山梨大学講義ノート/廃棄物処理法 

廃棄物処理法と循環関連法

 

1.廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)

廃棄物処理に関するもっとも重要な法律。1970年に一連の公害規制法規とともに制定、91年に全面改正され、その後もたびたび改正されている。廃棄物を一般廃棄物、産業廃棄物などに区分し、それぞれ自治体や排出者の処理責任について規定しているほか、廃棄物処理業や処理施設に対する規制、環境保全のための様々な措置について定めている。

●法律の目的

 第1条目的に「この法律は、廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とする」と定めている。従来は排出された廃棄物を「適正に処分」することが目的とされてきたが、91年の改正によって「廃棄物の排出の抑制」「分別」「再生」が新たな目的として追加され、川上に遡って廃棄物対策を講ずることが必要との認識が加えられた。

●廃棄物の区分

  廃棄物処理法では、事業活動にともなって排出される燃えがら、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリや政令で定める廃棄物は「産業廃棄物」、それ以外の廃棄物は「一般廃棄物」と分類されている。

 

 

 

   また一般廃棄物のうち、爆発性や毒性、感染性のある一般廃棄物は「特別管理一般廃棄物」、同様の産業廃棄物は「特別管理産業廃棄物」という区分が設けられている。

この図で事業系一般廃棄物という区分があるが、これは法律上の区分ではないが、事業系のごみは自己処理責任が原則であるということから、一般的にこのような区分がされている。

●国内処理の原則

 廃棄物は原則として国内で処理しなければならないと定めている。また、廃棄物の輸入は抑制しなければならないと定めている。廃棄物が国境を越えて移動することを禁ずるバーゼル条約の理念を取り入れたものである。

●廃棄物処理の責任

  廃掃法では、一般廃棄物は市町村が分別の方法を定め、処理施設を整備し、適切にごみを収集して処理するほか、減量や再生利用に努める責任がある。東京23区は例外的に都が一般廃棄物の処理を行ってきましたが、2000年度からはこの権限が区に移管され、区は市町村と同様に一般廃棄物の処理に責任を負うことになった。

 事業系一般廃棄物については、原則的には自己処理の責任があるが、最終的に市町村の処理施設に受け入れている。ただし、自己処理責任の建前からこれらは有料で処理するものと解されている。

   産業廃棄物の処理は、汚染者負担の原則に基づいて排出事業者自身に処理責任を求めている。実際には都道府県知事の許可を得た処理業者に委託処理され、その費用を負担する形で汚染者負担原則が適用されている。

  ●一般廃棄物

 一般廃棄物の処理は、市町村の「固有事務」(自治事務)と位置づけられ、法律に違反しない限り市町村が自由に収集や処理の方法を定めることができる。

市町村は、処理量の見込みや分別の種類・区分、適正処理に関する事項等「一般廃棄物処理計画」を定めなければならない。処理事業は民間委託も認めているが、あくまで事業の主体は市町村におかれている。

 小規模な市町村では、一部事務組合(特定の事務を行うために複数の自治体が集まって組織する特別地方公共団体)を組織して、共同で処理している例が多い。

産業廃棄物を含めて、事業活動に伴って排出される廃棄物の処理は事業者にある。そのため、事業系一般廃棄物(事業ごみ)の収集は民間業者(一般廃棄物処理許可業者)が行い、処理のみ市町村の処理施設で行っている例が多い。市町村が収集する場合は有料である。

●産業廃棄物

産業廃棄物は、法律で19種類が指定されているが、事業活動に伴って排出されるこれらのものがすべて産業廃棄物になるのではなく、ものによっては排出業種や性状等について指定されているものもある。たとえば、紙くずについては、建設業、製紙業、印刷、出版業などの業種から排出されるものに限定しており、ビルやオフィスから排出される紙くずは産業廃棄物ではない。

 事業者は産業廃棄物を自ら処理しなければならないと規定しているが、都道府県知事の許可を得た処理業者に処理委託することができる。委託する場合は政令で定める基準に従わなければならない。

 市町村は一般廃棄物とあわせて産業廃棄物の処理を行うこともできる。また都道府県についても、適正な処理を確保するために都道府県が処理することが必要であると認める産業廃棄物の処理をその事務として行うことができる。

 産業廃棄物処理業者(収集運搬業、処分業)の許可権限は都道府県(保健所設置市は市長)にある。特別管理産業廃棄物については、施設や事業者の能力についてより厳しい要件が定められている。

 産業廃棄物の流れを管理するために、「マニフェスト」(産業廃棄物管理票)制度がある。マニフェストは処理委託する際に排出事業者が発行し、収集、中間処理、最終処分の各業者の手を経るごとに処理内容等の必要事項が記載されどってくる。排出事業者はこれによって適正に処理されたかどうかを確認し、これを保管しておく義務を負う。

 産業廃棄物処理は民間の市場経済活動として行われており、都道府県はこれを監督したり規制する立場にある。しかし不法投棄や不適正処理等民間の産業廃棄物処理に対する国民の信頼は低く、新たな処理施設の建設がなかなか進まない実情にある。そのため、行政が関与して最終処分場等の建設を進める施策として、「廃棄物処理センター」の制度が設けられている。

 廃棄物処理センターの指定は環境大臣が行い、センターは、市町村の委託を受けて特別管理一般廃棄物や指定一般廃棄物の処理を行ったり、産業廃棄物の処理を行う。廃棄物処理センターが市町村の委託を受けて施設整備をする場合は市町村と同様の補助が受けられることや、税制上の優遇措置を設けて、センターによる施設整備を支援する仕組みを用意している。

●不法投棄等に対する罰則規定

 主な罰則としては、無許可で廃棄物の収集運搬を業として行った場合や許可された事業範囲以外の業を行った場合、無許可で施設を設置した場合は3年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはこの併科。排出事業者が不適正な委託をした場合などは、1年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金。

 不法投棄については、個人の場合は3年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはこの併科、法人の場合は代表者や従業員が処罰される他、法人に対して1億円以下の罰金という両罰規定が定められている。

●処分場の維持と不法投棄撤去に関する基金制度

産業廃棄物処理はほとんど民間が行っているため、処理施設に対する住民の不安や不信は大きい。そこで97年の改正では、埋め立てが終わった最終処分場の維持管理のために積立金制度を導入し、処分場の設置者は毎年維持管理積立金を環境事業団に積み立てて、埋め立て終了後にその積立金を取りくずす制度を新設した。

また不法投棄された廃棄物を除去する制度が設けられ、「産業廃棄物適正処理推進センター」((財)産業廃棄物処理事業振興財団が指定されている)を設置して、産業界と行政が資金を負担して、不法投棄や不適正に処分された廃棄物を都道府県知事が除去できる仕組みを導入した。986月以降に不法投棄され投棄者が不明または資力不足の場合、都道府県等が除去事業を行う経費の3/4以内を補助することとなっている。

 さらに、98年6月以前の不法投棄の除去を促進するため、2003年6月に「特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法」(産廃特措法)が制定された。98年6月以前の不法投棄の積極的な除去を行うために、国が基本的方針を策定するとともに都道府県(または保健所設置市)は実施計画を策定し、この計画に基づいて都道府県等が自ら除去等の事業を行う場合に、経費の一部を国が補助し、地方債の発行ができるようにした。なおこの法律は、12年度末までの10年間の時限法である。

→次のページ    →循環関連法の体系

▲TOPへ戻る 循環法・資源有効利用促進法 リサイクル個別法 △講義ノートトップ