第六話:女子高校生にモテた話
あれは大学3年のとき。
自転車で大学に通っていた私は、いつもその女子高の前を通っていた。
すれちがう高校生たちは若く、健康的で、快活だ。
はっきりいってあまりカッコ良くなかった私には縁遠い、高嶺の花の様な存在だった。
そんなある日。いつものように高校の前を通っていると、高校生たちの様子が違う。
私に微笑みかけるのだ。みんなにこにこして私に会釈したり、道を譲ってくれるではないか。
(何かが違うぞ!)(いよいよ俺にも運がむいてきたのかな)
自然に顔がほころぶ。高校生達はますます私に注目している感じだ。
すると頭上で「きゃ〜」というような声がするではないか。驚いて見上げると、何と3階の窓から4〜5人の生徒が身を乗り出して手を振っている。
「きゃ〜 すてき〜 こっちむいて〜」等と叫んでいる子もいる。
一体どうなっているんだ?でもここは余裕を見せなきゃね。
手を振って返すと、皆喜びの表情だ。
(人生、変われば変わるものだ。)(これから毎日あそこを通るのが楽しみだな〜)(それにしても何でこんなにモテるんだ)(きっと昨日久し振りに床屋にいったのが良かったのかな)(いやいや、そういえば最近、勉強も少し真面目にやっているし、そういう雰囲気ってのが人間を変えるのかもしれない)
高校の前を通りすぎた後は、こんなことを考えながらペダルを踏むと大学まであっという間だった。
大学について、自転車から降りたとき。
私の青春は終わった。
ズボンのチャック、俗にいう「社会の窓」が全開なばかりか、よれよれのパンツまではみ出していたのであった。