ローマでの日中の観光を終えた夜のひと時。夕食も終え、手持ち無沙汰になった息子と私は、夜のトレビの泉を見に行こうということになった。
ローマも三日目になるとなれたもので、目的地に向ってすいすいと歩ける。
ある路地に差し掛かったところで、一人の男に声を掛けられた。これがダスティン・ホフマン張りのいい男。
「○○へは、どうやったら行けますか?」
道を尋ねられた。その場所なら大体見当が付く。持参の地図を見せながら、ちょっと得意になって解説。
ニコニコして聞いていた男は、口を開いた。
「ところであなた方はどこから来たのですか?」
「日本からですよ」
「ああ、そうですか。観光で?私はスペインから商用で来ているんですよ。レオンといいます。よろしく」
「ほう。どのような仕事ですか?」
「私は車のディーラーで、イタリアの会社と取引の交渉です。ところであなたは?」
「医者です」
「専門は?」
「Skin doctorです」
「おお、Dermatologyですね」
私は、ちょっと驚いた。
私は、専門を聞かれると一般人には「スキン・ドクター」と答えることにしていた。
なぜなら、かなり英語の堪能な人でも「Dermatology(ダーマトロジー:皮膚科、皮膚科学)」という言葉にはなじみがないらしく、ほとんど通じないからだ。
このDermatologyという言葉を知っているとは、かなりのインテリに違いない。
あれこれ話しているうちに、そのレオンと名乗る男が提案した。
「せっかくだから、その辺でビールでも飲みませんか?」
一瞬戸惑ったが、インテリそうだし身奇麗ないい男なので、つい承諾した。
「いい店を知っているんですよ」
と、さっき道を尋ねたとは思えない足取りで歩き始めた。
これが悲喜劇の始まりになろうとは・・・・・・・
このあとどうなる??お楽しみに。生きて帰ってきたことには間違いありませんが・・・・・