第三話:さすが丸山君
中学生のとき。
座席順に割り当てられた日直は黒板を拭いたり、散らかった教室を片付けたり、先生と連絡をとったりと、それなりにやることがたくさんあった。
その日の学級会の話題は、日直の問題だった。
このところ日直の仕事をきちんとやらない人がいるのだ。これをどうするか大問題だった。サボっていても、それを見かねた誰かがやったり、非難を浴びても翌日にはもう次の人に番が回るので、サボり得になってしまうのだ。
色々な意見が出たがまとまらず、皆頭を抱えた状態だ。意見が出尽くした頃、私は手を挙げた。
「はい、丸山君」
司会者は、疲れた声で私を指名した。
「日直がきちんと仕事をしていなくても、自分では気がついてない面があると思います。悪気でサボる人もいますが、もともとちゃらんぽらんな人はいい加減にやっても悪いとも思わず、結局いつもサボるのだと思います。そこで・・」
みな私に注目している。
「そこで、最後のホームルームの時に、その日の日直がちゃんと仕事をやったかどうかみんなに聞いて、ちゃんとやらなかったという意見が強ければ、翌日もう一度やる、というのはどうでしょうか。」
「それはどのように決めるのですか?」
「多数決でよいと思います。」
「なるほど、それは客観的ですね。」
「そうです。しかも翌日もきちんとやらなければ、何回でもやらされるわけですから、本人も自覚するので良いと思います。」
ほ〜、という声も聞こえた。名案なのだ。
「さすが丸山君。では、早速今日から実行しましょう。」
難問から解きはなたれた司会者にも、クラスのみんなにも安堵の空気が流れた。
さて、その日の最後のホームルーム。
奇しくもその日の日直だった私は、ホームルームの司会をした。
そして最後に、自分の名案になかば得意になりながら、聞いた。
「それでは、今日の日直の仕事振りはどうだったでしょうか。ちゃんとやらなかったと思う人は手を挙げてください。」
しばらくの間を置いて、一人二人と手を挙げた。
あれあれあれあれあれあれあれ・・・・・・・と思う間に
な、な、な、なんと、全員が手を挙げてしまった!
しばらくの沈黙の後、
「さすが丸山君、名案を考えるよな〜」
誰かが言ったとたん、クラスは大爆笑の渦に巻き込まれた。
おまけ:日直を二回やったのは後にも先にも私一人だけで、この、みんなに聞 くシステムもしばらくのうちになくなってしまった。