群馬滝巡り?
1999.08.27

 

登場人物

オレ(しんいち)


 8月27日朝7時。間違いショートメールで目が覚めた。「こんちくしょう!」と思いつつ耳を澄ますと、窓の外からなんだか水の音が…。エアコンの排水の音とも違う、これは…

「ゲッ、かよ…」

 そう、雨が降っていた。

 今回の旅(ただのドライブ?)に行くのは自分一人。誰に気兼ねするわけでもない。予定も自由に変えることができる。そんなわけで、出発を明日に延ばそうかとも思ったが、注意深く天気予報を見ていると、群馬県の方は午後には収まるらしい。逆に、明日の午後は関東北部は雷雨の可能性があるとのこと。予定通り9時に出発することにした。

 そろそろ出ようかな、と思っていた矢先、バス停にいる母親が携帯に電話が入った。何でも、バスがなかなか来なくて会社に遅れそうだという。渋谷まで送ってほしいんだと。これまた誰に気兼ねすることもなく予定を変更して、まずは母親を拾って渋谷駅へ。それから国道246号を引き返して瀬田の交差点から環状8号線に入った。その間に雨もやみ、だんだんと天気もよくなってきた。

 今回行こうと思っているのは群馬県の吹割(ふきわれ)の滝不動滝箱島湧水(ゆうすい)、常布の滝、そして、もし時間があるようなら長野県の米子大瀑布にも行こうと思っていた。この5つの滝(米子大瀑布はふたつでひとつ)は日本の滝100選に、また、箱島湧水は日本の名水100選に選ばれているもの。こんなに多くの箇所をエスティマで一人でまわるというのは金銭的にもちとつらい。少しでも燃費を稼ごうとエアコンを止めて窓を開けると、とたんにしめった生暖かい空気が車内に流れ込んできた。

 だが、環8は混んでいた。両側を大型車に挟まれた状態でのろのろ走っていると暑い空気が直接浴びることになる。最初は我慢していたものの、やはり耐えきれなくなって再びエアコンのスイッチを押すことになった。

 環8に比べると関越道は格段に空いていた。11時30分に関越道に乗ってから沼田I.C.まで約1時間10分。疲労を感じることなくノンストップでやってきたが、おかげでサービスエリアでハイウェイカードを買うのを忘れてしまった。

 リンゴやブドウの看板が多い白沢村を抜け、吹割の滝のある利根村に入る。

 「500円」とでかでかと書かれた有料駐車場が閉まっていたので隣の駐車場へ手招きされた。案内のおじさんが持っていたボール紙には「無料」と書かれていたが、滝に行く前にすぐ近くの「滝のおばーちゃんの店」で駐車料代わりに何か買っていけと言う。なるほど、そういうことか。

 店の中には漬け物や野菜、蜂蜜などが売っていた。商品を見ながらおばーちゃんと話をしていると、次に行こうと思っていた不動滝が崖崩れで見られなくなっていることを教えてくれた。念のため(吹割の滝を見たあとで)不動滝を管轄している赤城村の役場に電話してみると、確かにおばーちゃんの言うとおり。おばーちゃんの店ではスイカ(750円)をひとつ購入。バドミントン部への差し入れにすることにした。

鱒飛の滝。落差約15m。 吹割の滝への遊歩道を歩いていくと、まず鱒飛(ますとび)の滝が見えてくる。この滝は正面からは見られず上から見ることになるのだが、その濁流から想像するにけっこう水量の多い滝なんじゃないだろうか。川をさかのぼってきた鱒がこの滝を登ることができなくて引き返すという話もこの滝の激しさを物語っている。落差約15mというからほんとに大きいものと比べるとそんなでもないかもしれないが、できれば正面から見てみたい。


吹割の滝 さらに上流へ歩くと吹割の滝が見えてきた。この吹割渓谷および吹割の滝はおよそ1万年前に片品川と栗原川の合流点で生まれた滝が上流に浸食したときにできた渓谷および滝なんだと。両岸より水が流れ込み、そのしぶきが滝壺から吹き上がる様子からこの名前がついたとか。この滝に流れ込む水も(雨が降ったせいか)すごい早さで流れていて、見てると何だか軽い眩暈(めまい)をしているような不思議な気分になってくる。

 吹割の滝からさらに上の浮島橋まで来ると、駐車場の方に戻る道と観瀑台の方に続く道に分かれる。雨が少し心配だったが時間も自由に使えたので、どうせなら、と観瀑台の方まで行ってみることにした。

 鬱蒼とした林の中を遊歩道がちゃんと整備されていて、ハイヒールでも大丈夫なくらい歩きやすい(って、別にオレがハイヒールを履いていたわけじゃないけど)。浮島橋から第一観瀑台まで10分、さらに第一観瀑台から第二、三観瀑台を通過して滝の下流にある吹割大橋まで20分とかからない。たいして時間もかからず、しかも歩きやすいのにこっちまで来る人が少ないのはもったいない。

 吹割大橋から車に戻り、赤城村役場に電話する。不動滝が見られないことを確認すると、箱島湧水に向かって出発した。


 利根村から日本ロマンティック街道を下る。なんでこんな名前がついているんだろうと不思議に思っていたら、おあつらえ向きに道路の脇に説明書きの碑があった。

 長野県上田市から栃木県宇都宮市まで全長約350km。名称の元ネタはドイツロマンティック街道であり、両方に共通してそれぞれの国のロマン派詩人が多くの作品を残している。

 他にも長々と書いてあるけど以下省略。

 日本ロマンティック街道を途中で折れて国道17号、353号と入る。箱島湧水は国道353号の途中にある。

 ところが、そこでひとつ問題があった。

 家から持っていたふたつの道路地図、関東地図東北地図仙台に行くために買ったやつ)では箱島湧水の位置が違うところに書いてあるのだ。そこで、まず関東地図の方に載っているところに行ってみることにした。

 で、関東地図の方にいってみたら神社があるだけ。あきらめて草津(次の目的地)に向かおうとして、東北地図に載っているところを通ったら案内の看板が見つかった。なんだ、こっちが正解だったのね。

箱島湧水 湧水から200mくらいのところにある駐車場に車を止め、1.5リットルのペットボトルを2本持って水を汲みにいった。オレが行ったときには40本くらいのペットボトルを台車で運んでいる老夫婦がいた。終わるのを待ちながら傍らにあるノートを見ているとほんとにたくさんの人がこの水を汲んでいったのがわかる。民宿レストランを営んでいるプロの人たちも愛用しているみたい。オレの前に水を汲んでいた老夫婦もそんな人たちなのかもしれない。

 そしてオレの番。わかると思うけど、水を汲むために小川に手を突っ込む必要があるわけよ。で、ペットボトルってけっこう水が入りにくくて、ず〜っと手を突っ込んでると手が痛くなるくらい水が冷たい。

 一口飲んでみたけど、味覚に疎いオレでは冷たいってだけでその場ではほんとに美味しいのかよくわからなかった。だけど、同じく冷たかった旅館の水を飲んでみても何だか変な味を感じたから、それと比べるとやっぱりここの水は美味しいというのがわかる。「ああ、やっぱり箱島湧水の水は美味しかったんだなぁ」と。


 午後5時過ぎに箱島湧水を出発し、今度は草津に向かった。時間的にちょっとギリギリかなぁなんて思ってたんだけど(とっくの昔に米子大瀑布に行くのはあきらめている)、旅館にいる現役部員に連絡を取ろうとしたらつながらなかったので、「いいや、行っちゃえ!」っていうことで行ってしまった。

 だけど、やっぱりオレが間違えていた。常布の滝の正確な場所を調べていなかったのと暗くて案内などがはっきり見えないという理由で結局常布の滝は見つからず。そうこうしているうちに合宿担当の奴から電話がかかってきちゃうし。急いで合宿所に向かうことにする。

 そんでもって、午後7時34分、群馬県嬬恋村のヤマタ旅館に到着する。


 滝巡りと称して出かけたはずの今回の旅は、結局ひとつしか見られなかったということでやや失敗の感がある。機会があったら、と言うよりも、機会を作ってぜひもう一度挑戦したい。