第二話:親愛なるM先生


 M先生はとってもドジな若い女のお医者さんです。私は一緒に仕事をしたことがないからわからないけど、色々失敗しても憎めない、憎めない。たぶんね。一緒に仕事をしていたら「馬っ鹿だなあ、おまえ!」って言いながらついつい面倒みちゃうんだろうなあ。

 M先生は東京の大学から新潟県は長岡市の病院に派遣されていました。約2年間の出張を終え、この3月一杯で東京に戻ることになりました。すっかり引っ越しの荷造りも終わり、病院の人々にも挨拶を終え、ちょっとセンチな気分で高速道路を東京に向かって走っていました。

「プルルルルル〜〜」おやおや、いつものようにポケベルが鳴っています。患者さんの具合でも悪いのかなあ・・と思いつつ、パーキングエリアで車を止めたM先生、病院に電話をいれました。

「もしもし〜〜、Mですけど。」

「先生!ポケベル返してください!!」

M先生は辞職したのに、病院の備品のポケベルを間違えて持ってきてしまったのでした。どっひゃ〜〜〜!

この話にはまだ後日談があります。

M先生、慌てず騒がず翌日封筒にいれて病院に送り返しました。

病院に届いたとき、ポケベルはもう壊れていたそうです。

上司のW先生、頭がカッカして

「M〜〜、おまえはあの、ビニールで、、丸く空気が入っていて、押すとプチプチってつぶれる、あのクッションみたいな奴、あれを知らんのか〜〜!ポケベルは精密機械なんだぞ〜〜」

って言ってました。

 そこで問題。そのクッションの正式名を知ってますか?

正解は・・・忘れました。

 でも、私は密かに「ひま」と呼んでいます。

何故なら、ひまな時つぶしますよね。

え?何をって、だから「ひま」を・・・・

 ついでにM先生のドジ話をもう一つ。 

 長岡で住んでいたアパートはオートロックでした。夜中にごみを出しに外出し戻ったところ、もう入れませんでした。M先生、とぼとぼ夜道を歩いて上司のW先生の家まで歩いて行きました。

 ピンポ〜〜ン。夜中に玄関のチャイムで起こされたW先生、眠い目をこすりこすり玄関に出たらそこにはパジャマ姿のM先生。いや〜びっくりしたのなんのって、目が点になったそうです。

 


おまけ:ポケベルに関してはいくつか面白い話があります。

1)バッグをなくしてしまい焦ったが、ポケベルが入っていることを思い出し、鳴らしたところすぐ警察から電話が入った。「届けられたあなたのバッグのなかから急に変な音がしました!」って結構焦ってるんだよね。もう15年も前の、まだあまりポケベルが普及してない頃の話。

2)先ほどのW先生。昔トイレにポケベルを落としたそうです。古いビルで、5階から一直線に一階まで筒がつながっているそうです。ポケベルは諦めたけど、皆で興味津々鳴らしてみたところ、はるか下方で情けなく「ぴーぴーぴーぴーぴー」と鳴っていたとのこと。なんか可笑しくないですか?


ずれずれ草の目次に戻る ホームに戻る 第一話に戻る 第三話へ