第五話:遅刻の王者
この年になるまで朝寝坊の癖はとれない。
そんなわけで、小学生のときから「遅刻の王者」と言われていた。
あれは中学一年とき。入学式の翌日。
オリエンテーションのため、朝から新入生600名は体育館に勢ぞろいしていた。
いや、正確には私を除く599人が、クラスごとにずらっと並んでいた。
入学早々遅刻した私は息せき切って体育館に駆けこんだ。しかし、何せ1学年14クラスの大所帯だ。前の方の先生の顔は見えないし、クラスメイトの顔もわからない。
(えーとえーと12組12組)
心に念じながら列の後ろを歩いて行くと、奥から三列目ほどの最後尾に見覚えのある顔が見えた。
しめた。
「君、亀貝君だよね。」
ほっとしてその後ろについた。
(やっぱり昨日友達になっておいてよかった。)
初日早々の失態で、先生の話は上の空。
ようやくオリエンテーションが終了し、クラスごとに行列して教室へ向かった。
初対面の者が多く、皆口数は少ない。私も遅刻の負い目があって珍しく黙って歩いた。
わたり廊下をわたって教室に入った。
ん? 何か変だぞ?? あれ?俺の席がない。
「亀貝君。君、昨日と違うところにすわっているね?」
「あんた誰?」
と、とぼける亀貝君に
「君ぃ、昨日あんなにしゃべったのに、もう忘れたの!?」
と詰め寄ると、突然笑い出したのは亀貝君だった。
「あんた、弟と間違っているね。俺、双子なの!俺3組、弟12組!」