Paster Keaton Essay「Airs」

EPISODE:8 遠すぎた橋

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 5月をまわるとこの国の季節も乾期から雨季へと移ろう狭間故か、
晴天の日々が続く。
 しかし近年、アマゾン川流域での熱帯雨林伐採により乾期・雨季の
区別が曖昧になり、雨季といえども降雨量の低下が見られるのである。
(90年当時。現在は更に曖昧になり、月単位の降雨量に変化が際だつ。
 支流域に隣接する南東部で降水量の減少が顕著になっている)
 サンタマルタではオフシーズンとなり観光客の流れは一段落している。
 と、いっても日中の気温は30℃を上回るのだが。

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 月に一度の顔見せ、いやいや、日本食が食べられる日か、と形容したいキートンの
ボゴタへ出向く当日、土曜日のこと。

 翌日曜は休日であり、ボゴタで羽を伸ばす数少ない機会でもあった。
 にもかかわらず、キートンはタクシーなどを利用して近郊への観光に行こうとはせず、
映画を見に行く、書店で雑誌や書籍の購入(USA系出版物)、珈琲ハウスでの喫茶、
町中の散策、各国料理の店をまわる、の繰り返しであった。
「住んでいるのだから普段の延長だよ」
 珈琲ハウス、といってもアメリカのカフェスタイルではなくパリ等のカフェスタイル。
日本人にとって雰囲気が多少異なるだけで、喫茶店だと理解すればいい。
(註:近年、アメリカ東海岸でもパリスタイル・日本式との折衷形態の珈琲ハウスが
 増加してきている)
 珈琲豆生産国内のて消費される豆質は、良質なものが輸出に優先されるが故に、
 味わい風味ともに一段劣るものなのだが、数少ない珈琲ハウス(コーヒーと表
 現するよりも珈琲)では同等の豆質を一定量確保し営業をしている。もっとも、
 生産年度により品質のばらつきがあるのは致し方ないので、店頭に出る珈琲豆
 自体の数量も増減する。

 またキートンが通う店では数少ない珈琲豆自体を袋詰めして販売しているのが特徴だった。
 そして各国の4つ☆以上のクラスのホテルならば使用する豆も輸出品と同質である。
 珈琲の飲み方も南米各国はもとより国内の生産地により微妙に異なるものなので割愛し、
別の機会に紹介する。

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 月曜の朝でいつものサンタマルタへの定期便で戻るのだろうと思い、受け取ったチケット
片をよく見てみると、行き先がBARANQUILLA(バランキージャ)になっている。
「えっ? これ、どうして?」
「あ、それ、すまんなあ、(座席が)穫れなくてさ。
 バランキージャに行ってタクシーでも拾ってサンタマルタに行ってくんない!?」
「え、え〜! 300kmは離れていますよ、それにこれ、午後の便じゃないですか」
「あ、別にホテルに泊まっても構わないから」
 そういうことじゃなくて、と思いながらも言葉を飲み込む。
「(現地確保ってこと?)は〜い、わっかりやした」
「あ、それと−」
 手招きをしながら奥の倉庫の扉の前に歩き、
「キートンさあ、日本食が届いたから一緒に持ってけよ」
「これですか!!??」
 扉の前にどん、と置かれている大きな段ボール箱、それがキートンが注文した日本食の
詰め合わせらしい。大きめのテレビの段ボール箱と変わらない位の大きさだ。
 食材は生ものは無いのでカップ麺などのレトルトのものから乾燥若布までのもの等で
見た目よりは軽い。
「月曜、来てからさ、昼飯喰ってから移動すればいいよ、それ迄置いておけばいいよ」
「は、あ〜い」
 タクシーにこれ、乗るのかなあ、と思いつつ一堂と夕食をすませ、帰宅する準備をしながら
日本食の段ボール箱に一瞥をくれ、キートンは階下へ降りていった。

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 2度程、サンタマルタからバランキージャに移動してボゴタに来たことがあるけどなあ、
その時はオーバーブッキングと満席の時で、直接、手荷物だけで空港に向かっただけだし、
あれ何? あんなでかいの抱えて(実際には抱えられない)移動?しかもホテルに泊まって!?
「…」
 食事に向かうタクシーの中で、とほほ顔で溜息をつくキートンだった。
「晩飯、何にしようか、な」
 おい、キートン、そうじゃないだろう。

to be continued !!

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