Paster Keaton Essay「Airs」

EPISODE:4 ファイアフォックス

◆◆◆◆◆◆◆

 ここ、エルドラード空港の国内線には一部を除いてボーディングブリッジが無い。

 Avianca-727

 そのため機内へはタラップを使用して乗り込む訳だが、キートンは幸いにも今まで雨に見舞われたことはない。
 警備員のペアが棒状の金属探知器を手に持ち、次々と持ち物検査をしていく。
 次はキートンの番だ。

◆◆◆◆◆◆◆

 上着の左胸あたりに金属探知器をかざしたところ、いかにも怪しいですよ、とブザーが唸るではないか。
 けげんな顔つきの女性警備員が私を見据える。
「Si..(はいはい)」
 ポケットに入っていたのはマグライトだ。
 これが反応するとは思わなかったようだ。
 次からはアタッシュケースに入れるしかない、苦笑いをしながら中にしまい込んだ。
「Siga ! (はい、行って)」
 疑いを晴らし、機内に乗り込んだ。
 Avianca航空のオレンジ色に塗られたB-727-200に乗るのは何度目だろうか。
 キートンは、日本ではついぞ搭乗の機会に恵まれなかったが、ここではほぼこの機体だ。
 リアエンジン形式3発、T尾翼の形態はワイドボディ以前の細いボディと相まって日本では"空の貴夫人"と
呼ばれたぐらいだ。
B-727
 だが、高翼面荷重で高高度での高速性を、トリプルスロッテッドフラップで離着陸性をカバーしたために
プロペラ機より沈下率が高く、着陸速度の速さも絡んで一時期は事故が多発していた。
 勿論、これは70年代でのベストセラーで3000機以上も生産され世界各国で使用された事も関係する。
(日本でも取扱の不慣れから羽田沖で墜落する)
註:96年現在、最も使用されている機材はB-737の各シリーズ。1万機近く生産される可能性が高い。
 ★★★★★
 航空機は国営企業AVIANCA(アビアンカ)のほか、多くの外国航空会社が乗り入れている。
 ニューヨーク直行便は毎日2便、マイアミ行きは外国エアラインも含めて毎日6便ある。
 国際線にはAVIANCA、American Airlines、VIASA、Air France、KLM、SAM、Lufthansa 、
Aeroperu、Air Panama 、ALM、LAN-Chile、Copa(カルタヘナ、バランキージャ、メデジン
のみ)、LADECO、Aerolineas Argentinas、Varig、IBERIA、Ecuatoriana、British Air、
Lacsa(バランキージャのみ)がある。
 国内線には、AVIANCA、SAM(サム)、ACES(アセス)、AIRES(アイレス)、Inter
-continental(インテルコンティネンタル)、SATENA(サテナ)などがある。

★★★★★
 ここBogotaは赤道に近いが海抜2700m前後のために朝の気温は低くく摂氏10度を下回るが
サンタマルタ(*1)は海岸線であり、40度近い気温だ。その上に、気圧の違いがある。
 サンタマルタでの気圧(海面付近)でマキロン等の容器が見たままなのが、ボゴタで未開封のままで
持ち込むとパンパンに腫れてしまい、逆にボゴタで普通ならば、サンタマルタではぺしゃんこに潰れる。
 Simon Voribarl記念館近くのロープウェイで山頂の教会に昇った時などは標高3000m以上の為に
降りて階段を昇ると空気の薄さに、キートンの足腰が抜けたようになったのもこれと同じだ。
エクアドルでは更に高い3400m近くのマリア像に行くのだが、それは別の機会に譲ろう。

 *1:サンタ・マルタ、1525年にコロンビア最初のスペイン人居住区が築かれた町。
   南米解放の父、シモン・ボリバールの没地でもある。

◆◆◆◆◆◆◆

 後部左窓際に座った(国内線のために座席指定ではなく、早いもの順である)キートンはいつものように
空模様を見詰める。
「今日は良く晴れた、いい日だ。」
 機は加速を続け、眼下に牧場の羊達を小さくさせながら上昇を続けていく。
 低い雲を突き抜けて、巡行高度までこの機体を蒼空へ、その高みまで翼を広げ、昇っていく。
 Columbiaの大空
 機は北上を続け、アンデス山脈の始まりの大地との割れ目を抜けて(イメージとして、ギアナ高地のように
突如、大陸の北部にアンデス山脈の始まりが断崖となっている)北部の亜熱帯平原へと突き進む。
 とても良く晴れた空模様らしい。
 右奥にはサンタマルタ山(海抜5500m超の南米有数の山である)が薄く見える。
 10数分もすればはっきりと見えるだろう。
 Mt.SantaMarta
 コロンビアは南米大陸を縦貫するアンデス山脈の北の始まりでもある。
 アンデスの峰嶺はただ高いだけでなく、活発な地殻活動による活火山の山でもある。
 実際、コロンビアでも1985年にネバド・デル・ルイス山が噴火して2万4000人を埋めた。
 尚、エクアドルの活火山については別の機会にする。

快調なエンジン音を轟かせ、機は海上へと抜けた。
もうすぐ着陸だ。カリブ海の濃いエメラルド色の波模様がまぶしい。

機はぐるりと海側を回り込み、(空港は海岸北側に面して作られているので、回り込む場合は、東側から
着陸する)左に大地を見ながら着陸体制に入った。
機内の観光客達はもうはしゃぎ始めている。
いつものようにキートンがシートベルトを締め、窓外を見やった。
ん? 何かいつもと違う。
 これは!?
「いけない、(着陸降下角:沈下率が)早過ぎる!!」
キートンは、思わず叫んでしまった。
みるみる滑走路が眼下に迫ってきた。

そして――。

to be continued !!


[Back][Next]
PasterKeaton project©