EPISODE:13 Mar Caribe
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カリブの風に集いし燭は魚介のたぎるエネルギーを
交通機関をタクシーとバスに頼るキートンにとって遅くて
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ロダデロ(サンタマルタ州サンタマルタ市の一地域)
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90mileーBeachへと向かうバス内。
バスツアーでの帰途、シーフードショップに立ち寄り軽い
夕食前、37℃あった気温がスコールの後、25℃まで冷え込
ちゃちなスクーターでもコーナーを曲がり、坂を登り、下る
際の風の心地よさを思い出した。
それは初めてオートバイに乗った感じを思い出させる(ヘル
メットは着用義務にはなっていないんです、この国では)。
コバルトの海、エメラルドの波頭、原色の絵の具を描きな
ぐったような大空、身体の底まで響いていくビートと艶めか
しい風の匂い、人々の情熱。
小さな乗り物を駆りながらも無意識の奥底から沸き上がる
リズムがキートンを突き動かす。
4年後、同じくツーリングをするキートンは、この眠って
いた躍動を思い出す。
「エビにしません、キートン」
「そうですね、でっかいやつにしましょう」
コロンビア北部海岸はカリブ沿岸部なので魚介類に恵まれ
豊富な量と多様な種類を食卓に提供する。
海老にしても、スペイン語では大きさにより単語は異なり、
料理法にしても多種多様である。
今回、キートン達が食したのは伊勢エビと呼んでも差し支
えない種である。しかし、普段、日本で目にする大きさとは
異なり、脹ら脛から太股程の大きさの海老が水揚げされるの
である。
テーブルに料理されたその海老が来た。
直接、キートン達が水槽から選んだものだ。
伊勢エビのグリル焼き。
背中から両断された身から香しい匂い。
それをガツガツッと食しワインで押し込む。
それで十分。
ガツガツッと食しワインで押し込む。
(日本円で当時、約2000円程。1桁違う)
揚げを運ぶ漁師の姿が見られ、日中は観光客と貨物岸壁に横
付けされた貨物船が波間を揺らす。
夕方は出航。それらを廃棄された駅舎と朽ちた貨車、錆び
付いた鉄路がずっと見続ける。
咲き乱れる花々。朝夕の僅かな海風に靡く枝葉。
波の音。肩まで浸かりながら爪先さえ覗ける透んだ水。
海の彼方から茜色が融け出す夕陽。
中心部の行政・公共サービスと異なり、ここは観光のみの
場所。ワイキキビーチと同様と考えればいい。
海辺に建つビル群。ホテルとレジデンシア(リゾートマン
ションと思えばいい)が所狭しと並んでいる。
その中の一つ、15Fの自宅のベランダで海辺を見下ろす
キートン。
ドラッグストアで買い物をするキートン。
海で泳ぐキートン。
レストランテで外食するキートン。
散歩をするキートン。
停電の闇の中、ラジオを聴きながら星空を眺めるキートン。
出勤するキートン。
帰宅するキートン。
写真を撮るキートン。
掃除をするキートン。
選択をするキートン。
嵐の来ないカリブは今日も波音を絶やすことなく運んでいる。
窓外の景色をぼんやり眺めているキートン。
“海、北へと向かう中で鉛色に変わる空”
“風、穏やかな顔の裏には冬に向けた厳しさ”
“山、島国の顔、堅い顔、和やかな顔、そのどちらでもない顔”
カメラを両手に抱え心の中で独白する。
「サンタマルタとは大違いだ、な」
やがて、雨柱をバスはくぐりだした。
食事をとる。NZ近海の海産物は日本に類似しているが一味
違う。近年、結婚式の食事の鯛の半数近くはNZからの輸入
物であるという。嗜好が似通っているのか?
んだ。ほんの10分ほどの出来事。
カリブの夜は気まぐれだ。