言葉を聞いたサリアはじっとアーニャを見つめる。
エンタープライズはダレド星の周回軌道に入った。この星でもうまく通信波が伝わらないようだ。ここもクラウディアと同様に人間が住めるような環境ではなかった。
ウェスリーが自室で遊んでいると、サリアが入ってきた。「ここへは来ちゃだめだよ」と驚くウェスリーだが、サリアは平気な様子。楽しそうに話し、そしてキスをする二人。突然方向が聞こえた。慌てて振り返ると怪物が立っていた。ウェスリーは保安部を呼び、怪物とサリアの間に立った。「だめ、早く逃げて」、叫ぶサリア。そしてウェスリーの目の前でサリアも怪物に変身した。
呆然と脇に飛びのくウェスリー。二人は向き合い、やがて人間の姿に戻った。「指図は受けないわ」と叫ぶサリア。ウェスリーは驚き、身動きも出来ない様子でサリアたちを見つめていた。
サリアたちの部屋はファース・フィールドが張られ、完全に監禁状態に置かれた。ダレド星から音声通信が入るが、エンタープライズからの通信波は厚い惑星の雲を破ることはできそうもない。それを予期してか、ダレド星からは転送座標も送られてきていた。
ウォーフがサリアたちの部屋へ行き、転送準備が出来たことを知らせた。アーニャはしばらくサリアと二人にしてくれと頼み、ウォーフを出て行かせた。アーニャは「自分の役目は終わった。ダレド星に降りるつもりはない」とサリアに話す。驚くサリアだが、いままでの彼女がしてくれたことに対し礼を述べた。「不可能なんてないのよ」とアーニャは言う。サリアは「やってみる」と言い、部屋を出た。
ウォーフが入ってきた。「出ていってくれてうれしいでしょう?」とアーニャが言うと、ウォーフは「そんなことはない。敵ながら見事でした」と答える。彼女は「ほんとは似た者同士なのよ。また味方として一戦交えましょう」と言い、二人は転送室へ向かった。
ウェスリーの部屋にアーニャがやってきた。彼女の姿を見たウェスリーはため息をつく。「もう行くわ」とサリアが言うと、ウェスリーは「人間ごっこは楽しかった?」と冷たく言う。「告白する機会がなかったの。私も女の子なのよ。そんなに外見が大事?」とすがるように言うサリア。「ああ」とウェスリー。「好きだった」とウェスが言うと「私もよ」とサリアも言う。だがウェスリーは「嘘だ」と否定する。サリアは「私にだって感情はあるのよ」と言い返すが、「さようなら」と無表情のまま言った。しばらく黙っていたサリアは「信じてちょうだい」と言って部屋を出ていった。
転送室。サリアがライカーたちに礼を言っている。いよいよ転送されようとする瞬間、ウェスリーが飛び込んできた。手に持ったタロス・チョコ・ムースを差し出し、「食べるたびに思い出して」と笑いかける。サリアが一口なめ、「私も何かあげられるといいのに」と言う。サリアはウェスリーにもう転送室から出ていってくれと頼む。ダレド星に転送降下するには別の姿に戻らなければならず、それをウェスリーに見られたくないのだ。「大丈夫、驚かない」とウェスは言う。サリアは微笑み、光輝く透明な生命体に変身した。「転送開始」、ウェスリーは命じ、サリアは転送されていった。
テンフォワード。ウェスリーは「転送台の上の彼女は清らかな光だった。心が空っぽだ」とガイナンに話している。ガイナンは「気持ちはわかるけど、いつか素晴らしい思い出にわるわ」と静かに言う。ウェスリーが「もう二度とあんな風には好きになれないよ」と言うと、ガイナンは「そうね」と答えた。ウェスリーがおどろいた顔で「そんなことはないって言わないの?」と尋ねると、彼女はニコッと笑って「愛し合うたびに感じるのはその度に違うのよ、愛にリバイバルはないのよ」と言う。「別れはつらいんだね」「いろいろあるわ」微笑むガイナン。そしてウェスリーは小さくため息をついた。