映画は映画館で


『半落ち』の貢献(2004年2月)

 上の息子がタダ券をもらってきたので、カミさんと『半落ち』(監督:佐々部清)を観に行きました。カミさんと映画を観に行ったのは『たそがれ清兵衛』(TWILIGHT SAMURAI)以来ですから、1年以上行っていなかったことになります。

 公開されて1ヶ月たつというのに、日曜日だったこともあるのでしょうが、ほぼ満席状態。人気の凄さがわかりました。

 内容は、アルツハイマーの妻(原田美枝子)を殺した男(寺尾聡)が自首してくるのですが、自首してくるまでの2日間を黙秘します。つまり完全に自白していないので、警察用語でいう“半落ち”状態なわけです。

 その謎を刑事(柴田恭兵)、検事(伊原剛志)、裁判官(吉岡秀隆)が追求するんですな。

 骨髄バンク、アルツハイマー、警察の体面、警察と検察の裏取引etc、何もかもツメ込んだサービス過剰作品といえなくはありませんが、感動的な作品であることには間違いありません。

 妻の日記に貼られていた新聞の投書には、涙腺がゆるんでウルウルしてきます。カミさんの隣に座っていたオジサンは、眼鏡をはずして泣いていたとか。

 長々続くエンドクレジットで席を立つ人がいなかったのは、感情を整える準備時間だったのでしょう。涙顔で明るい所には出られないものね。

 カミさん森山直太郎の歌(「声」)に聴きほれていたようですが……

 それにしても寺尾聡は巧い役者になりましたね。淡々とした味わいある演技は、独自の境地に達しています。それと、樹木希林。演技を超えた自然の巧さを感じます。井川比佐志もね。

 ところで、この映画が公開されるや、ドナー登録が通常の3倍に増えたそうです。映画の持つ力は、捨てたものではありませんね。

 

 

『ロード・オブ・ザ・リング』は映画館で(2004年3月)

 第1部と第2部は、ビデオ録画してテレビで観たのですが、『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』(監督:ピーター・ジャクソン)は劇場で観ました。テレビCMで煽られたこともあるのですが、スペクタクル・シーンは大画面でないとね。

 この作品は、アカデミー賞でノミネートされた11部門(作品賞、監督賞、編集賞、歌曲賞、作曲賞、音響賞、メークアップ賞、視覚効果賞、美術賞、衣装ダザイン賞)を完全制覇しましたが、演技に関する部門は賞とは無縁だったんですね。

 役者の演技より映像で見せる作品で、久しぶりに映画的快楽に浸りました。ベレンノール野での戦いは、劇場でないと味わえない興奮です。

 3時間23分という長さを感じさせずに見どころ満載。ただエピローグが少し長いのは、齢をとってオシッコが近くなった身には苦痛でした。エンドクレッジトが始まるやトイレへ。(^^;

 

 

神が登場しない『トロイ』(2004年6月)

 1日が“映画の日”だということをすっかり忘れていました。シニア割引がきくのは、まだ先のことなので、“映画の日”を活用しなくてはと思い、出かける用事があったついでに観たのが、『トロイ』(2004年/監督:ウォルフガング・ペーターゼン)で〜す。

 ギリシャ諸国の盟主・アガメムノンは、弟のスパルタ王・メネラオスの王妃ヘレン(ダイアン・クルーガー)が、トロイの王子パリス(オーランド・ブルーム)に連れ去られたことを口実に、トロイ攻略の遠征軍を組織する。その中には、アガメムノンの野心に反感を持っているギリシャ最強の戦士・アキレス(ブラッド・ピット)も参加していた。アキレスの活躍でアポロン神殿を破壊し、トロイの海岸をギリシャ軍は占領するが……

 神々が拘わる神話の部分を全てカットし、人間ドラマに仕上げています。だからといって内容が濃いかというとそうでなく、結局スペクタクルを見世物にしたに過ぎないので〜す。その点では、テレビでは味わうことのできない迫力を映画館で味わうことができましたけどね。

 トロイ戦争は神話を通して私の頭の中にインプットされているので、アレレと思うところがかなりありましたが、記録映画ではないので許しましょう。

 神話にみる、相当に偏屈で依怙地、怒れば凶暴になるというアキレスの性格は映画でも踏襲されていましたが、パワーよりもスピードに重点をおいたアキレスというのは、これまでになく新鮮に感じましたよ。ブラピは、悪くないですね。

 パリスがヘレンにメロメロになる過程の描き方が不充分なので、愛の物語だと言われてもピンときません。ダイアン・クルーガーは美人だけど、絶世というほどのことはないし……。

 それにしても、『トロイのヘレン』(1955年/ロバート・ワイズ)のロッサナ・ポデスタは美麗だったなァ。

⇒ギリシャ神話における“トロイ戦争”へ

 

 

笑い事でない『デイ・アフター・トゥモロー』(2004年7月)

 地球温暖化の危機が叫ばれている中、南極と北極の氷が溶けはじめ、海水の塩水濃度が低くなって、世界全体が異常気象にみまわれる。東京には握りこぶし大の雹が降り、ロサンゼルスは大竜巻に襲われる。そしてニューヨークを大津波が襲い、北半球に氷河期がやってくる……

 気象学者のデニス・クエイドの一家がカッコ良すぎるのですが、スリルあるドラマ展開となっています。まあ、異常気象のスペクタクル映像だけでは映画になりませんからね。

 地球の温暖化は、北半球国家の科学・経済優先がもたらした結果で、その罰を受けるかのように北半球が氷に閉ざされるのは、ローランド・エメリッヒ監督のメッセージなのでしょう。

 それにしても、6月に雹が降ったり、台風が直撃したり、突風(竜巻)が吹いたりして、異常気象が現実に日本でも発生しているので、単純に絵空事と笑えない怖さがありま〜す。

 

 

モンスター勢揃いの『ヴァン・ヘルシング』(2004年10月)

バチカン情報局の命を受けてモンスター・ハンターのヴァン・ヘルシング(ヒュー・ジャックマン)がドラキュラ退治にトランシルバニアにやってくる。そこで400年以上もドラキュラと戦い続けているジプシー王家のアナ王女(ケイト・ベッキンセール)と出会う。ドラキュラ(リチャード・ロクスバーグ)は自分の子孫を誕生させるためにフランケンシュタイン博士の研究を利用しようとしており……

ハイド、フランケンシュタインの怪物、狼男、ドラキュラが顔を揃えていますが、監督が『ハムナプトラ』でCPGミイラを再生したスティーブン・ソマーズなので懐かしのイメージと異なるモンスターになっています。ハイドなんて超人ハルクだよォ。

内容はというと、アクションの連続ですがメリハリがなく、映像もCPG多用でアニメを見ている感じでした。そういえば、アニメ版もあるんだよね。ドラキュラの最後は説明不足で意味不明。作品全体の出来は満足いくものではないですが、ドラキュラの花嫁3人(エレナ・アナヤ、シルヴィア・コロカ、ジョージー・マラン)が魅力的だったので満足しましょう。

 

 

『ヘルボーイ』はアメリカ版デビルマン(2004年10月)

ナチスの陰謀に加担したラスプーチンが地獄の扉を開けようとするが、ブルーム教授(ジョン・ハート)に阻まれる。一瞬扉が開き、ラスプーチンは地獄に飲み込まれ、ヘルボーイ(ロン・パールマン)が誕生する。ブルーム教授に育てられたヘルボーイは、現世に復活したラスプーチンとの戦いを開始する……

ロン・パールマンのヘルボーイにつきますね。キャラの魅力が内容を高めています。原作はアメコミで、下手に作るとCPG中心の薄っぺらな魔物バトルに終わってしまうのですが、ギレルモ・デル・トロ監督は人間ドラマをキッチリ描いているので厚みがあります。

『ヴァン・ヘルシング』より良かったよォ。

 

 

山田時代劇を確立した『隠し剣/鬼の爪』(2004年11月)

海坂藩の下級武士・片桐宗蔵(永瀬正敏)は、以前自分の家に奉公していた娘きえ(松たか子)と再会し、そのやつれた姿に驚く。きえは商家の伊勢屋に嫁いていたが、ひどい待遇を受けていた。きえが病気だと聞いて宗蔵は伊勢屋に乗り込み、きえを連れ帰る。回復したきえと貧しいながらも楽しい毎日を送っていた時、江戸屋敷での謀反の報せがはいる。首謀者の一人・狭間弥市郎(小澤征悦)と宗蔵は戸田道場の同門だった。その弥市郎が牢獄から脱走し、家老の堀(緒形拳)から宗蔵に討手の命が下る。弥市郎は藩内随一の使い手だったが、宗蔵は戸田寛斎(田中泯)から秘剣“鬼の爪”を伝授されていた。弥市郎の妻(高島礼子)が堀に夫の命乞いをするが、指令は変わらなかった。宗蔵は弥市郎と立会い……

幕末の東北の小藩を舞台にした藤沢周平の時代小説を山田洋次が監督した映画化第2弾。山田洋次監督は、良い悪いは別にして彼独自の時代劇映画を確立しましたね。

前作の『たそがれ清兵衛』でも気になったのですが、この作品でも主人公だけが月代が伸びています。貧乏藩士の主人公を特徴づけるためかも知れませんが、門番ですらキレイに月代を剃っているのに、考証的にこれはおかしいですよ。山田流リアリズムなんですかね。

松たか子を苛める伊勢屋の女将が光本幸子で、最初わかりませんでした。“寅さん”の初代マドンナの記憶が鮮明に残っていたものですから。しかし、これが巧いんだなァ。

それと、『たそがれ清兵衛』で存在感をしめした田中泯が、この作品でも一番サムライらしかったですね。姿勢が良いので、立回りが綺麗に決まっていました。山田時代劇には無くてはならない存在になっています。

満足できる時代劇ということで、次回作にも期待したいで〜す。

 

 

『ゴジラ/FINAL WARS』はシリーズ最後のゴジラ(2004年12月)

ある日突然、怪獣たち(ラドン、ハリウッド・ゴジラ、アンギラス、カマキラス、クモンガ、キング・シーサー、エビラ)が世界の都市を襲いはじめる。地球防衛軍が怪獣たちに苦戦している時、X星人が現れ、怪獣たちを捕獲する。

X星人は、妖星ゴラスが地球に接近していることを告げ、地球人の味方のように思われたが、妖星ゴラスがトリックで、人類を家畜化するために地球へやってきたのだった。X星人は正体がバレると、化石として眠っていた宇宙怪獣ガイガンを復活させ、捕らえていた怪獣たちを世界中に放った。地球防衛軍の生き残りは、海底軍艦を発進させ、南極で眠っているゴジラを復活させる。目覚めたゴジラは……

ゴジラ生誕50年記念作品であるとともに、シリーズ最終作(?)というのでゴジラ・ファンとしては見逃すわけにはいきませんでした。

地球征服を企てるX星人が操る怪獣とゴジラが戦うというプロットはゴジラ映画のオマージュとして悪くありません。キング・ギドラも平成ゴジラ・シリーズの中では一番カッコよく、『三大怪獣・地球最大の決戦』の初登場シーンを彷彿させるものでした。

北村龍平監督は東宝の特撮映画を観て育ったらしく、海底軍艦とマンダの戦いや、ミニラの火吹きなど嬉しくなるようなシーンが多々あります。だからこそ苦言をたれるのですが、人間ドラマが『マトリックス』になっています。X星人との戦いを格闘ドラマにするのでなく、『地球防衛軍』や『宇宙大戦争』のような科学戦争にして欲しかったですね。

北村龍平監督って、K1のファンなのかなァ。

 

 

 

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